サッカーの試合で選手がどれほど走っているか、ご存知でしょうか?
サッカー選手の走行距離は、テレビ中継や統計で目にする機会が増え、スタミナやチーム戦術を語る上で重要な指標となっています。実は1試合でプロのサッカー選手はフルマラソンの約4分の1にも及ぶ距離を走っており、欧州トップリーグからJリーグまで多くのデータが蓄積されています。
本記事では、サッカー選手の平均走行距離に関するあらゆるデータを、一般のサッカーファンにもわかりやすく解説します。

リーグ名 | 平均走行距離(1試合あたり) | 特徴 |
---|---|---|
プレミアリーグ(イングランド) | 約10.7km | 欧州5大リーグの中で最も運動量が多く、高強度プレーが特徴。 |
ラ・リーガ(スペイン) | 約10.2〜10.5km | パス主体でポゼッション重視だが、運動量は標準的。 |
セリエA(イタリア) | 約10.2〜10.5km | 戦術的駆け引きが多く、欧州標準の運動量。 |
ブンデスリーガ(ドイツ) | 約10.2〜10.5km | 攻守の切り替えが激しく、運動量が多い傾向。 |
リーグ・アン(フランス) | 約10.1〜10.4km | 個々のフィジカル能力が高く、平均的な運動量。 |
Jリーグ(日本) | 約10.0km(夏季は9km台後半) | 欧州リーグに近い水準だが、夏場の高温多湿でやや低下する。 |
まずはデータから、サッカー選手が1試合でどれくらい走るのか見てみましょう。一般的にプロ選手の平均走行距離は1試合で約10~12kmと言われています。
欧州主要リーグ(プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエA、ブンデスリーガ、リーグ・アン)でもこの水準で、大きな差はありません。例えばイングランド・プレミアリーグの選手は平均で約10.7km前後を走るという報告があります。
同様にスペインやドイツ、イタリア、フランスのリーグでもおおむね1試合10km強が標準的な値です。日本のJ1リーグも欧州に近く、春先(気温の低い時期)は欧州5大リーグ平均とほぼ同じ走行距離ですが、真夏の時期にはやや距離が落ちる傾向があります。
夏場の高温多湿により走行距離(特にハイインテンシティの距離)が減少し、シーズン通して見るとプレミアリーグ > セリエA > ブンデスリーガ > (J1・ラ・リーガ・リーグアンはほぼ同等)という強度順になっています。
このように、リーグごとに若干の違いはあるものの、トップレベルでは1人あたり約10kmという走行距離が一つの目安になっています。

大会・カテゴリー | 平均走行距離(1試合/選手あたり) | コメント・特徴 |
---|---|---|
男子フル代表W杯(FIFA) | 約10km前後 | トップレベルの選手が集まるため高強度の試合が多い。中には13km以上走る選手も。 |
U-20男子W杯 | 約10〜11km(フル代表をやや上回ることも) | フル代表よりも若干多い走行距離を記録する場合があり、積極的なプレーが特徴的。 |
女子ワールドカップ | 約9km前後 | 男子フル代表やU-20男子に比べやや走行距離は少なめだが、近年増加傾向にある。 |
U-17男子W杯 | 約8~9km前後 | まだ体力・筋力が発達途上のため走行距離はやや少ないが、技術的なプレーが多くなる傾向。 |
カタールW杯2022(男子) | 約10~11km(例外的に13km以上) | ドイツのキミッヒ選手が13.19kmを記録するなど高水準の運動量が注目された大会。 |
ロシアW杯2018(日本代表) | 8.36km(大会最短) | ポーランド戦の終盤で戦術的なボール回しを行った影響で、出場32か国中最も少なかった。 |
次にワールドカップなど国際大会での走行距離データを見てみましょう。
興味深いことに、FIFAの公開データによれば「U-20男子W杯の平均総走行距離がフル代表の男子W杯をやや上回った」という結果が報告されています。
つまり大会によって若手の方がよく走っていたケースもあり、一概に年齢が上がるほど走行距離が増えるとも言い切れません。ただし一般的な傾向としては、ユース年代よりシニア(フル代表)の方が試合当たりの走行距離は長い傾向があります。
ある研究では、年齢とともに走行距離は増加し、18歳で約10kmに達すると示されています。
ユース(U-15以下)では試合時間が短かったりフィジカル面の発達途上もあり平均距離はもう少し短めですが、U-18~U-23になると大人に近い水準(約10km前後)まで伸びるようです。実際、近年のワールドカップでも1試合で選手1人平均10km前後の距離を走っており、中には13km近く走る選手も出てきます。
