サッカーボールを手に取ってみたとき、「このボールの中はどんな構造になっているのだろう?」と考えたことはありませんか? 多くの人は外側の革やデザインに目が行きがちですが、実はサッカーボールの内部には複数の素材や部品が絶妙に組み合わさっています。こうした「中身」の違いが、蹴り心地や耐久性、さらには価格にも大きく影響しているのです。
本記事では、サッカーボールの中身がどのように作られているかをわかりやすく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
サッカーボールは、一見「外側のパネルと空気が入っている」というシンプルな印象を受けがちです。しかし、実際には上記のように「表皮」「補強層」「縫い糸」「チューブ」といったように4層程度の構造になっています。
それぞれ外側の層から解説していきます。
サッカーボールの表面には、いくつかのパネル(五角形や六角形など)が縫い合わされる、あるいは熱圧着で貼り合わせる形で構成されています。パネルは一般的に以下のような素材が用いられます。
- 合成皮革 (PU / PVC):多くのサッカーボールに使われる素材。耐水性や耐久性が高く、価格帯も幅広い
- 本革:昔ながらの素材で、独特の蹴り心地がある一方、メンテナンスが難しく、吸水しやすいといったデメリットもある(現在の一般的なボールではほとんど使用されない)
- 特殊コーティング:より高級なモデルでは、耐摩耗性や防水性を高めるために特殊コーティングが施されている
外革のすぐ内側には、補強層が重ねられています。この補強層があることで、蹴ったときの「柔らかさ」や「飛び方」が変わり、足への衝撃が和らぎます。クッション材にはポリエステルやポリウレタンなどの合成繊維が使われることが多く、層の厚みや構成によってボールの価格や性能が大きく左右されます。
補強層とチューブの間には裏打ち布で更に補強をしています。
サッカーボールの中身の中身とも言える部分が、空気を保持するためのチューブ(ブラダー)です。主に2種類が存在し、それぞれ特徴が異なります。
- ブチル (Butyl) 製チューブ:空気が抜けにくく、メンテナンス頻度が低く済む。ただし、やや重く、弾力性が低い場合がある
- ラテックス (Latex) 製チューブ:軽量で弾力性が高く、優れた蹴り心地を得られる。空気が抜けやすいため、こまめなメンテナンスが必要

サッカーボールの「中身(インナー)」と呼ばれる部分には、主に空気室(ブラダー)とクッション層が含まれます。外見からは直接確認できないものの、ここに使われる素材や製法は、ボールのプレー感・耐久性・メンテナンス性などに大きく影響します。ここでは、インナー素材が具体的にどのような役割を担っているのかを詳しく見ていきましょう。
サッカーボールの中身であるチューブには「空気をいかに安定して保持するか」という役割があります。蹴るたびに圧力が外へ逃げることを防ぎつつ、適度な弾力を生むことで、シュートやパスの正確性や飛距離に直結します。
ブチル (Butyl) 製チューブでは空気圧が長持ちし、頻繁に空気を入れ直す手間がかからないため、安定した弾力を比較的長期間保ちやすいです。
ラテックス (Latex) 製チューブでは、反発力や蹴り心地が「ふわり」としており、グリップ感を得やすいです。
チューブの素材によって蹴った時の感触などが変化する為、サッカーボールを購入する際はチューブの素材に着目してみるのも良いと思います。
サッカーボールの外革とチューブの間には、ポリウレタンやポリエステル、あるいは複合素材を用いたクッション層が重ねられています。このクッション層があることでクッション性や反発力が得られます。
ボールが足に当たったときの衝撃を和らげ、プレーヤーの足への負担を軽減したり、安定したタッチやトラップのしやすさに繋がります。
また、ボールの「弾く力」をコントロールし、蹴り込んだときに適度な飛距離を生み出します。クッションが薄いほど弾きが強くなり、厚めに設計されているとソフトな感触になります。
