「ワールドカップの決勝でハットトリックを決めた選手って誰?」——サッカーファンなら誰もが気になるこの疑問。W杯決勝という最高舞台でハットトリックを達成するのは、92年の大会の歴史の中でわずか2人しかいません。その希少さは「決勝戦でのハットトリック」というだけで世界の歴史書に永遠に刻まれるほどの偉業です。
この記事では、ワールドカップ決勝でハットトリックを達成した2人の選手——ジェフ・ハースト(1966年)とキリアン・エムバペ(2022年)——を徹底解剖します。達成時のゴールの詳細、試合の流れ、歴史的背景から、「なぜ決勝でのハットトリックはこれほど難しいのか」という数字による分析まで、上位記事には載っていない視点も含めて余すところなく解説します。
記事の内容
ワールドカップ決勝でハットトリックを達成した選手は史上2人だけ
1930年の第1回大会から2022年のカタール大会まで、22回行われたFIFAワールドカップ決勝。そのうちハットトリックが生まれたのはわずか2回(1966年・2022年)です。
| 大会 | 選手名 | 対戦カード | スコア | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 1966年 イングランド大会 | ジェフ・ハースト(イングランド) | イングランド vs 西ドイツ | 4-2(延長) | 優勝(ハットトリック達成) |
| 2022年 カタール大会 | キリアン・エムバペ(フランス) | アルゼンチン vs フランス | 3-3(PK 4-2) | 準優勝(ハットトリックも敗戦) |
この2つのハットトリックには、対照的な「物語」があります。1966年のハーストは優勝を手にし、2022年のエムバペはハットトリックを決めながらも敗者となりました。同じ偉業でも、その結末はまったく異なるドラマを生み出しています。
【1966年イングランド大会】ジェフ・ハースト——史上初の決勝ハットトリックと「疑惑のゴール」
控え選手から世界の頂点へ——ハーストの歩み
ジェフ・ハースト(当時24歳)は、1966年イングランド大会のスタート時点では控え選手でした。エースFWのジミー・グリーヴスが大会中に怪我を負い、準々決勝のアルゼンチン戦からようやく出番が回ってきたのです。
そこから劇的な展開が待っていました。アルゼンチン戦で決勝弾を決め、準決勝のポルトガル戦も突破。そして、母国イングランドが世界の頂点を争う決勝・西ドイツ戦のピッチに立つこととなります。
1966年決勝戦の全得点時系列
| 時間 | 得点者 | スコア | 内容 |
|---|---|---|---|
| 前半12分 | ヘルムート・ハラー(西ドイツ) | 0-1 | 西ドイツが先制 |
| 前半18分 | ジェフ・ハースト(イングランド) 🥅 ハット1点目 |
1-1 | ボビー・ムーアのFKを頭で合わせて同点 |
| 後半33分 | マーティン・ピータース(イングランド) | 2-1 | イングランドが逆転 |
| 後半45分 | ヴォルフガング・ウェーバー(西ドイツ) | 2-2 | 終了直前の同点弾——延長戦へ |
| 延長前半11分 | ジェフ・ハースト(イングランド) 🥅 ハット2点目(疑惑) |
3-2 | クロスバー直撃——ラインを割ったか否か問題の「ウェンブリー・ゴール」 |
| 延長後半5分 | ジェフ・ハースト(イングランド) 🥅 ハット3点目(決勝打) |
4-2 | 強烈なシュートで試合を決定づける。決勝のとどめの一撃 |
「ウェンブリー・ゴール」——今も続く世紀の論争
ハーストの2点目(延長前半11分)は、サッカー史上最も物議を醸したゴールのひとつです。右クロスを胸でトラップし、右足シュートを放つとボールはクロスバーを直撃。真下に落ちたボールがゴールラインを割っていたか否かを、西ドイツの選手たちは猛抗議しました。
「ウェンブリー・ゴール」論争の真相
スイス人主審は判定に迷い、ソ連人の線審(副審)アジュノフに確認。アジュノフは「ゴールラインを割った」と判断してゴールを認めました。しかし後の映像・物理的分析によれば、ボールはラインを割っていなかった可能性が高いとされています。この「疑惑のゴール」はその後のイングランド対ドイツの因縁を生む象徴となり、56年後の2010年W杯でランパードの「幻のゴール」(ドイツに認められず)が生まれた際にも、この歴史が引き合いに出されました。
ハーストとW杯決勝ハットトリックの意義