例えばカタールW杯2022ではドイツ代表のヨシュア・キミッヒがグループリーグ初戦で13.19kmを記録したことが話題になりました(※13kmはフルマラソンの約3分の1に相当します)。
また、ロシアW杯2018のデータでは、出場32カ国中もっとも走行距離が短かったのは日本代表で1試合平均8.36km(1人あたり)でした。
ドイツ(約10.3km)とは約2kmの差がありましたが、これは日本がグループリーグ第3戦ポーランド戦の終盤にボール回しに徹した戦術的理由によるものです。
一方で当時最多の走行距離を記録した国(ドイツなど)が必ずしも勝ち残ったわけではなく、「よく走る国=勝つ国」とは限らないことも示されています。総じて、ワールドカップでも1人平均9~10km台、チーム合計では90~120km程度が一般的なレンジと言えるでしょう。

リーグ名 | チーム名(最多/最少) | 平均走行距離(チーム合計・1試合あたり) | 特徴・戦術的傾向 |
---|---|---|---|
プレミアリーグ (2023-24・第12節時点) |
イプスウィッチ・タウン(最多) | 約112km | 積極的に走る戦術を採用。リーグで最多の運動量を誇る。 |
ノッティンガム・フォレスト(最少) | 約104.6km | 省エネ戦術を採用。リーグでも際立って運動量が少ない。 | |
Jリーグ(J1) (2024シーズン) |
サガン鳥栖 | 約119km | チーム全体の運動量が非常に多く、「走るサッカー」を志向。 |
Jリーグ下位チーム(参考) | 約110km前後 | 鳥栖と比較して約10km近く走行距離が少なく、省エネまたは守備的な戦術を採用。 |
主要リーグにおけるチーム全体の走行距離ランキングにも触れておきます。各リーグ内ではクラブごとに戦術やスタイルが異なるため、チーム平均走行距離にも差が出ます。
例えばプレミアリーグでは、2023-24シーズン序盤(第12節終了時点)で最も走っているチームは1試合平均約112kmを記録し、逆に最も少ないチームは約104.6kmでした。
後者はノッティンガム・フォレストで、リーグでも群を抜いて走行距離が少なく、最多のチームとの差は約8kmにもなります。
一方、イングランド2部(EFLチャンピオンシップ)から昇格したイプスウィッチ・タウンはトップクラスの運動量を誇り、プレミアでも最長距離を記録していました。
このように走るサッカーのチームと省エネ戦術のチームでは、1試合あたり数km単位で差が出ることがあります。またJリーグでも、2024シーズンの統計ではサガン鳥栖がチーム平均119kmとリーグ最長を記録する一方、下位のチームは110km前後と約10km近い開きが見られました。
First minutes for The Arsenal. Thank you DC. 🙌 pic.twitter.com/ruEGpYo3AB
— Declan Rice (@_DeclanRice) July 20, 2023
2023-24シーズンの各リーグ走行距離の多い選手は以下の通りです。以下のデータから、やはりMFの選手の走行距離が多いのがわかります。
選手(クラブ) | ポジション | 総走行距離(km) | 1試合平均(km) | チームでの役割・特徴 |
---|---|---|---|---|
ブルーノ・ギマランイス(ニューカッスル) | MF | 423.09 | 約11.4 | ・ボックス・トゥ・ボックス型の中盤のエンジン ・攻守に奔走しチームをつなぐ役割 |
パスカル・グロス(ブライトン) | MF | 421.11 | 約11.2 | ・多才なベテランMF ・32歳でもスタミナ衰えず、攻守に貢献 |
デクラン・ライス(アーセナル) | MF | 412.96 | 約10.9 | ・守備的MFとして広大なエリアをカバー ・ボール奪取と配給で貢献 |
コナー・ギャラガー(チェルシー) | MF | 407.16 | 約10.7 | ・運動量豊富な若手MF ・攻守に献身し、時に主将も務める |
マルティン・ウーデゴール(アーセナル) | MF | 401.31 | 約10.6 | ・主将として前線からのプレスにも奔走 ・攻撃の司令塔だが守備でも走る |
選手(クラブ) | ポジション | 1試合平均走行距離(km) | チームでの役割・特徴 |
---|---|---|---|
コケ(アトレティコ) | MF | 約12.0 | ・中盤の汗かき役 ・攻守に献身しチームを支えるリーダー |
ガビ(バルセロナ) | MF | 約12.0 | ・若手ながら運動量豊富 ・プレスと攻撃参加を90分間続ける |
サウール・ニゲス(アトレティコ) | MF | 約11台 | ・中盤のハードワーカー ・守備時のカバーリング範囲が広い |
