サッカーのプレッシングとは?ハイプレス・ゲーゲンプレスの違いを解説【2026年】

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こんな疑問を持つ方へ
  • サッカー中継で聞く「プレッシング」「プレス」って、どういう意味?
  • ハイプレス、ミドルプレス、ゲーゲンプレスは何が違うの?
  • 「プレスが効いている」かどうかは、どうやって判断するの?

プレッシング(プレス)とは、ボールを持った相手に複数の選手が連動して寄せ、考える時間とスペースを奪ってボールを奪いにいく守備のことです。どの高さで奪いにいくかでハイプレスやミドルプレスに分かれ、ボールを失った直後に奪い返すものはゲーゲンプレス(カウンタープレス)と呼ばれます。

この記事では、FIFAが試合の分析に使う用語の定義、クロップ監督やグアルディオラ監督のやり方を伝えた報道、プレスの強さを測る指標「PPDA」をもとに、初めての人にも分かるように整理します。

プレッシングとは:寄せて、コースを消して、囲んで奪う

1 寄せる ボールを持つ 相手に近づく 2 コースを消す 周りの選手が パスの先を切る 3 囲んで奪う 追い込んだ先で 複数人で奪う 1人ではなく、チーム全体で連動する
プレッシングの基本の流れ(FIFA Training Centre「High press」などをもとにフットボール戦士が作図)

プレッシングは、1人が相手に突っ込むことではありません。1人がボールを持つ相手に寄せるのと同時に、周りの選手が近くのパスの受け手をふさぎ、相手を決まった場所へ追い込みます。追い込んだ先で2〜3人が囲めば、ボールを奪える確率が上がります。

FIFAの指導者向けサイト「FIFA Training Centre」は、ハイプレスの要点として、チームの形をコンパクトに保つこと、相手を誘い込む「わな」を仕掛けること、強度の3つを挙げています。さらに「90分ずっとプレスするのは難しいので、いつ行くかの合図(トリガー)を全員が知っておくことが大切」と説明しています。

FIFAが挙げる合図の例は、相手のトラップが少し大きくなったときや、パスを出そうと足を引いたとき、ゴール前の危ない場所へ中央向きのパスが出たときなどです。「プレス」と「プレッシング」はほぼ同じ意味で、中継ではどちらも使われます。

ハイプレス・ミドルプレス・ローブロックの違いは「どの高さで奪うか」

自分のゴール 相手のゴール ロー ゴール前を固める ミドル 中盤で待ち構える ハイ 相手陣で奪いに行く 攻める方向 プレス=ボールを奪いに向かう ブロック=形を保って待つ
守る高さによる呼び方の違い(FIFA Training Centreの「FIFA Football Language」の区分をもとにフットボール戦士が作図)

FIFAが試合データの集計に使う用語集「FIFA Football Language」では、ボールを持っていないときの守備を9つの場面に分けています。ハイプレス、ミドルプレス、ロープレス、ハイブロック、ミドルブロック、ローブロック、リカバリー(戻り)、守備への切り替え、カウンタープレスです。

ハイ・ミドル・ローは、ピッチを3つに分けたどこで守るかを表します。「プレス」はボールを奪いに向かう動き、「ブロック」は形を崩さずに待つ守り方です。たとえばFIFAの集計では、ボールが相手ゴール側の3分の1にあり、守る側の選手がボールの1.5m以内に寄せるなどの条件を満たすと「ハイプレス」と数えます。

どれが正解というわけではありません。2022年カタールW杯のFIFAの分析では、ボールを持たない時間のうちミドルブロックの割合が一番高かったのはモロッコ(38%)で、フランス(37%)が2位、優勝したアルゼンチン(32%)が4位でした。3チームとも準決勝まで進んでいます。

同じ分析の中で、元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏は、ミドルブロックは「プレスをかける時と形を保つ時を切り替えたい監督に向いている」と話しています。前から奪いに行くか、中盤で待つか、ゴール前を固めるかは、相手や点差、時間帯で使い分けるものです。

ゲーゲンプレス(カウンタープレス)とは:失った直後に奪い返す

Sky Sports Retro「Jurgen Klopp explains the importance of the gegenpress」(2020年9月公開・英語)。クロップ監督がゲーゲンプレスの大切さを説明する映像です

ゲーゲンプレスは、ボールを失った直後に、その場で奪い返しにいくプレスです。ドイツ語の「ゲーゲン(gegen)」は「反対に」という意味で、英語ではカウンタープレス(counter-press)と呼ばれます。ハイプレスが「相手のボールを高い位置で奪う」守備なのに対し、ゲーゲンプレスは「失った瞬間」に注目した考え方です。

FIFA Training Centreは、ボールを失った直後に相手の選手へすぐ寄せると、数秒で奪い返せる可能性が大きく上がり、相手に速い反撃をさせずにすむと説明しています。ボールを奪った直後の数秒間は、相手の形がまだ整っていないからです。

FIFA Training Centreは、ゲーゲンプレスをここ10年ほどでクロップ監督やグアルディオラ監督が広めた戦術と紹介しています。英Sky Sports(2020年4月17日)は、ドルトムントやリバプールを率いたユルゲン・クロップ監督の「世界のどんなプレーメーカーも、良いゲーゲンプレスの場面にはかなわない」という言葉を紹介しています。奪った場所がゴールに近いので、決定機までパス1本ですむ、という理由です。

似た考え方として、グアルディオラ監督のバルセロナには「ボールを失ったら6秒以内に奪い返す」決まりがあったと、Sky Sports(2016年7月19日)が紹介しています。6秒で奪えなかったときは、コンパクトな形に戻って守ります。