ハーストはその後も代表として活躍し、イングランド代表通算49キャップ・24ゴールを記録。1998年には騎士爵位(ナイトフッド)を授与され、「サー・ジェフ・ハースト」として現在もイングランドサッカー史上最も重要な選手のひとりとして称えられています。
W杯決勝でのハットトリックという偉業は、控えからスタートしたハーストが6試合で達成した、まさにシンデレラストーリーです。2022年のエムバペが達成するまで、この記録は56年間誰にも破られませんでした。
【2022年カタール大会】エムバペ——56年ぶりの決勝ハットトリックと「敗者の英雄」
前半は沈黙——0-2から始まる奇跡の反撃
2022年12月18日、カタールのルサイル・スタジアム。史上最高の決勝戦として語り継がれるアルゼンチン対フランスの一戦で、エムバペ(当時23歳)は前半をほぼ沈黙した状態で過ごしました。アルゼンチンはメッシのPK(23分)とディ・マリアのゴール(36分)で2-0とリード。フランスにとって危機的な状況でした。
2022年決勝戦の全得点時系列
| 時間 | 得点者 | スコア | 内容 |
|---|---|---|---|
| 前半23分 | リオネル・メッシ(アルゼンチン)PK | 1-0 | ゴール右下に冷静に沈める |
| 前半36分 | アンヘル・ディ・マリア(アルゼンチン) | 2-0 | カットインから鮮やかなゴール |
| 後半35分(80分) | キリアン・エムバペ(フランス)PK 🥅 ハット1点目 |
2-1 | コロ・ムアニが獲得したPKを冷静に沈める |
| 後半36分(81分) | キリアン・エムバペ(フランス) 🥅 ハット2点目 |
2-2 | テュラムとのワンツーから豪快なボレーシュートで同点。1分間で2ゴール |
| 延長後半14分(109分) | リオネル・メッシ(アルゼンチン) | 3-2 | こぼれ球を押し込んで再度リード |
| 延長後半23分(118分) | キリアン・エムバペ(フランス)PK 🥅 ハット3点目 |
3-3 | エムバペのシュートによるハンドを誘いPK獲得、自ら決める。ハットトリック完成 |
| PK戦 | アルゼンチン 4-2 フランス | 最終結果 | アルゼンチンが36年ぶり3度目の優勝。フランスは準優勝 |
「1分間の奇跡」——80・81分の電光石火の2ゴール
エムバペのハットトリックで最も衝撃的だったのが、80分と81分というわずか1分間に2ゴールを決めた場面です。0-2という絶望的な状況から、エムバペひとりが試合を変えてしまいました。
エムバペ 2点目(81分)のボレーゴール
ラビオからのパスを受けたエムバペが、コロ・ムアニとのワンツーで最終ラインを突破。浮き球の落ち際を右足でダイレクトボレー。鋭く抑えられたシュートがゴール右隅に突き刺さりました。技術的難易度が極めて高い「ボレーシュート」を決勝戦という超プレッシャーの状況下で決めたこのゴールは、多くのサッカー関係者から「2022年大会最高のゴール」として絶賛されています。
ハットトリックを決めながら敗者となった「悲劇の英雄」
エムバペのハットトリックは、試合を3-3に追いつかせるほどの孤独な奮闘でした。しかし最終的にPK戦でフランスは敗北。エムバペ自身はPK戦の1番手を成功させましたが、コマン・チュアメニが失敗したため、準優勝という結果に終わりました。
決勝戦でハットトリックを決めながら優勝できなかった——この事実は、サッカー史上唯一のケースです。そしてエムバペはその後も「次のW杯でリベンジを」という使命を背負うことになりました。
エムバペが達成したW杯決勝での記録
- W杯決勝ハットトリック:史上2人目(56年ぶり)
- W杯決勝通算4得点(2018年の1得点+2022年の3得点):史上最多
- W杯通算12得点(当時):ペレに並ぶ歴代6位タイ
- 今大会得点王(8ゴール)を確定
- W杯決勝での10代での得点(2018年)と20代でのハットトリック——史上唯一の組み合わせ
ハーストとエムバペを比較——決勝ハットトリックの共通点と相違点
| 比較項目 | ジェフ・ハースト(1966年) | キリアン・エムバペ(2022年) |
|---|---|---|
| 年齢(決勝時) | 24歳 | 23歳 |
| チームの状況 | リードされてから取り返す展開(2-2から延長) | 2点のビハインドからの大逆転(0-2→2-2→延長) |
| 1点目のゴール | ヘディング(18分・同点弾) | PK(80分) |