ミケル・メリーノ(ソシエダ) | MF | 約11台 | ・長身の万能MF ・攻守に走り回り、空中戦とインターセプトで活躍 |
選手(クラブ) | ポジション | 総走行距離(推定) | 1試合平均(km) | チームでの役割・特徴 |
---|---|---|---|---|
ニコラス・ハース(エンポリ) | MF | 約250~300km台 | 12.3 | ・スタミナ抜群のセントラルMF ・出場試合では終始ハードワークし走行距離リーグ1位 |
アドリアン・ラビオ(ユヴェントス) | MF | 約330km | 約11.0 | ・ボックス・トゥ・ボックス型MF ・攻守に広く動き長身を活かした守備でも貢献 |
テウン・クープマイナース(アタランタ) | MF | 約300km | 約11.0 | ・中盤の司令塔兼ハードワーカー ・精力的に走りプレスとチャンスメイクを両立 |
ブライアン・クリスタンテ(ローマ) | MF | 約300km | 約10台 | ・守備的MFとして常に出場 ・守備ブロックの中心でカバー範囲が広い |
選手(クラブ) | ポジション | 総走行距離(km) | 1試合平均(km) | チームでの役割・特徴 |
---|---|---|---|---|
マキシミリアン・エッゲシュタイン(フライブルク) | MF | 374.08 | 11.34 | ・中盤底の守備的MF ・プレス強度が高く攻守の切り替えで走り続ける |
ユリアン・ヴァイグル(ボルシアMG) | MF | 373.23 | 12.04 | ・アンカー役のMF ・試合平均距離でリーグトップのスタミナを示す |
グラニト・ジャカ(レバークーゼン) | MF | 372.17 | 11.28 | ・キャプテンシー溢れるMF ・豊富な運動量で攻守を統率しチームを牽引 |
エリエス・スキリ(フランクフルト) | MF | 306.75 | 11.36 | ・守備的MF ・27試合の出場ながら高い平均距離を記録し中盤を支えた |
レアンドロ・バレイロ(マインツ) | MF | 347.25 | 11.20 | ・若手MF ・攻守の潤滑油として走力を活かし、中盤の広い範囲をカバー |
選手(クラブ) | ポジション | 総走行距離(km) | 1試合平均(km) | チームでの役割・特徴 |
---|---|---|---|---|
河原 創(鳥栖) | MF | 438.61 | 12.90 | ・ボランチとして全試合フル出場 ・攻守に顔を出し続ける驚異的なスタミナでチームを支えた |
渡邊 凌磨(浦和) | MF | 429.6 | 約11.6 | ・ユーティリティー性の高いMF ・左SBやトップ下など複数ポジションで先発し豊富な運動量を発揮 |
田中 駿汰(C大阪) | MF | 391.6 | 約10.6 | ・守備的MF ・全試合に近く出場し、中盤でボール奪取と配給に奔走するチームの潤滑油 |
稲垣 祥(名古屋) | MF | 390.6 | 約10.6 | ・ボックス・トゥ・ボックス型MF ・攻守の切り替えで走り続け、得点力も備える |
西村 拓真(横浜FM) | MF | 370~ | 11~ | ・昨季J1王者のアタッカー ・開幕戦で13.75kmを記録するなど攻撃陣では突出した走行距離 |

ポジション | 1試合あたりの平均走行距離(目安) | 主な特徴・理由 |
---|---|---|
ゴールキーパー(GK) | 約4〜6km | 自陣ゴール周辺での動きが中心。フィールド選手より極端に距離が少ない。 |
センターバック(CB) | 約9〜10km | 守備中心で移動距離は控えめ。空中戦やカバーリングが主な役割。 |
サイドバック(SB) | 約10〜11km | 攻守の切り替えにより上下運動が多く、比較的運動量が多い。 |
ミッドフィルダー(MF) | 約11〜13km | 攻守両面での運動量が多く、チーム内で最も走行距離が多い傾向にある。 |
フォワード(FW) | 約8〜10km | 決定的な場面での瞬発的な動きを求められ、走行距離自体はMFより少なめ。 |
サッカーではポジションによって走行距離に明確な違いがあります。
一般的に最も走るのは中盤の選手、逆に最も少ないのはゴールキーパーです。具体的な数字で見ると、守備的MFやセンターハーフの平均走行距離が11~13kmとチーム内で最長である一方、センターバックは7~9km程度と短めです。
サイドバックやウイング(サイドハーフ)は攻守に上下動が多いため9~12kmとこちらも高め。
フォワード(ストライカー)は8~10kmほどで中間くらいの値になります。
そしてゴールキーパーはほとんどがペナルティエリア内の動きに限られるため4~5km前後と突出して少なくなります。