クッション素材の種類や層の厚さは、ボールごとに異なります。高価格帯の公式球やトップモデルでは、複数層のクッション材を緻密に配置し、蹴り心地と反発力のバランスを極めて高いレベルで実現しているケースが多いです。
中身の構造は適切な環境、及び空気圧で使用することでサッカーボールの耐久性を高める役割もあります。
ただし、サッカーボールは、使用頻度や環境(芝、土、人工芝、アスファルトなど)によって劣化のスピードが変わります。特にチューブやクッション層は、以下のような要因でダメージを受けやすくなります。
- 空気圧の過不足:過剰な空気圧で使い続けると、縫い目やチューブに負荷がかかり破損リスクが高まる。逆に空気が足りないと、衝撃が外革やクッション層に伝わりやすく、形状が崩れやすくなる
- 温度・湿度の影響:高温の車内などで放置すると、ゴム製のチューブが劣化しやすい。雨天後や濡れた状態で放置すると、素材が痛みやすい。
- 地面との摩擦・衝撃:アスファルトや硬い地面で使うと、外革を通してクッション層も損傷しやすい。空気室までの距離が短くなり、破裂やパンクリスクが上昇。

第103回全国高校サッカー選手権大会の公式球です。
ALMUNDOはスペイン語で“Al Mundo”で“To The World”という意味になります。ミカサは“Al”と“Mundo”の2語を1語にして、“ALMUNDO(アルムンド)”という造語を作成しました。サッカーを愛する人たちとともに『世界へ』羽ばたこうというミカサの思いが込められています。
中身のチューブにはMIKASAが長年培ってきたゴム技術から、天然ゴムと合成ゴムの優位性を併せ持った『新配合ゴムチューブ』が使用されています。
これによって高い空気圧保持力が維持され、従来のサッカーボールと比較して39%も空気圧保持力が上がっています。
常温時と低温時でのリバウンド高さの差も低減し、より跳ね返り速度も向上しています。

2025年のFIFA主要大会公式試合球に使われているサッカーボールです。
コネクト25(CONEXT25)は”CONNECTION” と “NEXT”から生まれた造語です。スポーツを通じてすべての人種、世代、国々が団結する、世界中のつながりを表しています。
大きな円形のデザインはサッカースタジアムを表現しています。カラーリングは白を基調にしつつ、イエロー・パープルの色鮮やかなカラーを採用しています。
他に類を見ないアディダス独自の新形状「スピードシェル」を搭載しています。大小2種類の異形状のパネルを20枚使用した組み合わせは空気抵抗を減らし、キックの正確性と飛行安定性に貢献します。
また、新形状の突起(エンボス)状シボと陥没(ディボス)状シボを採用し、更なるキックの正確性と飛行安定性の向上に加え、よりカーブのかかるボールを実現しています。
更に、熱接合技術により、縫い目の無い表皮構造を可能にしています。それにより、どこを蹴っても同一の反発力が生じ、正確なパスやシュートを実現することが可能となります。

サッカーボールが今のような構造に至るまでには一体どのような歴史があったのでしょうか?ここでは、サッカーボールが今のようなクオリティに至るまでの歴史を概観してみましょう。
紀元前の中国(春秋戦国時代頃)では、革製のボールに毛を詰めたりして遊ぶ「蹴鞠(けまり)」という蹴球競技が存在したといわれます。日本の「蹴鞠」と同じ漢字を書きますが、こちらは宮中儀式としての意味合いが強く、現代のサッカーとは別物とはいえ、ボールを蹴って遊ぶ文化が既に存在していました。
ヨーロッパでも、中世の時代から「フットボール」に似た遊びが各地域で行われていました。当時は豚の膀胱(ぶたのぼうこう)などを膨らませ、それを布や革で覆ったものがボールとして使われることもあったようです。これらは当然ながら耐久性も低く、形もいびつで、今の感覚からするととても重く扱いにくいものでした。
19世紀半ば、アメリカ人のチャールズ・グッドイヤーがゴムを加硫(バルカナイズ)する技術を確立し、ゴムが弾力性と耐久性を高めて実用化されました。これによって、空気の入れやすいゴム製のチューブをボール内部に使用できるようになり、サッカーボールの形状や機能は大きく進化しました。