| 2点目のゴール | 右足シュート(延長・疑惑あり) | 右足ボレー(81分・PKから1分後) |
| 3点目のゴール | 強烈なシュート(延長・とどめの1点) | PK(延長後半118分) |
| PKの有無 | なし(3得点すべてオープンプレー) | あり(3得点中2得点がPK) |
| 試合結果 | 優勝(4-2) | 準優勝(PK 4-2で敗北) |
| 達成までの間隔 | 史上初(第1号) | 56年ぶり(第2号) |
| 論争・特筆点 | 「ウェンブリー・ゴール」疑惑(未だに論争が続く) | ハットトリックを決めながら優勝できなかった史上唯一の選手 |
この比較で見えてくるのは、2つのハットトリックが「全く異なる文脈」で生まれたということです。ハーストは控えから這い上がり母国を初優勝に導いた「英雄」、エムバペは2-0のビハインドから電光石火の反撃を見せながらも届かなかった「悲劇の英雄」——両者の物語はサッカー史の中で永遠に語り継がれます。
なぜW杯決勝でのハットトリックはこれほど稀なのか——データで読む難易度
「W杯決勝でハットトリックを達成した選手は史上2人」という事実を、数字で裏付けてみましょう。
| データ項目 | 数値 |
|---|---|
| W杯の開催回数(2022年まで) | 22大会 |
| 決勝戦で行われた試合数(2022年まで) | 22試合 |
| 決勝でハットトリックが生まれた試合数 | 2試合(1966年・2022年) |
| 決勝でのハットトリック達成率 | 約9.1%(22試合中2試合) |
| W杯全体のハットトリック回数(2022年まで) | 54回(ウィキペディアによる) |
| ハットトリックのうち決勝で達成された割合 | 約3.7%(54回中2回) |
| W杯史上最もハットトリックが少なかった大会 | 2006年ドイツ大会(0回)——唯一ハットトリックなし |
W杯全体でも平均して1大会に約2.5回しか生まれないハットトリックが、決勝というたった1試合で達成されるのは極めて稀です。その難しさは以下の理由で説明できます。
決勝でのハットトリックが難しい理由
- 対戦相手の質が最高レベル——決勝に残る2チームは同大会で最強のDF陣を持つチーム
- 戦術的な徹底マーク——決勝ではエース選手が最も密に分析・マークされる
- 心理的プレッシャー——W杯の全試合で最もプレッシャーがかかる場面
- 試合数の少なさ——決勝は1試合しかなく、確率論的にも達成の機会が少ない
- 均衡した試合展開——決勝は僅差になることが多く、大量得点が生まれにくい
ワールドカップ優勝の歴史については、こちらの記事も参考にしてください。
→ ワールドカップ日本開催の可能性と歴史|フットボール戦士
W杯全体でのハットトリック名場面——決勝以外の記憶に残る快挙
決勝以外のW杯でも、伝説的なハットトリックは数多く生まれています。決勝ハットトリックの偉大さを理解するうえで、他の名場面も押さえておきましょう。
| 記録 | 達成者 | 大会・相手 | 詳細 |
|---|---|---|---|
| 最年少ハットトリック | ペレ(ブラジル) | 1958年 準決勝 vs フランス | 17歳244日。未だ破られない最年少記録 |
| 最年長ハットトリック | クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル) | 2018年 グループ vs スペイン | 33歳130日。3-3ドローでポルトガルの全ゴールを一人で |
| 最速ハットトリック | キッシュ・ラースロー(ハンガリー) | 1982年 グループ vs エルサルバドル | 7分42秒。途中出場でのハットトリックも史上唯一 |
| 1試合最多得点 | オレグ・サレンコ(ロシア) | 1994年 グループ vs カメルーン | 1試合5得点。W杯史上最多(かつ得点王) |
| 2大会連続ハットトリック | ガブリエル・バティストゥータ(アルゼンチン) | 1994年・1998年 | 大会をまたいで2回ハットトリック達成。複数大会跨ぎは史上唯一 |
| ハットトリック0回の大会 | — | 2006年ドイツ大会 | W杯史上唯一、1度もハットトリックが生まれなかった大会 |
次に決勝ハットトリックを達成するのは誰か——2026年大会の注目選手
2026年北中米大会では、史上3人目の決勝ハットトリック達成者が現れるでしょうか。次の「決勝ハットトリック」候補として挙げられる選手を見ていきましょう。
