サッカーのVARは1試合に何回まで?使用回数の上限とは

サッカー観戦初心者が疑問に思いやすいのが、「VARは1試合に何回まで使えるの?」という点です。

VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)は近年ほとんどの主要大会で導入され、試合の判定に大きな影響を与える存在となっています。

本記事では VARのルール上の介入回数や実際の運用状況を詳しく解説します。

VARとは何か?

VAR(Video Assistant Referee)とは、ピッチ外にいるビデオ判定専任の審判員が映像を用いて主審の判定をサポートするシステムです。

2018年のロシアW杯で初めてW杯に全面導入されて以来、世界中に広がりました。VARの基本理念は「最小限の干渉、最大限の利益」にあります​。

つまり、試合への影響(干渉)をできるだけ減らしつつ、致命的な誤審をなくして利益を最大化しようという考え方です。このためVARは「明確かつ明白なエラー」や「重大な見落とし」があった場合にのみ介入する仕組みになっています​。

また、VARはテニスのチャレンジ制度や野球のリクエスト制度とは根本的に異なります。テニスや野球では選手や監督が判定に異議を唱えてビデオ判定を要求し、回数にも制限があります。

一方、サッカーのVARでは選手や監督が「要求」することはできず、ビデオ判定を行うかどうかはあくまで審判団(主審およびVAR担当審判)の裁量です​。主審が下した判定(あるいは見逃した重大事象)について、裏でVAR担当審判員が常にすべてチェックしており、その中で「確認が必要」と判断した場合に主審へ連絡、主審が映像レビューを行います​。

つまり、VARは試合中常に稼働していて必要なときに自動でチェックするので、サッカーではテニスや野球のように「チームごとにチャレンジ権○回まで」といった概念自体がありません。

VARの介入回数に上限はあるのか?

結論から言えば、公式ルール上、VARが介入できる回数に上限はありません

前述のように、VARは審判側が必要に応じて行うものであり、試合中に起きた対象事象に対しては何度でも介入可能です​。例えば1試合で明白な誤審が5回起きてしまえば、極論すれば5回でも10回でもVARは介入し得るということです。

ただし実際には、後述するように1試合で何度もVARレビューが行われるケースは稀です。IFAB(国際サッカー評議会)はVAR運用の目安として「3試合に1回程度のレビュー」が適切としています​。

現状も、VARが導入されている試合の約7割では1度もレビュー(判定訂正のための介入)が行われないというデータがあります​。

言い換えれば、VARが介入するのは全体の3割程度の試合で、そのうち複数回(2回以上)介入が発生する試合はさらに少数(全試合の5%程度)に留まっています。

これは「最小限の干渉」という理念通り、必要な場合に限り介入する運用がなされていることを示しています。

実際、日本のJリーグでVARを初めてフル導入した2021シーズンのデータでは、全380試合でレビュー総数は78回(=判定修正が78件)でした。単純計算で平均約4.87試合に1回の介入頻度となり、IFABの国際基準「3試合に1回」を大きく下回りました​。

主審の判定精度が高かったことや、VARが慎重に「本当に明白な誤り」にのみ介入した結果と分析されています​。同様に、欧州主要リーグでもVAR導入初期から徐々に運用が洗練され、1試合に複数回のVAR介入はごく稀になっています。

  • ルール上の上限:VAR介入回数に明文化された上限なし。必要なら何度でも可能。
  • 実際の発生頻度:上限は無いが、実際は4.87試合に1回程度しか発生していない(Jリーグの場合)
  • チーム側の要求不可:監督・選手が任意に要求できるチャレンジ制度ではないため、「何回まで要求できるか」という発想自体が当てはまらない(全て審判主導)

VARが介入できる4つのケース

VARはどんなプレーでも介入するわけではなく、介入が許されるのはゲームを左右する重大な場面に限られます。その対象は大きく4つのカテゴリーに絞られています​(Jリーグなどでは公式に「4事象」と呼んでいます)。

①得点に関わる事象

ゴールが入ったかどうか、あるいは得点の直前に反則やボールアウトが無かったかなど。例えばオフサイドやハンドの見逃しでゴールが認められてしまった場合や、逆に誤ってオフサイドと判定されゴールが取り消された場合に、VARが介入して正しい判定に修正します。

②ペナルティキック(PK)に関する事象

PKの判定そのものやPKとなるファウルの有無、またはエリアの内外の判定など。主審が見逃した明白なファウルでPKが与えられなかった場合や、逆に明らかにボールに触れただけなのにPKを与えてしまった場合などに介入します。

