圧倒的なスピードと得点力で世界のトップに立ち続けるキリアン・エムバペ選手。しかし「エムバペの弱点はどこなのか」という疑問を持つファンは少なくありません。この記事では、データと本人の発言、実際の試合の内容から、その答えをわかりやすく解説します。
こんな疑問を持つ方へ
- あれほどの選手なのに、なぜ批判されることがあるのか知りたい
- 「守備をしない」と言われる理由が気になる
- 対戦チームはどうやってエムバペを止めているのか知りたい
- 実績は十分なのに、バロンドールをまだ獲れていない理由を知りたい
結論から言えば、エムバペ選手の弱点は「得点を奪う能力」とはほぼ無関係の領域に集中しています。だからこそ、弱点を指摘されながらも得点王を獲り続けるという、一見矛盾した現象が起きているのです。順番に見ていきましょう。
エムバペの弱点として指摘される4つのポイント
エムバペの弱点について、海外のデータ分析サイトや専門メディアで繰り返し指摘されているのは、大きく分けて次の4つです。
1. 守備への貢献度の低さ/2. 空中戦・ヘディングの弱さ/3. オフサイドの多さ/4. PKの不安定さ
1. 守備への貢献度の低さ(最大の弱点)
エムバペの弱点として最も多く語られるのが守備です。統計サイトWhoScoredの選手分析では、エムバペの「守備貢献」は最低ランクの評価がつけられています。さらに、Optaのデータをもとにした欧州主要リーグ約6,000人規模の比較分析で、エムバペの90分あたりの守備貢献がほぼ最下位クラスだったことが海外メディアやSNSで大きく取り上げられ、話題となりました。
注目すべきは、本人がこの弱点を否定していない点です。エムバペは海外メディアのインタビューで、自分は他の選手より守備をする量が少なく、それが問題になり得ることを認めたうえで、改善すべき点だと語っています。世界最高峰の選手が自ら「守備」を課題として挙げているのですから、これは単なるアンチの批判ではなく、実態のある弱点だと言えます。
ただし後述するとおり、これは「怠けている」という話とは少し違います。チームがエムバペに与えている役割の問題も大きく関わっています。
2. 空中戦・ヘディングの弱さ
エムバペの身長は178cmと、FWとしては平均的です。WhoScoredの分析でも空中戦は「弱い」と評価されており、ヘディングでの競り合いやクロスへの打点の高い合わせは、彼の得意分野ではありません。
エムバペの得点パターンは、裏のスペースへ抜け出してからのシュート、カットインからの強烈な一撃、ドリブル突破など、足元とスピードを活かしたものが中心です。ハーランド選手のようにボックス内で空中戦を制するタイプではなく、明確にスタイルが異なります。つまり空中戦の弱さは、彼のプレースタイル上あまり表面化しないものの、パワープレーが必要な展開では選択肢を狭める要因になります。
3. オフサイドの多さ
WhoScoredの分析では、オフサイドポジションへの入りやすさも「非常に弱い」と評価されています。エムバペは常に相手最終ラインの裏を狙い続けるため、判定がオフサイドになる回数が多くなりがちです。
もっともこれは、脅威であることの裏返しでもあります。ラインの裏を取る動きを繰り返すからこそ相手守備陣は下がらざるを得ず、味方のスペースが生まれます。オフサイドの多さは「弱点」というより、ハイリスク・ハイリターンなプレースタイルのコストと捉えるのが正確でしょう。ただし、大事な得点機会がオフサイドで取り消されるリスクと常に隣り合わせであることも事実です。
4. PKの不安定さ
キャリア全体では多くのPKを沈めている一方、大舞台での失敗が印象に残りやすいのもエムバペの特徴です。EURO2020(2021年開催)のスイス戦ではPK戦で唯一の失敗を犯し、フランスの敗退が決まりました。また2026年ワールドカップ準々決勝のモロッコ戦でも、試合には2-0で勝利したものの、エムバペのPKはGKボノ選手に読まれて止められています。