このように、「中盤 > サイドバック ≈ サイドハーフ > フォワード > センターバック > GK」というのが走行距離の多い順序です。
中盤(特にボランチ)が一番走る理由は簡単で、攻守に関与する範囲が広く、ピッチ中央で絶えずボールに絡む必要があるからです。
逆にセンターバックは主に守備時のポジショニングが中心で、相手FWについてエリア内を動く程度なので距離が伸びにくいのです。
またサイドバックやウイングは縦方向の長いスプリントを繰り返すため距離自体は長くなりますが、守備時と攻撃時での負担は異なります。最新の分析では、ボール非保持(守備)の場面ではセンターバックも含め全員ある程度走りますが、ボール保持(攻撃)の場面ではサイドの選手の走行距離が顕著に伸びることが分かっています。
いずれにせよ、ポジションごとの役割に応じて要求される運動量が違うため、「走行距離=運動量」という視点で見ると中盤やサイドがハードワークするポジションということになります。

では、よく走るチームは勝つのか? この疑問については様々なデータ分析が行われています。
結論から言えば、走行距離そのものと勝敗の相関はそれほど強くありません。
多くの研究者が指摘している通り、チームや選手の総走行距離と試合結果との間に有意な関係は見出しにくいというのが現状です。
例えばJリーグのデータでは、勝利チームが相手より多く走っていた試合は約62%で、残り約38%の試合では勝ったチームの方が走行距離が短かったという分析があります。
実際、ロシアW杯2018でもベスト16に進出した日本代表の走行距離は全32チーム中最下位でした。一方で優勝したフランスや準優勝クロアチアが特別少なかったわけでもなく、中位程度の数値でした。
これらから、「走った方が必ず勝つわけではないが、走れないチームは勝てない」のもまた事実、と言えるかもしれません。つまり走行距離は勝利の必要条件ではあるが十分条件ではないということです。
とはいえ、まったく無関係でもありません。例えば相手より多くスプリントした試合では勝率がやや高いとのデータもあり、特に攻撃において決定的な瞬間にはスプリント(全力疾走)が関与することが多いと報告されています。
実感としても、延長戦に突入するような拮抗した試合では、最後まで走り負けしなかったチームが決勝点をもぎ取る場面をよく目にします。総距離だけでなく「どの局面でどれだけ強度の高い走りができたか」が勝敗を左右すると言えるでしょう。
監督や分析担当は、単に走行距離の合計を見るだけでなく、ハイインテンシティの走行距離やスプリント回数を含めてチームの運動量を評価しているのです。
One more step.
— Team Messi (@TeamMessi) July 2, 2019
The captain leads the way.#DareToCreate pic.twitter.com/8oKjzuG3NP
一方で走行距離の少ない選手もいますが、必ずしも怠けているわけではなく、ポジショニングやプレースタイルの違いによるものです。
その代表格がアルゼンチン代表のリオネル・メッシです。メッシは試合中の多くの時間を歩いて過ごすことで知られ、2022年W杯では1試合平均8.8kmとチーム平均より約2kmも少ない数値でした(それでも大会MVP級の活躍を見せました)。
実際、メッシはプレー時間の80%近くを歩行で費やし、スプリントは味方攻撃陣の半分以下というデータもあります。
ではなぜ彼がそれで活躍できるかと言えば、歩いて体力を温存しつつ相手のマークを外し、ここぞという瞬間だけ一気に加速するからです。
要するにオンとオフの切り替えが非常に上手いのです。メッシのような天才肌の選手は極端な例かもしれませんが、現代サッカーではメリハリをつけて走ることが重要になっています。
90分間ずっとハイペースで走り続けるのは不可能です。だからこそ「歩く技術」も含めたペース配分が戦術的に求められます。
このように「走行距離が少ない=怠慢」ではなく、「走行距離が多い=チームへの貢献度が高い」とも一概には言えないことがわかります。
それぞれの選手が自分の役割に応じた走り方をしており、多く走る選手はチームの心臓となり、少ない選手は決定的な仕事にエネルギーを集中しているのです。

チーム全体の戦術も走行距離に大きな影響を与えます。
極端な例として、「ハイプレス戦術」と「ローブロック(引いて守る戦術)」を比べてみましょう。
ハイプレスを採用するチームは、相手陣内から積極的にプレスをかけボールを奪いに行くため、必然的に全員の走行距離・スプリント回数が増える傾向があります。
前線の選手も守備で走り回る必要があるので、フォワードでも運動量が多くなります。