また、一度与えたPKを取り消す、逆に与えなかったPKをVAR後に与える、といったケースが該当します。

③退場(レッドカード)に関する事象

一発レッドカード相当の反則が見逃された場合、または不当に退場処分が下された場合。VARの対象は直接の退場のみで、2枚目のイエローカード(退場)については対象外なのがポイントです。

例えば悪質な肘打ちやタックルが見逃されてカードすら出ていない時、VARが介入して主審に退場を促すことがあります。逆に主審が誤ってレッドカードを出してしまった場合も、VAR確認後に取り消されイエローカードになるケースがあります。

④人違い(ミスアイデンティティ)

警告や退場を出す際に選手を取り違えた場合。例えばある反則でA選手を退場処分にすべきところ、誤って隣にいたB選手にカードを提示してしまったような時、VARが介入して対象を訂正させます。

この「人違い」は頻度は非常に低いものの、VARがなければ修正が難しい重大ミスであり、VARがセーフティネットとして設けられている理由の一つです。

以上の4場面以外、たとえばスローインの判定ミスやコーナーキック/ゴールキックの判定など、得点や退場に直結しない局面ではVARは介入しません。あくまで試合の結果に直結しうる重要な判定のみが対象です。

この制限により、「細かいプレーまで全てビデオ判定で止まってしまうのでは?」という懸念が和らげられています。

もう一つ重要な点は、「主審が一度下した判定を覆す可能性がある」という場合にVARが機能するということです。主審がプレーを続行させた(ノーファウルと判断した)が実は見逃しだったケースや、主審が笛を吹いた判定自体が誤りだったケースが典型です。

逆に言えば、主審が明確に見て正しく判定している場合にはVARは何もしないので、サッカーのすべての判定が機械任せになるわけではありません。

VARレビューの種類とは?オンフィールドレビューとVARオンリーレビュー

VARが介入して判定を見直す際の手順には大きく2種類あります。オンフィールドレビュー(OFR)とVARオンリー・レビュー(スタジオレビューとも呼ばれることがあります)です。それぞれの違いを簡単に説明します。

VARオンリーレビュー

文字通り、主審が自ら映像を確認せず、VAR担当からの情報提供のみに基づいて判定を変更・確定するケースです​。主にオフサイドの有無やエリアの内外、ボールの出入りなど、映像を見れば事実が明確に判別できる状況で用いられます​。

例えばゴールシーンで微妙なオフサイドがあった場合、VARが線を引いてオフサイドと判定できれば、主審は自分で映像を見なくても「オフサイドです」というVARの助言だけでゴールを取り消します。客観的事実に関する判定ではこの方式が多用されます。

オンフィールドレビュー(OFR)

主審がフィールド脇のモニターまで走り、自分の目でリプレー映像を確認してから最終判定を下すケースです。こちらはファウルの程度やハンドの意図性など主観的な要素を伴う判定で使われます。

VAR担当から「映像を確認した方がよい事象」があると通知を受けた主審は、プレーを止めて四角いテレビマーク(TVシグナル)を掲示し、モニターで該当シーンをチェックします。

例えばペナルティエリア内でのハンドリングやファウル判定を覆すかどうかは、主審が実際の映像を見て「明白な間違いか」を自分で判断します。この方式では最終決定権が常に主審にあることが強調されます。

これら2種類のレビューは状況に応じて使い分けられています。一般に事実確認(ファクトチェック)の場合はVARオンリーレビュー、主審の裁量判断の修正の場合はオンフィールドレビューとなる傾向です。

例えばオフサイドやボールアウト、ゴールラインテクノロジー関係では主審がモニターを見る必要はなく、VARの客観報告で判定を訂正できます。一方、レッドカード相当かどうか、PKとなるハンドかどうかなど微妙なケースでは主審が映像を見て総合判断するのです。

Jリーグの統計でも、2021年シーズンの78件のレビュー中、オンフィールドレビューが51回、VARオンリーレビューが27回という内訳でした。VARオンリーの約2倍オンフィールドが行われており、いかに主審自身の確認が重視されているかがわかります。このようにVARはあくまで「主審を支える裏方」であり、最終決定を下すのは常に主審という建前が守られています。