助走で細かくステップを踏む独特のキックは、成功すればGKを完全に翻弄しますが、読まれたときはコースが甘くなる傾向が指摘されています。絶対的エースとして重要な場面でキッカーを任されるからこそ、失敗が大きく報じられやすい面もあります。
データで見るエムバペの強みと弱点
ここまでの内容を整理すると、エムバペの能力は次のように「極端な凸凹」になっています。
| 項目 | 評価 | 補足 |
|---|---|---|
| スピード・裏抜け | 世界最高クラス | キャリアを通じて最大の武器 |
| 決定力 | 世界最高クラス | 2季連続でラ・リーガ得点王(2024-25、2025-26) |
| ドリブル | 非常に強い | カットインからのシュートが代名詞 |
| 守備貢献 | 非常に弱い | データ分析で最下位クラス。本人も課題と認める |
| 空中戦・ヘディング | 弱い | 178cm。足元とスペースで勝負するタイプ |
| オフサイド管理 | 弱い | 裏を狙い続けるスタイルの代償 |
参考として、2025-26シーズンのラ・リーガでの成績も確認しておきましょう。
| 2025-26 ラ・リーガ | 記録 |
|---|---|
| 出場試合 | 31試合 |
| 得点 | 25得点(リーグ得点王) |
| アシスト | 5アシスト |
守備や空中戦のデータが最低評価である一方、得点に関する数字は文句のつけようがありません。「弱点だらけ」でも「史上最高クラスのゴールスコアラー」でもある、この二面性こそがエムバペという選手の本質です。
なぜ守備をしないのか?戦術的な背景
「攻撃の切り札」に特化した役割
エムバペが守備をしない最大の理由は、チームがそれを求めていない(求めてこなかった)ことにあります。彼の仕事は、相手ボールの時間帯にできるだけ前線で体力を温存し、ボールを奪った瞬間にカウンターの起点・フィニッシャーとして違いを生むことです。90分間プレスに奔走してスピードが落ちるより、決定的な数本の走りに全てを注ぐほうがチームの得点期待値は高い、という設計思想です。
実際、モナコ時代からPSG、レアル・マドリードに至るまで、エムバペを擁するチームは多かれ少なかれこの前提でチームを組み立ててきました。
現代サッカーとのミスマッチという問題
問題は、近年の欧州サッカーでは前線からの守備(ハイプレス)が勝利の必須条件になりつつあることです。欧州の頂点に立つチームは、エースストライカーも含めた全員が最低限の守備タスクをこなすのが当たり前になっています。エースが守備を免除されると、残りの選手がその分を走ってカバーしなければならず、チーム全体のバランスに歪みが生じます。
レアル・マドリードの2025-26シーズンは、この問題が議論の的になった象徴的なシーズンでした。エムバペ個人はリーグ得点王に輝いたものの、チームはラ・リーガをバルセロナに明け渡し、シーズン途中の2026年1月には監督がシャビ・アロンソからアルバロ・アルベロアに交代。クラブは無冠に終わりました。もちろんチームの不振をエムバペ一人の守備のせいにするのは乱暴ですが、「攻撃のスーパースターと守備の規律をどう両立させるか」という課題を浮き彫りにしたシーズンだったことは確かです。
対戦チームはエムバペをどう封じているのか
基本は「裏のスペースを消す」こと
エムバペ対策のセオリーは明確で、走り込むスペースを消すことに尽きます。守備ラインを低く設定し、最終ラインの裏に広大なスペースを残さなければ、世界最速のスピードも使いどころがなくなります。加えて、エムバペがボールを受ける左サイドに複数の選手を配置し、カットインのコースを塞ぐのが定番の対策です。
逆に言えば、ラインを高く保って攻撃的に戦うチームほど、エムバペの餌食になりやすいということです。彼の得点の多くは、前がかりになった相手の背後を突いたものです。
実例:2026年ワールドカップ準決勝のスペイン戦