革製の外皮の内側にゴム製のチューブを入れることで、ボールはより丸く保てるようになりました。また、空気圧の調節も容易になり、過去の豚の膀胱に比べてはるかに実用的かつ扱いやすいものとなったのです。
産業革命以降、工場での大量生産が可能になると、サッカーボールの品質も徐々に安定し、価格も下がりました。これにより、一般の人々にもサッカーが普及しやすくなり、サッカー文化がイギリスを中心に爆発的に広がったのです。
19世紀後半からイングランドでフットボールリーグが始まり、公式試合で使うボールが徐々に標準化されていきました。まだ革とゴムが主体でしたが、革の縫い合わせ方やサイズ、重量などに一定の規格ができ始めたのです。
初期のサッカーボールは革の縫い合わせ方がさまざまでしたが、20世紀初頭には六角形と五角形を組み合わせた「32パネル」構造が徐々に普及していきます。32パネル構造は比較的球形を保ちやすく、空気力学的にも優れた設計でした。
また、20世紀中盤までは手縫いが主流で、熟練の職人による縫製は高い精度と耐久性を誇り、世界各地で生産されるボールのクオリティが向上していきました。
21世紀になると、天然皮革よりも軽量で、水をほとんど吸わない合成皮革が主流になります。耐久性や防水性、デザインの自由度が大きく向上し、大会やクラブチームのオリジナルモデルが多数生み出されるようになりました。
また、多層クッション構造になり、外革の内側に複数層のクッション素材を挟み込むことで、蹴り心地や反発力が向上します。さらに内部のゴムチューブ(ブチルやラテックス)との組み合わせによって、空気保持力や弾力性を高水準で両立できるようになりました。
2006年ドイツW杯公式球「+Teamgeist(チームガイスト)」で採用された「熱圧着(サーマルボンディング)」は、ボールのパネルを加熱・圧着することで貼り合わせる技術です。縫い目が無くなるため、防水性が高まり、ボールの表面が滑らかになりました。
子供たちと遊んでたサッカーボールの縫糸が解け、蹴れなくなり残念。
— 加藤たかし(愛知県議会議員、豊田市) (@kato_takashi129) June 7, 2024
捨てなくては‼️と思ったけどただ捨てるのはもったいないと感じ…。
せっかくの機会なのでハサミで解体。
ボール形成の仕組みを知るため子供たちと図工。自身も初めてみました、ボールの中身を⚽️。なるほど〜、と。 pic.twitter.com/f6dO8ciDZp
【223.雑学】
— 雑学・都市伝説・教養等を呟くブルテリア (@orenozatsugaku) September 23, 2019
◆サッカーボール
19世紀までのサッカーボールは牛・豚の膀胱からできていた。
膀胱をチューブにして膨らませたものをみんなで蹴り合っていたらしい。
全然球体じゃなくてコントロールがむずかったらしい。
ちなみにラグビーボールも同じ。#サッカー#雑学 pic.twitter.com/gdfurBPxKG
今日、初めてサッカーボールが破裂する瞬間を目撃しました。
— 加藤 英幸(pavlov) (@hidetansan) February 12, 2023
すごい音やった。 pic.twitter.com/DzTgcQ3ODE
長いこと使ってるサッカーボールがパンクしてしまった。水に漬けて確認すると、空気を入れる穴から漏れてるようで、どうやら修理できるらしいということで工具を入手。 pic.twitter.com/dMz0PhxzuQ
— suniida (@suniida) March 2, 2023
甥とサッカーしてたらいきなり
— Ke (@chailattesukida) November 24, 2024
「ボンッ!!」ってボールが破裂して
中からGANTZ玉が出てきた😇 pic.twitter.com/4V99iDzQuS
サッカーボール破裂した pic.twitter.com/M59YHJtVx3
— 🤘(΄◉◞౪◟◉`)🦊.。o○ (@metatarou1010) September 8, 2024

- サッカーボールの中身(インナー)は具体的にどんな構造になっていますか?