ワールドカップでのVAR運用回数

2018年ロシアW杯でVARがW杯に初導入された際、その運用は大きな注目を集めました。

当初は「誤審が減る」「時間がかかりすぎる」など賛否両論でしたが、結果的には大会全体で64試合中20試合でVARレビューが行われ、17件の判定が覆ったと報告されています。平均すると約3試合に1回のレビューで、これは前述のIFAB目安「3試合に1回」とほぼ一致します。

実際、グループリーグでは頻繁にレビューが発生しましたが、トーナメントに進むにつれ各国の選手・審判も適応し、後半になるほどVAR介入が減ったとも言われました​。

ロシア大会でもっとも顕著だったのはPK(ペナルティキック)の激増です。大会全体でPKの本数が史上最多を記録し、その多くがVARによる確認で与えられたものでした。実際、ロシアW杯では10件以上のPK判定がVARレビューによって変更・追加されたとされ、結果的にセットプレーからの得点が飛躍的に増えました。

FIFAも「VARの導入により正しい判定の率が約99.3%に達した」と発表し、一定の成功を強調しました。

続く2022年カタールW杯でもVARは全試合で使用され、技術も進歩しました(例えば半自動オフサイド判定技術の導入など)。カタール大会では大会通算で25件のVARによる判定覆し(オーバールール)が発生し、こちらも1試合あたりに換算すると約2.5試合に1回と、ロシア大会よりやや増加しました。

これは、半自動オフサイド技術によりオフサイドの判定修正がスムーズかつ確実になった影響もあります。カタール大会でもグループリーグでVAR介入が相次ぎ、特に「三笘の1ミリ」事件として知られる日本対スペイン戦のゴール判定では、ボールがわずかにライン上に残っていたことをVARが確認しゴールを認めるという劇的なシーンもありました。

三笘の1ミリ。わずかにライン上にボールが残っていた為、その後のゴールが認められた

この場面は世界中で大きな話題となり、VARの存在感を示す象徴的な出来事となりました。

一方で、カタールW杯では過去にないほど長いアディショナルタイムが毎試合のように取られたことも特徴でした。これはVARによるレビュー時間やゴールセレブレーションの時間などを厳密に計上したためとも言われています。

VARが導入されると、レビュー中は時計が止まるため試合時間そのものは延びませんが、その分後半や前半終了時のロスタイムが増える傾向があります。この点については選手から「長すぎる」という声も出ましたが、FIFAは「正確なプレー時間を確保するため」と理解を求めました。

JリーグでのVAR運用回数

Jリーグでは、2019年にルヴァンカップ(国内杯戦)で試験導入され、2020年からJ1リーグ全試合でVARを導入する予定でした。しかし2020年はコロナ禍の影響で人員確保が難しくなり、開幕節のみの限定導入に留まります。そして2021年シーズンからJ1全試合でVARが本格導入されました。

前述した通り、2021年のJ1では380試合で78回のレビュー(判定修正)が行われ、介入頻度は約4.87試合に1回でした​。これは国際標準よりかなり少ない頻度で、Jリーグの審判団の高い精度や運用の慎重さが評価されました。

シーズン序盤は3.7試合に1回のペースでレビューが発生していましたが、シーズン中盤以降は6試合に1回、終盤には8試合に1回とさらに減少し、運用が安定するにつれ介入が最小限になっていったことがデータから読み取れます。

JリーグのVAR統計で注目すべき点は、「チェック」と呼ばれる裏での確認作業の多さです。2021年J1では全試合通算で1562回ものプレーがVARによってチェックされていました​。

内訳は得点に関するチェックが1032回、PKに関するものが261回、退場に関するものが283回、人違いが3回などで、1試合あたり平均4.11回は何らかのチェックが行われている計算です。

しかし実際にレビュー(主審への通知まで至ったケース)はそのうちの78回だけで、残りの大多数は「確認した結果、明白な誤りなし」として流されています。

つまりVAR担当審判は裏で常に働いているものの、表立って試合が止まるケースはごく一部ということです。

こうした努力の結果、VAR導入によって判定精度は飛躍的に向上しています。IFABの調査によれば、VAR未導入の試合では主審の判定正確率は約93%だったのが、VAR導入後は約98.8%にまで改善されたとのデータがあります。

Jリーグでも、「試合が止まる時間は平均して1試合あたり79.4秒に過ぎない」という報告もあり、VARがゲームに与える遅延は1分少々とごく僅かです。一方で、その1分弱の介入によって救われる判定ミスがあるとすれば、導入する価値は大きいと言えるでしょう。

