サッカー日本代表の選手たちを見ると、タトゥー(刺青)を入れている選手がほとんど見当たりません。このことから「サッカー日本代表でタトゥーは禁止されているの?」という疑問を持つファンも多いようです。
本記事では、サッカー日本代表におけるタトゥーの公式ルールや実態をはじめ、文化的背景、他国の代表チームとの対応の違いなどを解説します。

まず初めに、多くの人が疑問に感じている「サッカー日本代表では本当にタトゥーが禁止されているのか?」という点について確認しましょう。
結論から言えば、日本サッカー協会(JFA)として「日本代表選手はタトゥー禁止」という公式ルールは存在しません。JFAの規則集や選手契約書にそのような条項は見当たらず、公式にタトゥーを禁止した声明も出されていません。
実際、Jリーグを含めた国内サッカー界でも、タトゥーそのものを明確に禁止する統一ルールは設けられていないようです。
では、なぜ日本代表選手にタトゥーを入れている人がいないように見えるのでしょうか? それには暗黙の了解や運用上の配慮が関係しています。
- 代表活動中はタトゥーを隠す対応: 日本代表の試合や公式行事では、仮に選手がタトゥーを入れていても、テーピングやサポーター、長袖のインナーシャツなどで見えないよう隠すのが一般的とされています。これは「日本代表に相応しい・相応しくない」という精神論というより、スポンサーや視聴者への配慮という側面が強いと指摘されています。テレビ中継やスポンサー企業のイメージ戦略において、刺青文化に否定的な層への影響を考慮しているわけです。
- 選手自身の自主規制: 日本代表クラスの選手たちは、自ら進んでタトゥーを避けているケースもあります。実際、元日本代表選手の山口蛍や酒井高徳といった選手たちは、日本代表から外れた後にタトゥーを入れたと噂されています(※公式発言ではありませんがファンの間でよく言われる例です)。このように「代表在籍中はタトゥーを控える」という自主的な判断をする選手も多いようです。それだけ「代表選手=タトゥーなし」が半ば常識化しているとも言えます。
- 宿泊や合宿での問題回避: また、日本代表チームの合宿所や遠征先ホテルなどでは、日本の旅館や温泉施設の中にはタトゥーNGのところも未だにあります。そのため、代表スタッフが宿泊先を確保する際などに気を遣う必要が出てきます。選手にタトゥーが無ければこうした手間も省けるため、チーム運営上も「いないに越したことはない」というのが本音でしょう。
以上のように、公式な禁止規定はなくとも、日本代表選手がタトゥーを実質上封印しているのが現状です。
日本代表としてプレーする以上、伝統的な価値観やスポンサーとの関係性を尊重し、暗黙のルールとして「タトゥーは見せない/入れない」流儀が共有されていると言えるでしょう。

32歳になりました!
— 小林祐希 / Yuki Kobayashi (@iamyuuki4424) April 24, 2024
歳は取っても、サッカーを始めた時の気持ちを忘れずにこれからも取り組んでいきたいと思います! pic.twitter.com/hNx3UVQUha
小林祐希選手は、日本代表としてプレー経験もあるMFで、欧州クラブでも活躍した選手です。彼は現役日本人選手として珍しく体に複数のタトゥーを入れており、そのことについて2019年のインタビューで詳しく語っています。
小林選手が明かしたところによると、日本代表に呼ばれた際には「長袖を着ないといけない」のだそうです。
実際、彼は腕などにタトゥーがありますが、代表戦ではユニフォームの下に長袖のアンダーシャツを着用し、露出しないように対応していました。
「代表へ行ったら長袖を着ないといけないし、日本で経営者や目上の人と会う時は夏でも長袖にジャケットを着ていく。不便な点はありますけど、それが俺なので受け入れてもらうしかない」と語っており、日本代表活動中はタトゥーを隠すのが当たり前だと認識している様子でした。
さらに小林選手は、「それ(タトゥー)が理由で代表に選ばれなかったらそれは仕方ない。しかし、それでも呼ばれるような選手になるべきだ」とも発言しています。
つまり、タトゥーを入れることで日本ではスポンサーが付きにくくなるなど不利益があっても、それを超える実力を身につけて評価されれば良い、という前向きな姿勢です。
この発言からも、タトゥーが日本代表選考にマイナス要素となりうる現実を選手自身が認識していることが伺えます。
🎂 HAPPY BIRTHDAY 🎂
