J1とJ2の違いとは?営業収入、観客動員数、スタジアム規模、放映権料など徹底比較

Jリーグのトップディビジョン「J1リーグ」と2部相当の「J2リーグ」には、クラブ数から運営方式、観客動員、経営規模、競技レベルに至るまで様々な違いがあります。

本記事では、2024年シーズンに焦点を当て「J1とJ2の違い」を総合的に解説します。

クラブ数・昇降格制度・観客数・放映体制といった違いはもちろん、収入格差やスタジアム環境、地域性、育成方針、外国籍選手の傾向、ファンサービスなどの違いにも踏み込みます。

J1とJ2の主な違い

J1とJ2はいずれも全国各地のクラブから構成されるプロサッカーリーグですが、その規模や制度にいくつかの違いがあります。以下の表に、主要な違いをまとめました。

項目J1リーグ (2024)J2リーグ (2024)
クラブ数20クラブ(※2024年より増)20クラブ(※2024年より減)
試合数(1クラブあたり)38試合(ホーム&アウェイ総当り)38試合(ホーム&アウェイ総当り)
昇降格枠下位3クラブが自動降格上位2クラブが自動昇格、3~6位で昇格プレーオフ(勝者が昇格)
平均観客動員数約20,355人/試合約7,667人/試合​
総入場者数(年間)7,734,871人2,913,415人
クラブ収入規模平均数十億円規模(トップは浦和103.8億円)平均十億円前後​(トップは清水51.0億円)
外国人出場枠1試合5人まで1試合4人まで
選手平均年俸約3,000~3,500万円​約400~500万円
スタジアム要件容量15,000席以上(照明・設備要件あり)容量10,000席以上
リーグタイトル明治安田生命J1リーグ明治安田生命J2リーグ
放送・配信全試合ライブ配信(DAZN独占)・一部地上波中継あり全試合ライブ配信(DAZN独占)・地上波中継は稀

上記のように、J1とJ2ではリーグ規模(クラブ数・試合数)や昇降格制度、ファンの集客力、クラブの資金力、ルール面でいくつもの違いがあります。それでは、各項目について詳しく見ていきましょう。

クラブ数とリーグ戦フォーマットの違い

クラブ数は長年J1が18、J2が22でしたが、2024年シーズンから大きく変わりました。

Jリーグはリーグ再編により、J1・J2・J3すべて20クラブ体制に統一しました。その結果、2024年はJ1が従来より2クラブ多い20クラブ、J2は従来より2クラブ少ない20クラブとなっています。

この変更によって、J1とJ2でクラブ数そのものは同数になりました。ただし過去を振り返れば、J1は基本的に18クラブ前後、J2は年々拡張して最大22クラブまで増えていた歴史があり、近年ようやく同数に揃えられた形です。

リーグ戦フォーマットも2024年から両リーグで似通っています。各クラブがホーム&アウェイで2回総当たり戦を行う年間38試合制となりました(19クラブ×2回戦=38節)。

以前はJ1が34試合(17クラブ×2回戦)、J2は42試合(21クラブ×2回戦)と、J2の方が試合数が多かったのですが、クラブ数統一に伴い両者とも試合数も一致しています。

J1は国際Aマッチ期間にリーグ戦を中断する傾向がある

日程運営には依然違いもあります。例えば、J1は国際Aマッチ期間にリーグ戦を中断する傾向がありますが、J2は基本的に中断期間なしでシーズンを進行します。

これはJ1の方が日本代表クラスの選手が多く在籍しているためで、代表戦期間に休止することでトップ選手の不在を避ける狙いがあります。

一方J2は代表クラスの選手が少ないため、シーズンを通してほぼ毎週試合が組まれ、過密日程になることもしばしばです。

また、J1とJ2は年間日程の区切りも同一で、いずれも春秋制(2月開幕~12月終了)を採用しています。

J1では各節で注目カードが週末に集中し、J2も同様ですが、水曜開催のミッドウィークゲームが設定される頻度は、試合数が同じになったことで両者ほぼ同等になりました。

ただ、過去の傾向としてはJ2の方が試合数が多かったぶん平日開催も多く、選手にとって体力的な負担が大きかった経緯があります。この点は2024年以降やや改善されたと言えるでしょう。