具体的なJリーグでのVAR介入事例も見てみます。

1試合での最多VAR介入回数は、2023シーズンまでで「3回」が記録されています​。

例えば2023年のFC東京 vs サンフレッチェ広島の試合では合計3度のVARレビューが行われ、大きな判定変更が相次ぎました​。

この試合では、ドロップボールで再開しようとした矢先にPKの疑惑が生じVAR介入→OFR、結果的にその前段階でオフサイドがあったとしてゴール取り消しという複雑なケースも発生し、会場や視聴者が混乱する場面もありました。

もっとも、この「1試合3回介入」は非常に稀で、J1全体でも年間数試合あるかないかという程度です。多くの試合ではVARのお世話になることなく進行し、ニュースにも取り上げられない静かな活躍に留まっています。

欧州主要リーグのVAR運用回数と国ごとの違い

欧州でも主要なリーグは2017~2019年にかけて続々とVARを導入しました。ドイツ・ブンデスリーガとイタリア・セリエAは2017-18シーズンから導入の先駆者で、スペイン・ラ・リーガとフランス・リーグアンは2018-19、イングランド・プレミアリーグは慎重姿勢を崩さず2019-20からようやく導入しました。

国ごとの運用差でよく言われるのがプレミアリーグのVAR介入頻度は他より少なめという点です。プレミアでは「主審の判定を最大限尊重する」という文化が強く、「よほどの誤審でない限りVARは介入しない」傾向があるとされています。

そのため、他国と比べるとVARの登場シーンが若干少なく、ファンから見ると「もっとVARを活用すべきでは?」との声も一時期ありました。

一方で、プレミアはオフサイド判定に極めて厳格で、ミリ単位のオフサイドも見逃さずチェックするためその部分では他リーグより介入が多いとも言えます(いわゆる「わき毛オフサイド」「髪の毛オフサイド」と揶揄される非常に僅差のオフサイドまで取り消された例がこれに当たります)。

ドイツ・ブンデスリーガは「VAR先進国」として運用を洗練させてきました。導入初年度は時間のかかるレビューや不透明な進行で批判も受けましたが、2018-19シーズンには82件の明白なミスをVARで修正する一方、VARが介入すべきだったのに見逃したケースは19件(そのうち重大なミス残りが2件)まで減らせたという統計があります。

これは完全ではないものの、多くの誤審を是正しつつごくわずかな漏れに留めた成果と評価できます。また、同シーズンのブンデスリーガではオンフィールドレビューは平均5試合に1回という低頻度を達成しました。

運用開始当初と比べると格段にスムーズになり、選手もVARの存在を織り込んでプレーできるようになったと報告されています​。

イタリア・セリエAやスペイン・ラ・リーガも概ね成功を収めています。スペインでは初期に物議を醸す判定もありましたが、現在ではリーグ戦の流れに溶け込んでいます。イタリアは伝統的に審判への不信が強かった背景からVAR歓迎の声が大きく、導入直後から「誤審が減った」と肯定的な評価が多く見られました。

各国リーグの違いとしては、観客への情報提供方法も挙げられます。

例えばドイツやイタリアではスタジアムのビジョンにレビュー中の映像や結果を比較的詳細に映すことが多く、観客にも何が起きているか分かりやすい工夫があります。

プレミアリーグでも遅れて導入されたものの、当初はモニター確認をほとんど行わずVAR室の判断だけで進めていたため不透明だと批判され、後にOFRを増やした経緯があります。

また2023-24シーズンからは、主審がVARレビュー後に結果を場内アナウンスで説明する試験も行われています​。このように各国で運用方法に工夫が凝らされ、徐々にファンや関係者の理解も深まってきています。

進化するVARと今後の展望

VARは導入から数年で大きく進化してきました。技術面では半自動オフサイド検出システムや3D画像による瞬時のライン判定などが実用化され、2022年のW杯や欧州CLでも活用されています。

また、審判とVARのやり取りを観客に公開する試み(主審がマイクで結果を説明する等)や、VAR判定時のスタジアム演出の改善など、運用面の工夫も続いています。

興味深い新動向として、コーチ(監督)によるチャレンジ制度の試験導入があります。2023年にはFIFA主催のU-20女子ワールドカップで、史上初めて監督がVARレビューを要求できる「リクエスト方式」のビデオ判定(VS:ビデオ・サポート)が採用されました。