プレスの強さを数字で測る「PPDA」

PPDA = 相手に許したパスの数 守備アクションの数 (タックル・インターセプト・ファウルなど) 例:パス60本 ÷ 守備アクション8回 = 7.5 小さいほど、前から激しく奪いに行っている
PPDAの計算方法(Stats Perform「How we measure pressure」をもとにフットボール戦士が作図。例の数字は説明用)

「プレスが効いている」を数字で表す代表的な指標が、PPDA(Passes Allowed Per Defensive Action)です。アナリストのコリン・トレイナー氏が考えたもので、相手ゴール側の約5分の3の範囲で、相手にパスを何本許すごとに1回守備のアクションをしたかを表します。数字が小さいほど、相手に自由にパスをさせず、早めに奪いに行っていることになります。

Optaを運営するStats Performの解説記事では、2015-16シーズンの欧州5大リーグとオランダリーグで、PPDAが一番小さかったのはバルセロナの7.5でした。ただし2位はパリ・サンジェルマンの7.55で、記事は「ボールを持って相手陣に押し込むチームは、プレスが激しくなくても数字が小さく出やすい」と注意しています。PPDAは1つの目安で、ほかの数字と合わせて見るのが大切です。

高い位置で奪う価値を示すデータもあります。FIFAの2025年クラブW杯の分析では、相手ゴール側の3分の1でボールを奪った攻撃から生まれたシュートの平均xG(得点の期待値)は0.171でした。全シュートの平均0.139より、よいチャンスになっていたことが分かります。

プレッシングのメリットとリスク

メリット ・相手ゴールの近くで奪える ・相手に考える時間を与えない ・攻撃の回数が増える リスク ・かわされると背後が空く ・90分続けるのは難しい ・1人ずれると穴になる
プレッシングのメリットとリスク(FIFA Training Centre、Stats Performの解説をもとにフットボール戦士が作図)

高い位置からのプレスでは、DFラインも前に押し上げます。そのため、ロングボール1本や、うまいパス回しでプレスをかわされると、DFの背後に広いスペースが空きます。高いラインで相手をオフサイドにかける守り方とも、表と裏の関係です。

運動量も必要です。FIFA Training Centreも「90分ずっとプレスするのは難しい」として、前半の終わりや疲れてきた時間帯には強度を落とす選択肢を挙げています。前線の選手にも守備が求められるため、「FWが守備をしない」ことが話題になるのもこのためです。

データで見る:「プレス」はW杯のたびに調べられる

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「プレスディフェンス」が日本で調べられた量の推移(日本語版Wikipediaの閲覧数・1日平均を月ごとに集計。出典: Wikimedia Pageviews API/フットボール戦士が集計)

日本語版Wikipediaでは「プレッシング」は「プレスディフェンス」の記事にまとめられています。フットボール戦士の集計では、この記事はW杯の期間に大会前の3.5〜5.6倍見られました。2018年ロシア大会は3.5倍、2022年カタール大会は5.6倍、2026年北中米大会は4.6倍です(大会前90日の1日平均との比較)。

一番よく見られた月は2018年6月で、1日平均53回でした。2026年9月23日までの直近30日は1日平均8回です。中継で「プレス」という言葉を耳にして調べる人が、大会のたびに増えていることがうかがえます。

よくある質問

Q1. プレッシングとプレスは違うものですか?

A. ほぼ同じ意味です。「プレス」は「プレッシング」を短くした言い方で、中継や記事ではどちらも使われます。

Q2. ハイプレスとゲーゲンプレスの違いは何ですか?

A. ハイプレスは「相手陣の高い位置で奪いに行く」という、守る高さの話です。ゲーゲンプレスは「ボールを失った直後に、その場で奪い返す」という、タイミングの話です。高い位置でボールを失えば、ゲーゲンプレスがそのままハイプレスになることもあります。

Q3. PPDAはいくつなら「プレスが強い」と言えますか?

A. 決まった基準はありません。PPDAは小さいほど早めに奪いに行っていることを表します。ただし、ボールを長く持って相手陣に押し込むチームも小さく出やすいので、同じリーグの中で比べる目安として使います。

Q4. ボールを失った直後に「6秒以内に奪い返す」というのは本当ですか?

A. グアルディオラ監督のバルセロナにそうした決まりがあったと、Sky Sports(2016年)が紹介しています。競技規則ではなく、チームの約束ごとです。

Q5. プレスをかけない守り方は、消極的なのですか?

A. そうとは限りません。2022年のW杯では、中盤で形を保って待つミドルブロックの割合が高かったモロッコ、フランス、アルゼンチンが準決勝まで進みました。相手や試合の状況で使い分けるものです。

まとめ:プレッシングは「チームで寄せて奪う」守備

  • プレッシングは、複数の選手が連動して寄せ、時間とスペースを奪ってボールを奪う守備
  • ハイ・ミドル・ローは守る高さの違い。「プレス」は奪いに向かう、「ブロック」は形を保って待つ
  • ゲーゲンプレス(カウンタープレス)は、ボールを失った直後にその場で奪い返すこと
  • プレスの強さは、パス数を守備アクション数で割る「PPDA」で目安が分かる
  • 高い位置で奪えば好機になりやすい一方、かわされると背後が空く

次に試合を見るときは、ボールを失った直後の数秒に注目してみてください。すぐに何人が寄せているか、周りの選手がどのパスコースを切っているかを見ると、そのチームの守り方が見えてきます。

※この記事の情報は2026年9月24日時点のものです。出典:FIFA Training Centre(「High press」「Controlling the game without the ball: The mid-block and compactness」「Investigating the increased use of the high press」「Preparing and executing counter-pressing」「The reaction to losing the ball」)、Stats Perform「How we measure pressure」、Sky Sports(2020年4月17日、2016年7月19日)、Sky Sports Retro(YouTube)、Wikimedia Pageviews API。