昇格・降格制度の違い

J1とJ2間の昇格・降格制度(入れ替えルール)は、リーグの根幹に関わる重要な違いです。2024年シーズン時点では以下のようになっています。

J1からJ2への降格

年間順位の下位3クラブが自動降格します。2024年はJ1が20クラブ体制であるため、18位・19位・20位が直接J2へ降格となりました(17位は残留)。

この3枠自動降格は、2024年からの新フォーマットで決まったものです。以前は「2.5枠」と称して18位チームが入れ替え戦に回るケースもありましたが、2024年以降それは廃止され、完全に下位3チーム自動降格制になりました。

J2からJ1への昇格

年間順位の上位2クラブが自動昇格します。そして3位~6位のクラブで昇格プレーオフ(トーナメント)を行い、その勝者が3つ目の昇格枠を獲得します。

プレーオフはJ2チーム同士で完結し、勝ち上がった1クラブが翌年J1に昇格します(2024シーズンは東京ヴェルディがこの方式でJ1昇格を果たしました​)。

以前はJ2昇格プレーオフ勝者がJ1の18位と入れ替え戦を戦う制度(いわゆる「J1参入プレーオフ」)がありましたが、これも2023年シーズンを最後に廃止されました​。つまり2024年からはJ2の昇格プレーオフ勝者が自動でJ1昇格できるようになっています。

J1昇格をしたファジアーノ岡山

以上により、毎年J1から3クラブがJ2へ降格し、J2から3クラブがJ1へ昇格する形となりました。

これはクラブ数20への統一後の新ルールで、上下リーグ間の入れ替え枠が対等(3つずつ)になった点がポイントです。

おかげでJ2クラブにとってJ1昇格への門戸が若干広がりましたが、同時にJ1下位クラブには3枠もの降格リスクが常につきまといます。経営面でもJ2降格は大きな打撃となるため、各クラブとも残留争いには死活的な重みがあります。

なお、J2とJ3間についても2024年から「3降格・3昇格(2自動+1入替PO)」の方式に変更されました​。これにより全カテゴリで上下3クラブずつが入れ替わる形となり、リーグ間の流動性が増しています。J2下位クラブはJ3への自動降格枠も拡大したため、残留争いはより厳しさを増したと言えるでしょう。

クラブの規模・収入の違い

クラブの予算規模や収入には、J1とJ2で大きな開きがあります。トップディビジョンとそれ以下ではスポンサー契約料や放映権分配金、グッズ売上、入場収入などあらゆる面で差がつくためです。

まず営業収入(クラブの年間売上)を比較すると、J1平均は数十億円規模に達する一方、J2平均は10億円前後とされています​。

実例を挙げると、2023年度決算でJ1収入トップの浦和レッズは約103.8億円の営業収入を計上しており​、Jリーグ史上初めて100億円超えを達成しました。そのほか川崎フロンターレ約79.6億円、ヴィッセル神戸約70.4億円といった具合で、上位クラブは軒並み50~100億円規模の収入があります。

一方でJ2収入トップの清水エスパルスでも約51.0億円で、これはJ1中位レベルに相当する規模に留まります​。J2全クラブの平均では約11億円程度との指摘もあり、J1平均と比べて 1/3以下という大差が見られます。

こうした財政規模の差は、クラブが運用できる人件費や補強費にも直結します。

実際に、J2からJ1へ昇格したクラブは収入が一気に数億~十数億円規模で増加する傾向があります。例えば徳島ヴォルティスは昇格前年の16.7億円からJ1昇格後に27.4億円へと10億円以上アップし、アビスパ福岡も15.4億→21.3億円と約6億円増を記録しました。

逆にJ1からJ2へ降格したクラブは、松本山雅FCが27.1億→19.3億円へ約8億円ダウン、ジュビロ磐田は38.1億→28.7億円へ約10億円ダウンと、わずか1年で大幅な減収に見舞われています。

J1とJ2では天と地ほどの差があり、資金力のあるクラブでも復帰は容易でないと言われる所以です。

クラブ収入の内訳を見ても、J1ではスポンサー料や放映権料の占める割合が大きく、全国的な知名度や露出を背景に多額のスポンサー契約を結ぶクラブが多いです。

特に2017年から導入されたDAZNとの大型放映権契約に伴うJリーグ分配金は、J1クラブに優先的に手厚く配分されています(後述する放映権の項で詳述)。

J2クラブにも分配金はありますが、金額はJ1より大幅に少なく抑えられており、経営はチケット収入や地元スポンサー収入への依存度が高くなります。

また各クラブの人件費(選手やスタッフの給与総額)にも顕著な差があります。J1では主力選手に数千万円~1億円単位の年俸を支払うクラブも多く存在し、平均年俸は約3,000万~3,500万円とされます​。