この試みでは各監督に1試合2回までリクエスト権が与えられ、判定が覆れば権利は消費されないというルールでした​。対象事象は通常のVARと同じ4つで、ゴール時など明白なケースはリクエストがなくとも自動チェックされるなどの補足もあります​。

まだ限定的な試験段階ですが、将来的に監督が異議を唱えられるようになる可能性もゼロではありません。しかし現時点ではトップレベルの大会で採用される予定はなく、様子見の段階です。

最後に、VARの究極的な目標は「明らかな誤審ゼロ」でしょう。人間の判定ミスをテクノロジーで限りなく減らし、公平公正な試合を実現することです。

ただし一方でサッカーにはグレーゾーンがつきものです。VARをどれだけ導入しても、例えば接触の程度やハンドの意図などグレーな部分の判定は完全には統一できません。

要はテクノロジーと人間の協働で、合理的な落とし所を探っていくことになります。現状のVARはその第一歩として成功を収めつつありますが、今後もルール改正や技術革新に合わせて進化を続けるでしょう。

Q&A

VARは1試合に何回まで使えるの?
ルール上の回数制限はありません。明白な誤審や見逃しがある限り、1試合で何度でもVAR介入は可能です​。ただ実際には、多くても1試合で2~3回程度が最大で、ほとんどの試合では0回か1回の介入に留まります。

あまりに頻繁に起きるようでは、そもそも主審の判定に問題がありすぎるということになるでしょう。
チームはVARを要求できないの?(チャレンジ制度はないの?)
現在のサッカー競技規則では、監督や選手がVARレビューを要求することはできません​。全て審判団が自発的にチェックし、主審だけがレビューを開始できます。

テニスや野球のようなチャレンジ制度はありません。ただし、一部の大会で監督のリクエスト制を試験中で、将来導入される可能性もゼロではありません。
VARのせいで試合時間が延びたりしないの?
VARレビュー中は試合時計を止めるため、その分はアディショナルタイム(ロスタイム)に加算されます。統計上、VARによる中断時間は1試合あたり合計でも1~2分程度です。

そのためVARが直接試合を大幅に長引かせることはありません。ただ、2022年W杯のように他の要因も含め厳密に時間管理するとロスタイムが長くなるケースもあります。
誤審が明らかでも主審がVARを見ないことがあるのはなぜ?
VAR介入の条件が「明白な誤り」かどうかの微妙な線では、VAR担当が「主審の判定は許容範囲内」と判断すればあえて介入しないことがあります。

例えば軽微な接触のPKなどグレーな場合、主審が流したならVARも尊重します。ファンから見ると「なんでVAR使わないんだ!」となるケースですが、VARはあくまで最小限の干渉に留める運用方針のためです。
VARで完璧な判定が実現しましたか?
劇的に誤審は減りましたが、完璧とまでは言えません。前述の通りIFAB発表では正確率98.8%​とされていますが、依然2%ほどは取りこぼしがあります。

VAR自体の見落としや、VARが介入できない微妙な主観判定のズレなどが理由です。ただ98%台まで上がったのは大きな成果であり、今後さらに改善が期待されています。

まとめ

最後に本記事のポイントをまとめます。

  • VAR介入回数の上限はルール上存在しません。ただし実際の運用では頻繁な介入はなく、1試合で0〜1回程度が通常です。
  • VARは得点・PK・退場・人違いの4つの重大事象にのみ適用され、その他のプレーには介入しません。あくまで試合を左右する場面の誤審を正すための仕組みです。
  • オンフィールドレビュー(主審自ら映像確認)とVARオンリーレビュー(情報提供のみ)の2種類があり、状況に応じて使い分けられます。最終決定権は常に主審が持ちます。
  • ワールドカップや主要リーグでもVARの効果で誤審が減少し、公正性が向上しました。一方で試合の中断や判定基準など課題も指摘されつつ、運用改善が進んでいます。

VARの登場によりサッカーは新たな時代に入りました。

判定に救われるチームもあれば泣かされるチームも出てきますが、それも含めてサッカーのドラマと言えるでしょう。

今後もデータを蓄積しながら、より良いVAR運用が模索されていくはずです。

近い未来、「VARがあるのが当たり前」の世代が増えていけば、議論も落ち着いていくことでしょう。VAR自体もさらに進化し、いつの日か「誤審ゼロ」に限りなく近づくことを期待したいと思います。