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) August 23, 2024
本日8月23日は
ヴィッセル神戸
井手口陽介 選手の28歳の誕生日です👏
井手口選手、
おめでとうございます🎊@visselkobe pic.twitter.com/hKgxFHXDfr
井手口選手は元日本代表のMFで、2017年には日本代表のW杯予選で決勝ゴールを決めた経歴もあります。
彼はここ数年で徐々にタトゥーを増やしており、2022年に海外クラブ(スコットランドのセルティック)に在籍していた際の動画で背中や肩にまでタトゥーが入っていることが判明し、ファンを驚かせました。
井手口選手も若手時代から徐々にタトゥーを増やしていったものの、日本代表でプレーしていた当時(2017年前後)は、少なくとも公の場でタトゥーが露出することはほとんどありませんでした。
彼が本格的にタトゥーを入れ始めたのは海外移籍後であり、日本に復帰して代表から遠ざかった頃合いからです。
このタイミングは前述の山口蛍選手や酒井高徳選手の例と重なり、「日本代表から離れた途端にタトゥーを入れる選手が多い」との印象を強めています。
上記以外にも、タトゥーを入れている日本人サッカー選手は実は一定数存在します。ただし、その多くが日本代表からは遠ざかっているか、キャリア晩年に近い選手です。
- 槙野智章(元日本代表DF):浦和レッズなどで活躍。左肩付近に「OKサイン」の手をモチーフにした比較的大きなタトゥーを入れており、手首部分に「Big Heart(寛大な心)」という文字が刻まれています。槙野選手は日本代表にも度々招集されましたが、試合中にこのタトゥーが露出することはほとんどなく、ユニフォームやテーピングで隠れていたと見られます。
- 宇佐美貴史(元日本代表FW):ガンバ大阪所属。腕にタトゥーを入れていることが知られており、クラブではテーピングで隠さずプレーしている場面も見られました。彼も代表経験がありますが、やはり招集時には配慮がなされていたようです。
- 小野伸二(元日本代表MF):日本サッカー史に残る天才レフティー。肩に漢字の「誇」というタトゥーを彫っており、自身の信条を刻んだものとされています。小野選手は長年海外・国内で活躍しましたが、日本代表としてプレーしていた全盛期にはタトゥーを表に出すことはありませんでした(彼の場合は肩なのでユニフォームで隠れていました)。
- 柿谷曜一朗(元日本代表FW):セレッソ大阪で台頭し、日本代表にも選出された選手。左足首にローマ数字で「VIII(8)」という小さなタトゥーを入れています。これは自らの背番号「8」にちなむものです。足首程度の小さなタトゥーであればサッカーのユニフォームでは靴下で隠れてしまうため、彼の代表出場時も問題視されませんでした。
- 酒井高徳(元日本代表DF):ドイツ生まれでハーフの経歴を持つ酒井選手は、欧州クラブ在籍中にタトゥーを入れたと言われています。現在ヴィッセル神戸でプレーしていますが、代表引退後でありタトゥーも特に隠さず見せています。しかし彼も日本代表として2018年W杯などに出場した際は、タトゥーが表に出ないよう注意していたはずです。
これらの例からもわかるように、日本代表経験のある選手がタトゥーを入れる場合、基本的には代表活動中は隠し、代表引退後に公にするケースが多いようです。
日本代表のユニフォーム姿では決して刺青が見えないようにし、プライベートやクラブでは比較的自由にしている、という二面性が垣間見えます。

なぜ日本ではここまでタトゥーに慎重なのでしょうか。その根底には、日本社会における刺青観(タトゥー観)の特殊性があります。日本代表の話題から少し広げて、社会・文化的背景を整理します。
日本では古くから刺青(いれずみ)文化が存在しましたが、近代以降は主に「罪人の烙印」や「任侠・ヤクザの象徴」として扱われてきました。江戸時代には罪人への刑罰として入れ墨を彫る習慣があり、その名残で刺青=アウトローというイメージが定着しました。また明治政府は一時期、刺青を法律で禁止したこともあります。
特に20世紀以降、暴力団(ヤクザ)の団員が全身に和彫りの入れ墨を入れる習慣が広まったため、「刺青=ヤクザ」という図式が強固になりました。
その結果、一般社会では刺青を入れている人は怖い人・危ない人という偏見が根強く残ったのです。
日本では今でも、多くの公共浴場(温泉、銭湯、プール)やジムなどで「入れ墨・タトゥーお断り」の掲示が見られます。