これに対してJ2の平均年俸は約400万~500万円程度と桁違いに低く、J2全体で見ればJ1の10分の1程度というデータもあります。

この差は若手・ベテランの構成比や契約形態(プロA契約選手の数)にもよりますが、概ねJ1>J2>J3で平均年収が大幅に異なることは明らかです。

実際、J2でも昇格を狙える上位クラブはJ1に近い水準の給与を用意している一方、下位クラブでは選手の多くが500万円以下の年俸に留まるケースもあるようです。

経営基盤という点でも、J1クラブの多くは親会社や大口スポンサーによる支援が厚く、年間予算も潤沢です。浦和やFC東京、名古屋など企業母体や自治体支援の強いクラブは、不調時でも資金面でのテコ入れが期待できます。

一方J2では親会社を持たない市民クラブ的なチームも多く、仮に収入が落ち込むとすぐさま経営難に陥るリスクがあります。

予算が20億円以下のクラブはJ1では残留争いに巻き込まれやすいとも言われ、逆にJ2で安定経営するには数億円規模でも慎重なやり繰りが必要です。

このような財政格差ゆえに、J1昇格はクラブに莫大なメリットをもたらし、反対に降格は大きな痛手となります。

多くのクラブが「昇格したら戦力補強に投資、降格したら人件費削減」といった舵取りを迫られます。近年では、J2降格クラブに対する「パラシュート・ペイメント」(救済金)も支給されています。

例として2022年の降格クラブには前年カテゴリーの均等分配金の80%(J1→J2の場合1億円、J2→J3の場合6000万円)が支給されました​。

しかしこの救済金も2023年限りで廃止され、結果による分配へのシフトが進められています​。つまりJ2に落ちたら自力で這い上がるしかなくなるため、クラブ経営陣にとってもJ1残留が死活的目標となっています。

観客動員数・人気の違い

観客動員もJ1とJ2では大きく異なります。一般に、J1の方が全国的な注目度が高く、スタジアムに足を運ぶファンの数も多くなります。2024年シーズンの実績を見ると、J1の平均観客数は1試合あたり約20,355人に達し​、J2の平均は約7,667人でした​。なんとJ1はJ2の約2.7倍もの観客を集めている計算です。

両リーグとも2022~2023年にかけてコロナ禍からの回復で観客数が伸び、2024年はJ1・J2ともに過去最高水準に迫る動員を記録しました。J1合計入場者数は773万人と前年より107%増、J2は291万人で前年比111%増となっています​。

しかし絶対的な数ではJ1が桁違いなのは明白です。J1では平均2万人超と、Jリーグ創設期やJリーグバブル時代を除けば近年で屈指の水準にあります。

具体的なクラブ別に見ると、J1には毎試合3万人以上を集めるようなビッグクラブも存在します。

例えば浦和レッズやFC東京、横浜F・マリノスなどは動員力が高く、ホームゲーム平均観客数が3万前後に達することもあります。実際、2024年のJ1最多入場者試合は57,885人(FC東京 vs 新潟)に上りました。

J1で多くの観客を集める浦和レッズのサポーター

一方J2では、多くのクラブの平均観客数が5千人~1万人未満に収まります。J2で最大級の集客力を持つクラブでもホーム平均1万人を少し超える程度で、過去の例では松本山雅FCがJ2時代(2018年)に平均13,283人を集めたのが突出した数字でした​。

逆に観客数が少ないクラブでは平均3~4千人台というケースも珍しくなく、J2全体では1万人を超える観客動員はかなりの好カードと言えます。

とはいえJ2でも熱心な地域密着クラブは観客増に努力しています。近年J2の最多入場者記録も更新されつつあり、2024年には清水エスパルス対横浜FC戦で55,598人もの観客を動員する試合が生まれました。

これは清水が企画した国立競技場でのホームゲームで、大都市圏開催と両クラブの人気も相まってJ2とは思えぬ大観衆を集めた例です。

こうした特例的なケースを除けば、やはりJ1とJ2の人気差は歴然であり、全国ニュースで報じられるのも基本はJ1の結果です。J2は専門番組や地域のニュースで取り上げられる程度で、露出面でも差があります。

要因として、J1のほうが都市圏クラブが多いことが挙げられます。人口の多い首都圏・関西圏のクラブが多いJ1は、それだけ潜在的なファン母数が大きく、スポンサー企業が招待する観戦客なども含めて観客数を稼ぎやすい面があります。

