- 三笘の1ミリとは?いつ、どの試合のどんな場面のこと?
- ボールは出ていたように見えたのに、なぜVARでゴールになったの?
- 決めた田中碧との関係、クロアチア戦のPK、三笘薫の日本代表でのゴール数は?
「三笘の1ミリ(三笘の1mm)」は、2022年W杯カタール大会のスペイン戦の後半6分、三笘薫がゴールライン際で折り返したボールを田中碧が押し込んだ決勝点のことです。ボールはほとんどラインを越えて見えましたが、VARの確認で「ボールの一部がライン上に残っていた」とされ、ゴールが認められました。
この記事では、JFAの試合記録、サッカー競技規則、FIFAの説明と当時の報道をもとに、場面の流れ、ゴールになった理由、田中碧との関係、そのあとのクロアチア戦のPK、日本代表での成績を順にまとめます。
三笘の1ミリはいつ?2022年W杯スペイン戦の後半6分
JFAの試合記録によると、試合は2022年12月1日22時(現地時間)に、カタールのハリファ国際スタジアムでキックオフしました。日本時間では12月2日の午前4時で、多くの人が早起きして見ていた試合です。グループリーグE組の最終戦で、日本は勝てば決勝トーナメントに進める状況でした。
日本は前半11分にモラタに先制されましたが、後半の頭から入った三笘薫と堂安律が流れを変えます。後半3分(48分)に堂安が同点ゴール。その3分後の後半6分(51分)、堂安の右からのクロスが逆サイドへ流れ、ゴールラインを割りかけたところを三笘が足を伸ばして折り返し、ファーサイドに走り込んだ田中碧が押し込みました(デイリースポーツ 2022年12月3日)。
この折り返しの瞬間、ボールがラインを越えていたかどうかがVARで確かめられ、最終的にゴールが認められました。日本は2-1で逆転勝ちし、E組を1位で突破しています。
試合前の見方では、日本は不利でした。フットボール戦士レーティング(各国代表の試合結果から計算する独自の強さの指標で、FIFAランキングとは別のもの)では、試合前の日本の勝つ見込みは22%。「奇跡の1ミリ」と呼ばれるのは、この大金星を決めた1点だったからです。
なぜゴール?ボールの「全体」が線を越えるまではアウトではない
サッカーの競技規則の第9条は、ボールがアウトオブプレーになるときを「グラウンド上または空中で、ボールの全体がゴールラインまたはタッチラインを越えた」ときと定めています(JFA『サッカー競技規則2025/26』)。つまり、ボールの一部でもラインの上に残っていれば、まだインプレーです。
さらに第1条には「エリアの境界線を示すラインは、そのエリアの一部である」とあります。白いラインそのものがフィールドの中なので、分かれ目は「ボールの真下に白線が少しでも残っているか」です。白線と芝の境目ではなく、白線の外側の端を、ボールの全体が越えたかどうかで決まります。
ボールの外周は68〜70cm(第2条)で、直径にすると約22cmです。ラインの幅は12cm以内と決められています(第1条)。三笘の折り返しは、直径22cmのボールのほんの端だけがライン上に残っていた、という判定でした。
横から見ると出ているように見えたのはなぜ?
日テレNEWS「【解説】見る角度を変えればこう見える…三笘選手が生んだ“ミリ単位”の執念『知りたいッ!』」(2022年12月公開)。見る角度によってボールとラインの見え方が変わることを解説しています。
ボールは丸いので、真上ではなく横や斜めから見ると、ボールの一番下と白線の間に芝が見えます。ところが、ボールのふくらんだ部分は、真上から見るとまだ白線の上に張り出していることがあります。中継の映像の多くは横に近い角度だったため、「完全に出ている」と感じた人が多かったのです。
元国際主審の家本政明さんも、ラインを出たかどうかは「人間の目で正確に判断するのは不可能」と話しています(スポルティーバ 2023年1月6日)。決め手になったのは、真上に近い角度の映像でした。
VARはどう判定した?主審のゴールキックを約2分半の確認で変更
Other cameras may offer misleading images but on the evidence available, the whole of the ball was not out of play. pic.twitter.com/HKKEot0j1Y
— FIFA (@FIFAcom) 2022年12月2日
FIFAのXの投稿(2022年12月3日)。VARの判定についてFIFAが出した説明で、真上から見るとボールの一部がライン上に残っていたことを画像で示しています。
この試合の主審は南アフリカのビクトル・ゴメスさんで、ピッチの上での最初の判定はゴールキックでした(Number Web 2022年12月27日)。そこからVARの確認が約2分半続き、ボールはラインを割っていないとして、田中碧のゴールが認められました(読売新聞・デイリースポーツ)。