観光地の温泉でも、タトゥーがある人は入浴を断られるケースが少なくありません。これは裏を返せば、それだけ一般の日本人にとって刺青は非日常的で受け入れにくいものだということです。
2019年にラグビーワールドカップが日本で開催された際、訪日する各国選手やファンが多くのタトゥーを入れているため、大会前に日本側が「入浴時には隠すように」と呼びかける事態もありました。
ニュージーランド代表(オールブラックス)やサモア代表などは、日本滞在中は公共の場で長袖やスパッツを着用し、温泉やプールではラッシュガードで極力タトゥーを隠すよう努めたそうです。選手たちは「日本の文化だから尊重する」と快く協力したとのことです。
このエピソードからも、日本ではタトゥーが公共の場でマイナスイメージを与え得ることが理解できます。
ただ近年は徐々に変化もあり、例えば大分県など一部地域では「タトゥーOKの温泉施設」を積極的にPRするなど、インバウンド(訪日外国人)対応で刺青容認の動きも出てきています。
沖縄のホテルプールでタトゥー解禁の試みが始まったという報道もありました。少しずつですが「タトゥーはファッション」という価値観も広がりつつあります。
若い世代ほどタトゥーへの抵抗感は薄れていると言われます。ファッションタトゥーを入れる若者や、ワンポイントのおしゃれタトゥー程度であれば許容する空気も出てきました。「刺青とTATTOOは別物。海外ではおしゃれで日本とは価値観が違う」と主張する向きもあります。
しかし平均的な日本人感覚では、例えば背中一面の和彫りは今でも「極道っぽいからNG」、一方で小さいワンポイントなら「ギリギリセーフ」という線引きがあるようです。
極端な例ですが、「遠山の金さん(背中に大きな桜吹雪の刺青を持つ時代劇ヒーロー)はダメで、ベッカムやドウェイン・ジョンソン(ロック様)の刺青は…?」と悩む人もいるくらい、判断が分かれるところです。
芸能界では海外アーティストだけでなく、日本の有名人でもタトゥーを入れる人が増えてきました。またボクシング世界王者の井岡一翔選手が試合でタトゥーを露出した件(後述)では、日本のタレントである武井壮さんが「ルールを変えてからタトゥー入れるべき」とTwitterで苦言を呈したり、著名な実業家のひろゆき氏が「ここは日本。外国ではOKでも日本では入れない方が良い」と持論を語ったりと、賛否両論の議論が巻き起こりました。
要するに、日本社会全体としてはまだタトゥーに厳しく、ネガティブな印象が残っているのが現状です。その空気が、サッカー日本代表という「国民の代表」チームにも色濃く影響していると言えるでしょう。

プロボクシングでは、実は明確なタトゥー規制があります。日本ボクシングコミッション(JBC)は「タトゥーが観客に不快の念を与える」として、タトゥーの入ったボクサーが試合のリングに上がることを禁じる内規を設けています。
ただしファンデーションスプレーなどで完全に隠せば出場を容認するという運用で、実際には隠した上で試合に出ている選手もいます。
このルールが大きく報じられたのが、前述の井岡一翔選手のタトゥー問題です。井岡選手は2020年大晦日の世界戦で左腕のタトゥーをテーピングで隠して試合に臨みましたが、試合中にテーピングが剥がれ一部タトゥーが露出してしまいました。これが「ルール違反だ」と問題視され、JBCは後日彼を厳重注意処分としています。
井岡選手本人は「タトゥーとボクシングは関係ない。ルールから撤廃してほしい」と訴えましたが、JBCはルール改正しない方針を示しました。
この件では他競技のトップ選手や海外メディアからも「時代遅れでは」と意見が出るなど、日本のタトゥー規制の是非が議論されました。
他の武道・格闘技系では、例えば柔道では高校生以下の大会において以前は入れ墨自体を禁止していましたが、近年「隠せば試合出場OK」に緩和する動きが出ています。
相撲では力士が刺青を入れることは伝統的に御法度で、過去に入墨を入れた外国人力士が除去手術を受けた例もありました。また空手やアマチュアボクシングなども刺青禁止の大会規定がある場合があります。
これらは武道の精神性や教育的観点から厳しくしている面があります。
水泳界では、2000年代に日本水泳連盟が「日本代表選手行動規範」でタトゥー等の意図的身体装飾を禁止していた時期がありました。
例えば髪を染めたりピアスをするのも含めNGという内容です。しかし現在その規定は削除されており、日本水連の最新の規約には刺青に関する記述はなくなっています。