対してJ2は地方都市のクラブが多く、地元では盛り上がっても全国的な話題性に欠けることが多いです。

またJ1ではスター選手の存在や優勝・ACL出場争いといった注目コンテンツがあり、一見さんやライト層も呼び込みやすいですが、J2はどうしてもコアなサポーター中心の集客になりがちです。

とはいえJ2も年々ファンが増加傾向にあります。例えば2018年と2019年を比較すると、J2からJ1に昇格した松本山雅は平均観客13,283人→17,416人と4千人以上アップし、大分トリニータも8,907人→15,347人と6千人以上伸ばしました。

一方でJ1からJ2に降格した柏レイソルは11,402人→9,471人に減少、V・ファーレン長崎も11,225人→7,737人に落ち込んでおり​、リーグカテゴリが観客動員に直結する様子が伺えます。

これは「J1なら見に行こうと思う層」が一定数存在し、J2に落ちると離れてしまうことを示唆しています。

結局のところ、J1とJ2では観客数・注目度に明確な差があります。そのため各クラブもJ1残留・昇格に執着するわけです。「J2でも勝てばいい」という声もありますが、観客動員という点では「J1で勝てないよりJ2で勝つ方がいい」と言い切れない現実があると言えるでしょう。

スタジアム規模・設備の違い

両リーグの試合会場(スタジアム)にも違いが見られます。

J1クラブは概して収容人数の大きい立派なスタジアムを本拠地とする一方、J2クラブは規模が小さめで地域色豊かなスタジアムが多くなっています。

東京・味の素スタジアム(約5万人収容)はJ1の大型スタジアムの一例。首都圏クラブのホームとして設備も充実し、国際試合も開催可能な規格を備える

Jリーグではクラブライセンス制度でスタジアムの最低基準が定められており、J1ライセンスには15,000席以上の収容能力が要求されます(加えて照明の明るさやVIP席・報道設備など細かい基準あり)。

そのためJ1クラブは必然的にキャパ1万5千人以上のスタジアムを確保しており、実際には2万~5万人クラスのスタジアムが中心です。

首都圏や政令市のクラブでは陸上競技場を改修した大規模スタジアム(例:日産スタジアム=7万人級)やサッカー専用スタジアム(例:埼玉スタジアム=6万人級)をホームとする例も多いです。

一方、J2ライセンスでは10,000席以上が基準となっています​。そのためJ2クラブの本拠地は1万人規模前後のスタジアムが多く、なかには5千人台の小規模スタジアムを暫定利用しているケースも見られます(※J2ライセンス基準については緩和措置や改訂があり、現在は1万人要件は事実上5,000席に緩和されています。例えばいわきFCは5,066人収容のスタジアムでJ2参入を認められています)。

J2クラブでも将来のJ1昇格を見据えてスタジアム増改築計画を進めているところも多く、町田ゼルビアは観客席増設や新スタジアム構想でJ1ライセンス取得に漕ぎつけました。

J2いわきFCのホーム「いわきグリーンフィールド」(通称:フラガールズスタジアム)は収容約5,000人規模。ピッチが近く一体感はあるが、設備や席数はJ1スタジアムに比べ簡素

設備面でも差があります。

J1スタジアムはピッチ状態の維持や照明・映像演出などに大きな投資がなされ、快適性も高いです。客席には屋根が完備されていたり、飲食売店や大型ビジョンが充実していたりと、エンタメ施設としての質が高い傾向にあります。

対してJ2のスタジアムは地方自治体管理の陸上競技場が多く、トラックがあって観戦距離が遠かったり、屋根がない座席が多かったりします。ただ近年はJ2でも専用スタジアム化の流れがあり、北九州や京都などは新スタジアムを建設(北九州はミクニワールドスタジアム=15,000人、京都はサンガスタジアム=21,600人)しており、下位リーグでも施設水準は向上しつつあります。

スタジアムの雰囲気にも違いが表れます。

J1では大箱スタジアムを満員にする迫力ある応援や、大規模なビジョン演出で華やかな雰囲気があります。観客席数が多い分、サポーターが作るコレオグラフィー(人文字)やビッグフラッグも壮観です。

J2では規模は小さいものの、その分ピッチとの距離が近く選手の声が聞こえる臨場感や、地域密着の温かい雰囲気が特徴です。ローカル色豊かなスタグル(スタジアムグルメ)が楽しめたり、観客と選手の距離が近いアットホームさはJ2ならではの魅力と言えるでしょう。