- サッカーボールの中身は、主に「クッション層」と呼ばれる複数の層が外革の内側に入っており、さらに最も内側には空気を保持するためのチューブ(ブラダー)が入っています。クッション層にはポリエステルやポリウレタンなどの合成繊維が使われ、チューブはブチル製またはラテックス製が一般的です。
- ブチルチューブとラテックスチューブの違いは何ですか?
- 大きな違いは「空気の抜けやすさ」と「弾力性」です。
ブチルチューブ:空気が抜けにくく、頻繁に空気を入れ直す手間が少ない一方で、やや重量があり弾力は控えめ
ラテックスチューブ:弾力性が高く蹴り心地が良い反面、空気が抜けやすく頻繁なメンテナンスが必要
- サッカーボールの中身は試合用ボールと練習用ボールで違いがありますか?
- はい、試合用ボール(公式球)と練習用ボールでは、インナーのクッション層の厚み・素材、チューブの品質などに違いがあることが多いです。公式球は高級素材を使って耐久性や飛行性能を高めている一方、練習用ボールはコストを抑えつつ、扱いやすさや価格面で優位な設計になっています。
- サッカーボールの空気はどのくらいの頻度で入れたほうが良いですか?
- チューブ素材や使用頻度、保管環境によります。
ブチル製: 1~2週間に一度、空気圧をチェックし必要に応じて調整
ラテックス製: 使用前や週に1度程度のこまめなチェックを推奨
空気圧の適正値はボールの側面に記載されていることが多いので、必ず確認しながら入れましょう。
- 雨の日に使っても大丈夫ですか?中身が水を吸ってしまわないですか?
- 合成皮革や熱圧着構造のボールは防水性が高いですが、長時間の雨天使用や水たまりでのプレーでは、外革や縫い目からわずかに水が浸入する可能性があります。使用後は表面の汚れや水分を拭き取り、風通しの良い場所で完全に乾燥させることが大切です。中身(インナー)に水が大量に入り込むケースは少ないですが、保管状態によってはカビや悪臭の原因になるので注意が必要です。
- インナーが壊れた(パンクした)場合は修理できますか?
- チューブがパンクした程度であれば、自転車のパンク修理キットのようなもので修理できるケースもありますが、縫い目の内側にあるため難易度が高い場合もあります。外革ごと破損している、裂けが大きいといった場合は、自力での修理が困難なのでメーカーや専門店に相談するのがおすすめです。
- ボールの蹴り心地が変わったように感じます。中身の問題でしょうか?
- 空気圧の低下やチューブの劣化、クッション層の損傷などが原因と考えられます。
まず空気圧を正しい値に調整し、それでも違和感がある場合は表面や縫い目に異常がないかチェックしましょう。
長年の使用や過酷な環境下でのプレーによってクッション層がダメージを受けている可能性もあります。気になる場合は新しいボールの購入を検討してみてください。

サッカーボールは外見のデザインだけでなく、その「中身(インナー)」や製法、歴史など多様な要素が組み合わさって現在の高いクオリティに至っています。
ゴムの加硫技術が発展した近代以降、革とゴムを組み合わせたボールが一般的になり、産業革命下の大量生産によってサッカーが大衆的なスポーツへと普及していきました。さらに20世紀後半からは合成皮革や多層クッション構造、熱圧着といった先進的な技術が取り入れられ、防水性や耐久性、飛行性能が格段に向上しました。
記事を通して、サッカーボールの基礎構造やインナー素材の特徴などを紹介しましたが、これらの知識があると、目的や環境に合ったボールを選びやすくなり、サッカーをより深く楽しめます。
歴史を振り返ると、サッカーボール自体の進化がスポーツの発展と密接に結びついてきたこともよくわかります。これからも新素材やスマート技術の導入によって、サッカーボールは進化し続けるでしょう。ぜひ本記事を参考に、ご自身のプレースタイルや用途に合った最高のボールを見つけてください。