おそらく国際水泳連盟や五輪に準じて、形式的な禁止は避けたのでしょう。とはいえ、水泳の日本代表でタトゥーのある選手はほぼ見かけません。競泳の代表合宿では茶髪禁止など身だしなみ規定もあったくらいで、体育会的な風紀指導が背景にありそうです。
陸上競技や体操などでも、公式な刺青禁止ルールは聞きませんが、日本代表クラスでタトゥーを露出している選手は非常に少ないです。
陸上の短距離選手などで海外遠征中に小さなタトゥーを入れる人はいますが、大会で目立つことは避けている印象です。体操やフィギュアスケートでも刺青のある日本人選手はまずいません。美的な競技ゆえの自主規制かもしれません。
日本代表にもタトゥーいれてるキャラクター性のある選手が欲しい
— ロナウダー吉田 (@RN8kDaOySZ47212) April 13, 2024
プレーが上手ければ華がある選手として人気でそうだけどな pic.twitter.com/AUn6eVzIQk
FC東京の熊田直紀さー
— けんと (@uekEn_39) May 29, 2024
腕にタトゥー入れてて笑う
日本代表まじで興味ないんやな
酒井高徳がタトゥーを理由に代表を早期引退発表。日本代表選手がタトゥー入ってることが各界のお偉いさんからクレームが入り、サポーターをつけてタトゥーを隠すようサッカー協会から言われ、隠す隠さないで揉めました。
— 斉藤 潤平 (@LbqI3JJmfe60349) August 20, 2024
タトゥーに対する偏見が令和でもあるのはさすがに古い、ダサいなぁ….日本ダサ…
— あいぴょん (@ninachan2023427) May 7, 2024
過去にいれて後悔して今めちゃくちゃ仕事できる人もいるし、ファッションの一部としていれてる人もいるからね!仕事は確かに選べなくなるけど人格をそこで判断するのは違うよなぁって笑う。
タトゥーをしてる人が少ないという理由で、最近サッカーは日本代表を応援するようにしてる
— 中山カルタ (@cartacartacarta) July 24, 2024
サッカー日本代表、1人ぐらいタトゥーまみれいて欲しい
— Jiyong Jiyong (@JiyongJiyong1) September 4, 2023
サッカー日本代表ってタトゥー入ってる人おらんよな
— y (@WHIP074) January 16, 2023
この国真面目ちゃん多いから入ってたら選ばれへんとかありそう
三笘とかがゴリゴリにタトゥー入れてたら日本代表呼ばれるのか気になる
— かぷ (@capu_ton) November 9, 2024
日本代表ってタトゥー入ってたら無理って噂あったけど、上田綾世みたいにチラチラ見える程度ならOKなのか?
— leading_light (@leadinglight025) June 11, 2024
時代とともに価値観は変わります。髪を金色や派手に染めた日本代表選手は今や珍しくありません(1990年代には「日本人らしくない」と批判もありましたが、現在は許容されています)。ピアスやネックレスも試合中は外すにせよ、ファッションとして受け入れられています。
タトゥーだけが最後のタブーのように残っている状況とも言えます。
今後、日本代表でも世界的なスーパースターが現れ、その選手がタトゥーを入れているようなケースが出てきたら、流れは大きく変わるかもしれません。たとえば「日本のメッシ」のような存在がタトゥーを入れていたら、協会もファンもそれで選考を外すことは考えにくく、むしろその選手を中心に価値観もアップデートされていくでしょう。
大切なのは、個人の自由とチームの調和の両立です。選手側も相手文化へのリスペクトを示しつつ自己表現する、協会や社会側も凝り固まらず新しい時代の感性を受け入れる、その歩み寄りが求められます。
実際、ラグビー代表のように「日本文化を尊重して隠すよ」と快く対応する例もあれば、井岡選手のように「古いルールは変えてほしい」と訴える例もあります。
どちらにも一理あり、対話と理解が必要でしょう。
サッカー日本代表というチームは、日本社会の縮図でもあります。タトゥーをめぐる是非は簡単に結論の出る問題ではありませんが、まずは現状と背景を正しく理解することが大事です。
本記事で述べてきた通り、公式な禁止規定はないものの、文化的・商業的理由から日本代表ではタトゥーが遠ざけられてきました。しかし時代は変化しています。今後、日本代表のピッチにタトゥーを入れた選手が堂々と活躍する日が来るのか、それとも引き続き慎ましく隠し続けるのか――その動向にも注目しつつ、選手たちがベストパフォーマンスを発揮できる環境とは何かを考えていきたいものです。