総じて、「スタジアムの規模=クラブの規模」と言える側面があります。観客席の大きさや設備投資額は、そのクラブのこれまでの成績や人気の積み重ねの結果でもあります。

したがってJ1とJ2のスタジアム環境の差は、そのまま両リーグの格差を象徴しているとも言えるでしょう。

放映権・メディア露出の違い

放映・放送体制もJ1とJ2でいくらか異なります。

現在Jリーグの全試合は動画配信サービスDAZN(ダゾーン)によって独占中継されており、J1もJ2も基本的には同じプラットフォームで視聴可能です。しかし、テレビでの露出や放映権料の配分となると差が出てきます。

まず、DAZNとの放映権契約は2017年にJリーグと締結されたものですが、その金額は「10年間で約2100億円」という巨額なものでした​。これはJリーグ全体への支払いですが、リーグのトップコンテンツであるJ1に主眼を置いて算出されたものです。

実際、放映権料収入(DAZNマネー)は各クラブへの分配金として還元されますが、J1クラブには高額な均等配分金と成績連動の賞金が与えられる一方、J2クラブへの分配は相対的に少額です。

具体的な配分額は非公表ですが、2022年時点の資料によればJ1クラブの均等分配金は約1.25億円、J2クラブは約0.75億円程度と推測されます(J1から降格したクラブにはその80%である1億円が救済金として支払われていたことから逆算)。

さらにJ1上位には「理念強化配分金」として最大で数億円単位のボーナスが別途配られる仕組みがあり、J1とJ2の収入格差を一層広げる構造になっています。

テレビ中継に関しては、J1はNHKや民放で録画含めハイライト番組や中継枠が設けられることがあります。NHK-BSの「Jリーグタイム」では毎節J1の全試合ハイライトが放送され、J2はその後に短く結果が触れられる程度です。

また、スカパー時代(2016年以前)はJ2の試合も専門チャンネルで中継されていましたが、DAZN移行後は原則配信のみとなり、地上波テレビでJ2の試合が生中継される機会はごく限られます。

地域のNHKローカル局や独立UHF局が、地元クラブの重要な試合を特別中継することはありますが、全国ネットでJ2の試合が流れることはまずありません。

メディア露出という観点では、ニュースやスポーツ紙の扱いもJ1とJ2で大きく異なります。J1の試合結果や順位は翌日の新聞やニュース番組のスポーツコーナーで報じられますが、J2はよほどの話題(記録的な試合や有名選手の所属など)がない限り触れられません。

サッカー情報サイトでも、J1に比べJ2の記事本数は少なめで、一般のファンが触れる情報量自体に差があります。このためスポンサーにとってもJ1とJ2では宣伝効果が違い、結果としてスポンサー料やグッズ売上などにも差がつくという循環になっています。

しかし近年、J2の魅力にもスポットが当たりつつあります。DAZNは全試合をフォローしているため、コアなファンはJ2もリアルタイムで視聴可能ですし、Jリーグ公式YouTubeではJ2のゴール集や見どころ動画も配信されています。

SNS上では「J2沼」と呼ばれる熱心なファン層が各クラブ・選手の情報を発信し、J2独特の盛り上がりを形成しています。

またeスポーツ大会「eJリーグ」でJ1・J2混合の全クラブによる対戦が企画されるなど、メディアコンテンツ面でJ2クラブも巻き込んだ展開が増えています。

とはいえ、依然として「テレビで見られるのはJ1、ネット配信のみがJ2」という構図は大きく変わりません。J1のビッグマッチが地上波で中継される影で、J2の熱戦はDAZNの中でひっそりと行われている、そんな状況です。

このメディア露出格差もまた、クラブ収入やファン獲得に直結するため、J2のクラブは一刻も早いJ1昇格を目指すインセンティブとなっています。

チームのレベル・戦術スタイルの違い

競技レベルやプレースタイルの違いも、J1とJ2を語る上で欠かせません。一般的には「J1の方がレベルが高い」と言われますが、それは単に選手個々の能力だけでなく、試合の戦術傾向や展開の違いとして現れます。

まず個々の選手の質については、やはりJ1には各国代表クラスや実績豊富な選手が集まりやすく、全体のレベルが高いです。J2にも優秀な選手はいますが、若手の育成途上選手やJ1から出場機会を求めて移籍してきた選手、ベテランの叩き上げ組などが多く、選手層の厚みではJ1に及びません。