| 選手名 | 国 | 2026年時の年齢 | 注目ポイント |
|---|---|---|---|
| キリアン・エムバペ | フランス | 27歳 | リベンジに燃える。2022年の経験と悔しさを糧に優勝と決勝ハットトリック両立を狙う |
| レビン・ヤマル | スペイン | 19歳 | 世代最高のウィンガー。スペイン代表の中心として決勝進出が期待される |
| ハリー・ケイン | イングランド | 33歳 | ハーストの1966年以来、イングランドに決勝進出を——夢の「ウェンブリーの再現」 |
| ビニシウス・ジュニオール | ブラジル | 26歳 | ブラジル6度目の優勝の鍵を握るエース。圧倒的スピードとドリブルが武器 |
特に注目なのはエムバペです。2022年の悔しさを持ちながら、2026年はリベンジの大会となります。W杯決勝通算4得点という史上最多記録をすでに持つ彼が、今度は優勝という形で「完全な物語」を完成させるか——世界中のサッカーファンが注目しています。
2026年北中米大会の詳細については、こちらの記事もあわせてどうぞ。
→ 2026年ワールドカップ北中米は日本時間何時キックオフ?日本との時差は?|フットボール戦士
よくある質問(Q&A)
Q. ワールドカップ決勝でハットトリックを決めたのは誰ですか?
A. 史上2人です。1966年イングランド大会でジェフ・ハースト(イングランド)が西ドイツ戦でハットトリックを達成して優勝に貢献したのが最初。次いで2022年カタール大会でキリアン・エムバペ(フランス)がアルゼンチン戦で56年ぶりのハットトリックを決めました(ただしPK戦で敗北)。
Q. ジェフ・ハーストはW杯決勝でどのようにゴールを決めましたか?
A. 前半18分にヘディングで同点ゴール(1点目)。延長前半11分に右足シュートでゴール(2点目)——このゴールは「ウェンブリー・ゴール」と呼ばれ、ゴールラインを割ったか否かが今も論争の的です。延長後半5分に強烈なシュートで試合を決める4点目(3点目)を決めてハットトリック達成。イングランドは4-2で勝利しました。
Q. エムバペは2022年決勝でいつハットトリックを達成しましたか?
A. 後半35分(80分)にPKで1点目、後半36分(81分)に豪快なボレーシュートで2点目(わずか1分間で2ゴール)、延長後半23分(118分)にPKで3点目を決めてハットトリックを達成。フランスは3-3でPK戦に突入しましたが、PK戦4-2でアルゼンチンに敗れました。
Q. W杯決勝でハットトリックを達成したのに負けた選手はいますか?
A. 史上唯一の例がエムバペ(2022年)です。3ゴールを決めながらPK戦で敗れたという、W杯の決勝史上でもきわめて稀なケースです。ハーストは優勝、エムバペは準優勝——同じ「決勝ハットトリック」でも結果は正反対でした。
Q. W杯史上ハットトリックが生まれなかった大会はありますか?
A. あります。2006年ドイツ大会は、W杯史上唯一ハットトリックが1度も生まれなかった大会です。それ以外の20大会(2022年まで21大会中)では少なくとも1回はハットトリックが達成されています。
まとめ——ワールドカップ決勝ハットトリックという「伝説」
この記事のまとめ
- W杯決勝でハットトリックを達成した選手は史上2人のみ(22大会中2試合で達成)
- 第1号:ジェフ・ハースト(1966年)——控えから這い上がり、母国を初優勝へ導く。「疑惑のゴール」も語り継がれる
- 第2号:キリアン・エムバペ(2022年)——56年ぶり。0-2から3ゴールも、PK戦で惜敗という「悲劇の英雄」
- エムバペはW杯決勝通算4得点で史上最多記録も樹立
- W杯全体で54回のハットトリックのうち、決勝での達成はわずか3.7%という超希少記録
- 2026年大会ではエムバペのリベンジと新世代選手の台頭が最大の注目点
1966年から2022年まで56年間を隔てた2つの決勝ハットトリックは、W杯というステージの偉大さを改めて証明しています。片方は優勝の喜びで、もう片方は敗戦の涙で——それぞれ異なる形でサッカー史に刻まれました。
次のW杯決勝でのハットトリックが生まれるのはいつか、そしてそれは誰の手によるのか。2026年北中米大会が楽しみです。
W杯の連覇やトリビアについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
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