試合の翌日、FIFAは公式のXで「VARはゴールラインのカメラの映像を使い、ボールの一部がまだライン上にあるかを確かめた」と説明しました。続けて「ほかのカメラの映像は誤解を招くことがあるが、手元の証拠では、ボールの全体は外に出ていなかった」と発表しています(上の投稿)。
家本政明さんによると、見ている人の多くは「ラインに何ミリかかっているか」で見ていたのに対し、VARは「はっきりとラインにかかっていない映像があるかどうか」の視点で見ていました。そうした映像がなかったので、「はっきり出ているとは言えない」という結論になった、という見方です(スポルティーバ 2023年1月6日)。
「1ミリ」は測った数字?呼び名は三笘本人の言葉から
「1ミリ」は、FIFAが発表した数字ではありません。FIFAは「ボールの一部がライン上にあった」とは説明しましたが、何ミリ残っていたかは公表していません。
呼び名のもとは、三笘本人の言葉です。試合後、「1ミリかかっていればいいなと思いましたし、入った後はちょっと足が長くて良かった」と話しました(Jリーグ公式サイト 2022年12月2日)。SNSでは「1.88ミリ残っていた」という数字も広まりましたが、これも公式の計測値ではありません(Number Web 2022年12月27日)。
| 誰が | 判定・説明 |
|---|---|
| 主審 | ゴールキック(出たと判断) |
| VAR | 約2分半の確認でゴールに変更 |
| FIFA | 翌日に「ボールの全体は出ていない」と説明 |
| 1ミリ | 公式の数字ではなく、本人の言葉が由来 |
家本さんは、今の技術なら正確な数字を出せるはずで、FIFAが数字まで示せばもっと説得力が出る、という趣旨の話もしています(Number Web・スポルティーバ)。
決め手の写真は地上50mのキャットウォークから
「本当に残っていた」と多くの人を納得させたのは、AP通信のカメラマン、ペトル・ダビド・ヨセクさんが真上から撮った1枚の写真でした。スタジアムの屋根の下にある高さ約50mの点検用の通路(キャットウォーク)から撮ったもので、ここで撮影できたのはAP・ロイター・AFP・ゲッティイメージズの4社だけだったそうです(Number Web 2022年12月5日)。
田中碧と三笘薫は幼なじみ!「何とか残る」と信じて走り込んだ
JFATV(日本サッカー協会公式チャンネル)「Team Cam vol.11|2度目の強豪撃破 スペイン戦の舞台裏」(2022年12月公開)。スペイン戦の日のチームの様子を追った映像です。
決勝点を決めた田中碧は、三笘薫の1学年下です。2人はともに川崎市の出身で、地元のさぎぬまSCから川崎フロンターレの下部組織に進んだ幼なじみです(デイリースポーツ 2026年5月27日)。小学校も同じでした(TBS NEWS DIG 2022年12月4日)。
田中は試合後、「(堂安)律からの折り返しでワンチャンあるかなと思った。(ゴールライン際でボールが)何とか残るんじゃないかなと信じていた。(三笘)薫さんがうまく残してくれた」と振り返っています(スポルティーバ 2022年12月2日)。
三笘も、VARを待つ間は「僕の感覚では中にあるなと感じた」と話し、「(田中)碧が得点を決めたというのもなんかあるのかなと思っています」と、幼なじみが決めたことに縁を感じていました(Jリーグ公式サイト 2022年12月2日)。
4年後の2026年、三笘はけがでW杯2026のメンバーから外れました。三笘が直近の代表戦でつけていた背番号7は、田中碧が引き継いでいます(デイリースポーツ 2026年5月27日)。
【データ】スペイン戦の翌日、三笘薫は2週間前の21倍調べられた
「三笘の1ミリ」がどれだけ話題になったかは、閲覧数にも表れています。フットボール戦士の集計(日本語版Wikipediaの閲覧数)では、スペイン戦の翌日、三笘薫のページは1日に38万195回見られました。試合の8〜14日前の1日平均(1万7,941回)の21倍です。
三笘の閲覧数がふだんより1,000回以上伸びた代表戦は21試合ありますが、その中でスペイン戦が一番多く、W杯出場を決めた2022年3月のオーストラリア戦(11万7,340回)の3倍を超えています。決勝点の田中碧も5,124回から22万9,554回へ、45倍に伸びました。
三笘薫のW杯2022は全試合途中出場、クロアチア戦でPK失敗
三笘はカタール大会で、日本の4試合すべてに途中から出場しました。先発は1試合もありませんが、ドイツ戦・スペイン戦の逆転勝ちはどちらも三笘が入ったあとに生まれています。大会でのゴールはなく、記録に残る仕事はスペイン戦の田中碧へのアシストです。