両リーグを経験した選手の声として、「J2では決定機を3本4本外してもまたチャンスが来るが、J1では数少ない好機を決めないと勝てない」という証言があります。つまりJ1の方が一瞬のスキルや決定力の差で勝敗が決しやすく、ミスが致命傷になりやすいわけです。

戦術面では、かつては「J2は守備的でフィジカル重視、J1はテクニック重視で攻撃的」というイメージがありました。しかし近年その差は縮まっています。最近の傾向では「J2でのスタイルを特に変えずとも普通にJ1で戦えている」ケースが増えており​、実際に昇格組がJ1残留以上の成績を収める例も出てきました。

たとえば2022年昇格の京都サンガは守備的戦術を継続して残留し、2023年昇格の横浜FCも攻撃的スタイルで健闘を見せました。「かつてのJ2は守備的なチームが多かったが、近年はJ1と似た戦術を志向するクラブが増えている」との指摘もあります​。

とはいえ、試合展開の傾向には依然違いがあります。J1では各チームとも緻密な戦術準備を行い、相手の長所を消し自分たちのプランを遂行する高度な駆け引きがあります。強豪チームはポゼッションを高めて主導権を握る「ボール保持型」が多かったですが、近年は神戸や横浜FMなど走力・強度で勝る「トランジション重視型」も台頭し、戦術の多様性が増しています。

一方J2では、戦力差がJ1ほど大きくないこともあり、「何が起こるか分からない乱戦」になることもしばしばです。体を張った泥臭い守備からカウンターを狙うチーム、走力や勢いで90分間攻めきるチームなど、戦い方も様々ですが、テクニックより局面の切り替えやハードワークで勝負する傾向が強めです。

「J2の方が少しプレー速度が速くスピード感があり、J1の方がボールを動かしながらプレーする印象」という指摘もあり​、J2は展開が上下動しやすく攻守の入れ替わりが多いとも言われます。

総合的に見れば、J1は戦術・技術・フィジカルすべてが高度に備わったリーグであり、J2は戦術の型にはまらない泥臭さと予測不能な面白さがあるリーグと言えるでしょう。

実力差は確かに存在しますが、J2でも上位クラブはJ1下位~中位に匹敵する力をつけてきており、J1経験者からも「J2にもJ1で通用する力を持った選手が多くいる」と評されています。

このため近年は天皇杯などでJ2クラブがJ1クラブを破るジャイアントキリングも珍しくなくなりました。昇格組がJ1で旋風を巻き起こすことも増え、両リーグのレベル差は徐々に埋まりつつあると言えるかもしれません。

地域性・クラブ分布の違い

クラブの地理的分布にもJ1とJ2の違いがあります。Jリーグは「地域密着」を掲げ全国各地にクラブが存在しますが、どの地域のクラブがJ1かJ2かによってリーグの特色が変わります。

J1は概して大都市圏のクラブが多い傾向があります。2024年のJ1所属クラブの所在地を見ても、東京(FC東京・東京V・町田)、神奈川(横浜FM・湘南)、埼玉(浦和)、愛知(名古屋)、大阪(G大阪・C大阪)、兵庫(神戸)、福岡(福岡)など、人口の多い都市やその近郊が目立ちます。

一方で、東北地方や北陸・四国からのJ1クラブはゼロでした(新潟は中部地方として含む)。これはたまたまその年の昇降格結果によるものですが、J1はどうしても資金力のある都市クラブが多く勝ち残り、地方の小クラブはJ2に留まるという構図が浮かびます。

対してJ2はより広範な地域からクラブが参加しています。2024年のJ2には東北からブラウブリッツ秋田・モンテディオ山形・ベガルタ仙台、関東から水戸ホーリーホック・栃木SC・ザスパクサツ群馬・ジェフ千葉、北信越からツエーゲン金沢(←2023年降格でJ3へ)、東海から藤枝MYFC・清水エスパルス、関西は該当なし、中国地方からファジアーノ岡山・レノファ山口、四国から徳島ヴォルティス・愛媛FC、九州からV・ファーレン長崎・ロアッソ熊本・大分トリニータ・鹿児島ユナイテッドFCといった具合に、日本列島ほぼ全域に散らばる構成です。

J2にはJ1未経験の地方クラブも多く、「Jリーグだけど初めて聞く土地のチーム」という印象を持つ人もいるかもしれません。しかしそれらのクラブは各地域でJ1を目指して活動しており、例えば秋田や藤枝など地方都市クラブがJ2で健闘している姿は、Jリーグのすそ野の広さを示しています。