この対策が完璧に機能した例が、2026年7月14日のワールドカップ準決勝、フランス対スペイン戦です。エムバペは準々決勝までに8得点を挙げ、大会得点ランキングの首位に立つ絶好調ぶりでした。しかしスペインは、ボールを保持してフランスに攻撃の機会そのものを与えず、エムバペにスペースを一切使わせない試合運びで攻撃陣を封殺。フランスは0-2で敗れ、決勝進出を逃しました。スペインはこの試合までの7試合でわずか1失点という堅守を誇っており、組織的な守備の前ではエムバペほどの選手でも沈黙し得ることを示す結果となりました。
個の力で守備組織を単独で破壊するメッシ選手のようなタイプと比べ、エムバペは「スペースという条件」への依存度が高い。これも広い意味での弱点と言えるかもしれません。
弱点があっても圧倒的な成績を残せる理由
弱点が「得点」と無関係な領域にある
ここまで挙げた弱点(守備、空中戦、オフサイド、PK)をよく見ると、いずれも「流れの中でゴールを奪う能力」そのものではないことがわかります。サッカーで最も希少で価値の高いスキルは得点力であり、エムバペはその一点において世界の頂点にいます。だからこそ、弱点を抱えたままでも2024-25シーズンはラ・リーガ得点王と欧州得点王(ゴールデンシュー)を獲得し、2025-26シーズンも25得点で2季連続の得点王に輝きました。2025年の年末時点ではラ・リーガとチャンピオンズリーグの両方で得点ランキング首位に立っていたほどです。
それでもバロンドールに届かない理由
一方で、2025年のバロンドールはPSGの3冠に貢献したウスマン・デンベレ選手が受賞し、エムバペは7位にとどまりました。個人の得点数では上回りながら順位で大きく差がついた理由は、バロンドールが「チームとしての成功」を重視する賞だからです。守備を含めたチームへの総合的な貢献と、チャンピオンズリーグやリーグ優勝などのタイトル。エムバペに足りていないのはこの部分であり、弱点の克服とチームタイトルの獲得が、バロンドールへの最短ルートだと言えるでしょう。
よくある質問
守備への貢献度の低さです。データ分析では欧州主要リーグの選手の中で最下位クラスと評価されており、本人もインタビューで、自分は他の選手より守備の量が少なく、それが問題になり得ると認めています。
空中戦は得意ではありません。身長178cmとFWとしては平均的で、統計サイトの評価でも空中戦は「弱い」とされています。ただし、彼の得点は裏抜けやドリブルなど足元のプレーが中心のため、試合ではあまり目立たない弱点です。
単純にそうとは言えません。エムバペの所属チームは、彼の体力をカウンターと得点に集中させる戦術を採用してきたため、守備タスクが軽い役割を与えられてきた側面が大きいです。ただし全員守備が主流の現代サッカーでは、この役割分担自体が議論の対象になっています。
弱点が得点力と無関係な領域(守備・空中戦など)に集中しているからです。スピード、裏抜け、決定力という得点に直結する能力は世界最高クラスで、2024-25、2025-26と2季連続でラ・リーガ得点王に輝いています。
右利きです。ただし左足でのシュートやフィニッシュも多く、逆足が弱点として指摘されることはほとんどありません。両足を使えることは、むしろ彼の強みの一つです。
まとめ
エムバペの弱点について、要点を整理します。
- 最大の弱点は守備貢献の低さで、データでも最下位クラス。本人も課題として認めている
- 空中戦の弱さ、オフサイドの多さ、大舞台でのPK失敗も指摘される弱点
- 守備をしない背景には「攻撃に特化させる」という戦術的な役割分担がある
- 対戦チームは裏のスペースを消すことで対抗し、2026年W杯準決勝のスペイン戦はその成功例
- 弱点は得点力と無関係な領域のため、得点王などの個人成績には影響しにくい。一方、チームタイトルとバロンドールには弱点克服が鍵になる
弱点を知ることは、選手をおとしめることではなく、より深く楽しむための視点です。エムバペが守備で戻るシーン、空中戦を避けて足元で受け直すシーン、相手が裏のスペースを消しにかかるシーン。次の試合では、そんな駆け引きにも注目してみてください。世界最高の選手の試合が、もう一段面白く見えるはずです。
フットボール戦士 