決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦(2022年12月5日)は、1-1のまま延長戦を終えてPK戦になりました。日本は先攻で、1人目の南野拓実、2人目の三笘薫がGKリバコビッチに止められ、3人目の浅野拓磨は成功したものの、4人目の吉田麻也も止められて1-3で敗れました。
三笘は試合後に涙を見せ、「PKを蹴った責任がある。チームに迷惑をかけたなと思う」と話しました。前日の練習では決めていて「いいフィーリングだった」こと、GKは見ずに「思い切り蹴っただけ」だったことも明かしています(ゲキサカ 2022年12月6日)。
フットボール戦士の集計(国際Aマッチの公開データ)では、日本代表のPK戦は13回で6勝7敗です。クロアチア戦はそのうちの1敗でした。4年後、このPK戦で止められた南野・三笘・吉田は、3人ともW杯2026のメンバーに入りませんでした。三笘は大会直前のけがが理由です(SOCCER DIGEST Web 2026年5月15日)。
三笘薫の日本代表はいつから?ゴール数は31試合9点
三笘薫が日本代表(A代表)に初めて選ばれたのは2021年11月です。デビュー戦は2021年11月16日(日本時間17日)のW杯アジア最終予選・オマーン戦で、途中出場から伊東純也の決勝点をアシストしました(FOOTBALL ZONE)。その年の夏には、東京五輪のU-24日本代表としてもプレーしています。
代表初ゴールは2022年3月24日のオーストラリア戦です。0-0の84分に入ると、89分とアディショナルタイムに2点を決め、日本のW杯出場を決めました(JFA公式プロフィール)。最近のゴールは2026年3月31日のイングランド戦で、ウェンブリーで日本がイングランドに初めて勝った試合の決勝点でした(サッカーキング 2026年4月1日)。
通算は2026年10月16日時点で31試合9点です(英語版Wikipediaの記録。2026年5月のけが以降は代表戦に出ていません)。フットボール戦士の集計では、日本代表に出場した男子673人の中で、出場数は121番目、得点は40番目に多い数字です。
よくある質問
A. 2022年12月1日(日本時間2日早朝)のW杯カタール大会・スペイン戦の後半6分(51分)です。三笘薫の折り返しから田中碧が決めた決勝点で、日本は2-1で勝ちました。
A. 何ミリ残っていたかは公表されていません。FIFAは「ボールの全体は外に出ていなかった」と説明しただけです。「1ミリ」は、三笘本人の「1ミリかかっていればいいな」という言葉から広まった呼び名です。
A. はい。2023年4月8日のトッテナム戦では、三笘のゴールがハンドの判定で取り消され、ペナルティーエリア内で倒された場面もPKになりませんでした。英メディアからは「VARによって不当な扱い」を受けたという声が出ています(FOOTBALL ZONE)。のちに、PKを与えなかった判定は誤りだったと認められたと報じられました(GOAL)。
A. 違います。「鎌田の1ミリ」は2026年W杯のオランダ戦で、小川航基のシュートが鎌田大地の頭にわずかに触れたゴールを、三笘の1ミリになぞらえた呼び名です。詳しくは鎌田大地の1ミリゴールの記事で紹介しています。
A. 0点です。2022年大会は4試合すべて途中出場で、スペイン戦の決勝点をアシストしました。2026年大会はけがでメンバーに入りませんでした。
まとめ:三笘の1ミリは「ボールの全体が出ていない」と判定された決勝点
- 三笘の1ミリは、2022年12月1日(日本時間2日早朝)のW杯スペイン戦の後半6分、三笘の折り返しから田中碧が決めた決勝点
- 競技規則では、ボールの全体がラインを越えるまではアウトではない。ラインもフィールドの一部
- 主審の判定はゴールキックだったが、約2分半のVARの確認でゴールに。FIFAは「ボールの全体は外に出ていなかった」と説明
- 「1ミリ」は公式の数字ではなく、三笘本人の言葉から広まった呼び名。田中碧とは川崎で育った幼なじみ
- クロアチア戦のPK戦では2人目で止められた。日本代表では31試合9点(2026年10月16日時点)
三笘の1ミリは、最後まで足を伸ばした三笘と、ボールが残ると信じて走り込んだ田中碧の2人がそろって生まれたゴールでした。横から見ると出ているように見えても、真上から見ればボールの端は線の上に残っていた、というルールの面白さも教えてくれた場面です。2026年10月時点で三笘はけがからの復帰を目指しており、再び代表のピッチに戻ってくるのが待たれます。
※この記事の情報は2026年10月16日時点のものです。代表の出場数・得点は今後の試合で変わります。競技規則は毎年改正されるため、最新の内容は日本サッカー協会の公式サイトでご確認ください。
フットボール戦士 