地域性という点では、各クラブの「ホームタウン」の範囲も違います。J1クラブは伝統的に単一の都市(例:横浜市、札幌市など)をホームタウンとするケースが多いですが、J2クラブになると「県全域」や「複数市町村」をエリアとすることが増えます。

例えばモンテディオ山形や徳島ヴォルティス、V・ファーレン長崎などは県全域をホームタウンとし、自治体の垣根を超えた広域クラブとして運営されています。これは地元の人口規模や財政支援の必要性から、複数自治体が協力してクラブを支える形を取っているためです。

J1クラブでもサガン鳥栖(佐賀県鳥栖市)は実質佐賀県全域から支援を受けていたりしますが、より地方色が濃いJ2クラブではその傾向が顕著です。

また地域ライバル関係にも違いがあります。J1では横浜FMと横浜FCの「横浜ダービー」やFC東京と東京Vの「東京ダービー」など、同じ都市圏に複数クラブが存在するダービーマッチがあります。

一方J2では地域ごとに1クラブずつ分散している場合が多く、「○○ダービー」と呼べるカードは少なめです(ただし北関東ダービー=栃木vs水戸vs群馬、九州ダービー=熊本vs長崎vs大分など広域の括りでのライバル戦は存在します)。

J2ではむしろJ1から降格してきたクラブ同士の対戦(例:清水vs千葉、磐田vs清水の静岡ダービーなど)が注目されたり、J3から上がってきたフレッシュなカードが話題になったりします。

地域性という視点では、気候や移動距離も無視できません。北海道から九州・沖縄までカバーするJリーグにおいて、J2は特にクラブ数が多かった時期、北海道クラブ(例:札幌がJ2時代)から沖縄(FC琉球)まで長距離遠征がありました。J1でも札幌→福岡といった移動はありますが、J2はかつて22クラブ時代に全国隈なく存在したため移動負担が大きかったのです。

これも2024年以降20クラブに減ったとはいえ、広域リーグであることに変わりはなく、アウェイゲームでの移動や宿泊の費用負担もJ2クラブには重くのしかかります。財政に余裕のあるJ1クラブならチャーター便を手配するような遠征も、J2クラブは新幹線やバス移動でコストを抑えるなど、見えない部分で差が出ます。

総じて、J1=都市部のビッグクラブ集中、J2=全国津々浦々の地方クラブ混在という図式が見て取れます。J1が日本全国に向けて発信するナショナルコンテンツだとすれば、J2は各地域に根差したローカルコンテンツの集合体とも言えます。

それぞれの地域の特色やファン文化が反映されたリーグであり、上位/下位カテゴリーの違いだけでなく日本各地の多様性を感じられるのもJ2のおもしろさです。

ファン文化・ファンサービスの違い

最後に、サポーター文化やファンサービスの違いについて触れておきます。J1とJ2ではファンの熱量に差はないものの、その規模やクラブとの距離感などで特徴が分かれます。

まず応援スタイルですが、J1のサポーターは人数も多く組織的で、大規模な応援団が存在します。ゴール裏の熱狂やチャント(応援歌)の声量はJ1ならではで、試合によってはスタジアム全体が揺れるような大声援になります。ときには何万人規模でコレオグラフィーを作り出す光景は、J1のビッグマッチの醍醐味です。

対してJ2ではサポーター数が少なめな分、一人一人の存在感が際立ちます。アウェイ遠征でも少数精鋭で太鼓を叩き声を張り上げる姿は、むしろ選手にとって心強いものかもしれません。J2は熱狂的コアサポーターの比率が高いとも言え、観客全体の数は少なくとも、応援の密度や一体感では負けていません。

ファン層の広がりにも違いがあります。J1クラブは長年の歴史でファン層が世代を超えて広がり、ファミリー層や女性ファン、外国人ファンなど多彩です。ホームタウンが大都市の場合、企業の社員や地元在住の他県出身者などライト層も取り込みやすく、「とりあえず話題だから観に行く」という層も存在します。

一方J2クラブは基本的に地域の濃いサポーターが中心で、「おらが町のクラブを応援する」地元愛に支えられているケースが多いです。観客動員では苦戦することもありますが、その地域では老若男女問わずクラブの存在が日常会話に上るなど、地元密着度はむしろ高いかもしれません。