一方、ローブロック戦術(自陣深くにブロックを敷いて守る)は、基本的に自陣に引いてスペースを埋めるため、無闇に追い回すことは少なくなります。結果としてチーム全体の走行距離は抑えめになる傾向があります。
実際、先述のノッティンガム・フォレストは意図的に走行距離を少なくする戦術を取り入れており、リーグ最少の104.6kmという数字になりました。
興味深いのは、その結果として怪我人の少なさにもつながっている点です。
走りすぎによる疲労蓄積を避けることで、シーズンを通して主力を固定しやすくしているのです。
ただしローブロックのチームが必ずしも楽をしているわけではありません。自陣に引いている分、被攻撃時には横へのスライドや集中力の維持など別の意味で体力を使いますし、ボールを奪った後は一気にカウンターで長い距離を走る必要もあります。
実際にはポゼッション率とも関係しており、一般にボール非保持の時間が長いチームほど走行距離が長くなる傾向があります。
相手にボールを持たれる時間が長いと、それだけ守備で振り回され走らざるを得なくなるためです。逆にボールを支配するチーム(ポゼッション志向)は、自分たちでボールを動かすぶん走行距離は伸びにくいですが、それでも選手はパスコースを作るために絶えず動き回っています。
例えばスペインやマンチェスター・シティのようなパス主体のチームも、決して歩いてばかりいるわけではなく、統計上もパス成功率が高い強豪ほど走行距離が短いとは一概に言えません。
要するに「走る戦術 vs 繋ぐ戦術」にも一長一短があり、走行距離の多寡だけでは優劣を測れないのです。
それでも、監督によっては「我々は年間◯km走るチームになる」という目標を掲げることもありますし、走行距離がチーム戦術の指標・チームのスタイルを表す数字として重視される場面もあります。

スポーツ競技名 | 1試合あたりの平均走行距離(1選手あたり) | 特徴・備考 |
---|---|---|
サッカー(フィールド選手) | 約10~12km | スポーツの中でも特に運動量が多く、攻守でピッチ全体を動き続ける。 |
バスケットボール | 約4〜5km | コートが狭く試合時間が短いが、激しい切り返しと瞬発力が求められる。 |
テニス(シングルス) | 約3〜5km(試合時間による) | 短距離のダッシュが多いが、プレー時間の影響で距離は中程度にとどまる。 |
野球 | 約1〜2km(外野手)/1km未満(内野手) | ポジションによるが、試合中の運動量は非常に少なく、瞬発的な動きが中心。 |
ラグビー(15人制) | 約7〜8km(ポジションによる) | フィジカルコンタクトが多く、運動量は中程度だが、接触プレーが非常に激しい。 |
ご覧のように、サッカー選手は他の競技と比べても突出して長い距離を走っていることが分かります。
その要因は、サッカーがプレーの途切れが少なく(90分間で選手交代も最大5人まで)、フィールドが広いことにあります。
バスケットボールはコートが狭いため往復距離は短くなりますし、野球やアメフトはプレーとプレーの間に休止時間が長いです。
また、サッカーは選手全員が攻守に関与するため、ポジションに関わらず全員が走ります。
一方、他競技では役割が明確に分かれていて動く選手が限られる場合もあります。このような違いから、サッカーには長時間走り続ける持久力と繰り返しスプリントする能力の両方が求められます。
他競技のトップアスリートももちろん優れた体力を持っていますが、サッカー選手のスタミナは特に特筆すべきものなのです。

「サッカー選手の走行距離」というテーマについて、データ分析から戦術、他スポーツ比較まで幅広く見てきました。
プロの試合では1人平均10km前後を走るという事実は、サッカーがいかにハードな運動量を要するスポーツかを物語っています。
走行距離はポジションや戦術によって変化し、必ずしも走れば勝てるわけではありません。しかし、走力がチームの土台を支えていることも確かであり、現代サッカーでは「走れない選手」は生き残れないとも言われます。
実際、欧州トップレベルでは技術や戦術が拮抗した中で、最後にものを言うのは総合的なフィジカル(走力を含む)であるケースも多いです。
したがって、選手個々が持久力を鍛えつつ、賢くスタミナを使う術を身につけることが重要です。
サッカー選手の走行距離の話題は、観戦者にとっても戦術理解を深める手がかりになります。「なぜこの試合でこのチームはあまり走っていないのか?」「誰が一番ハードワークしていたのか?」といった視点で試合を見ると、また違った面白さが見えてくるでしょう。
ぜひ次の試合観戦では走行距離のデータにも注目してみてください。そこから選手やチームの狙い、戦い方の違いが浮かび上がってくるはずです。
走行距離という切り口からサッカーを分析することで、より深い理解と新たな発見が得られるかもしれません。