ファンサービスやイベントにも違いが見られます。J1クラブはファン感謝デーやサイン会などを開催しても参加希望者が殺到し、抽選や整理券になることも多いですが、J2クラブでは比較的選手との距離が近いイベントが行われることがあります。

例えば試合後にサポーターと選手が触れ合う場(ハイタッチや写真撮影)が設けられたり、地元のお祭りに選手が積極的に参加してファンと交流したりといった光景が見られます。J1でも地域イベント参加はありますが、J2の方が選手とファンの接点を重視する傾向があります。これはクラブがファン離れを防ぎ地元に根付くための努力でもあり、結果としてファンにとっては選手を身近に感じられるメリットになっています。

また公式ファンクラブの特典などを見ると、J1はグッズ割引や優先入場、チケット先行販売など大量の会員を捌くための仕組みが中心ですが、J2では少人数向けに選手との交流イベントやツアー企画などユニークな特典を打ち出すクラブもあります​。予算の潤沢なJ1に比べ、J2は手作り感あふれるサービスでファンを喜ばせようとする姿勢が感じられます。

メディアやSNSでの盛り上げも、J1は全国区メディアが扱う分派手ですが、J2は逆にSNS上での草の根盛り上げが活発です。Twitter(現X)では各クラブの非公式マスコットやデータ系アカウントが独自にJ2の情報を発信し合い、ファン同士がコミュニティを形成しています。

J2は情報が少ない分、自分たちで発信・共有しようという文化が醸成されており、結果としてディープなファン同士の結びつきが強い印象です。「J2沼」という言葉があるように、一度ハマると抜け出せない魅力があるのもJ2のファン文化でしょう。

まとめ

以上、2024年シーズンにおけるJ1とJ2の違いをあらゆる角度から見てきました。クラブ数や昇降格制度といったリーグ構造の違いから、観客動員・収入格差、競技レベル、地域性、ファン文化まで、その差異は多岐にわたります。

  • リーグ規模:2024年から両リーグ20クラブ体制に統一。ただし試合数・日程運営やライセンス要件に違いあり。
  • 昇降格:J1下位3チーム自動降格、J2上位2自動昇格+昇格PO1枠。入替戦は廃止され明快な3アップ3ダウンに。
  • 観客動員:J1平均2万人超で全国的な人気、J2平均7千人台で地域密着型。J1とJ2では注目度に大きな開き。
  • 財政規模:J1クラブの収入・予算はJ2の数倍規模。スポンサー・放映権分配金もJ1優位で、選手年俸にも差が歴然。
  • 競技レベル:J1は選手層が厚く戦術的、J2はフィジカルな戦いも多く予測不能な面白さ。近年は戦術傾向の差は縮小。
  • スタジアム:J1は大規模で設備充実、J2は小規模で素朴な雰囲気。ライセンスの席数要件もJ1=15,000、J2=10,000。
  • 地域性:J1は都市部集中、J2は全国津々浦々の地方クラブが混在。ホームタウンの範囲やダービーマッチにも違い。
  • ファン文化:J1は大観衆の組織応援と幅広いファン層、J2は濃密なサポーターコミュニティと選手との距離の近さ。

こうした違いはありますが、どちらが良い悪いではなく、それぞれに魅力があることも強調したいポイントです。

J1は日本サッカーの最高峰らしいハイレベルな試合とビッグクラブ同士の激突が楽しめ、国際的なスター選手や大観衆の迫力も味わえます。

一方J2は昇格・残留を懸けた死闘や番狂わせの妙味、そして地方ならではの温かなサッカー文化に触れられます。財政面では厳しくとも創意工夫で健闘するクラブの物語や、無名の若手が躍動してJ1へ羽ばたくドラマもJ2の醍醐味です。

Jリーグは入れ替え制度によって常に流動性があり、J2のクラブがJ1で躍進する可能性も秘めています。実際2024年のJ1には町田ゼルビアや東京ヴェルディといった新興勢力が昇格して話題をさらいました。

逆に伝統ある名門でもJ2降格の憂き目を見ることがあり、リーグの勢力図は絶えず変化します。だからこそ、J1とJ2の両方に目を向けておくと日本サッカー全体の動きが見えてきます。

本記事で網羅した知識を踏まえ、ぜひスタジアムにも足を運んでみてください。J1の熱狂とJ2の情熱、その両方を体感することでJリーグの奥深さが一層味わえるはずです。それぞれのリーグの違いを理解しつつ、自分なりの視点でサッカー観戦を楽しんでいただければ幸いです。