J1リーグでは、シーズン終了時の順位次第でチームがJ2リーグへ降格することがあります。
そこで今回は、J1残留に必要とされる勝ち点について、過去のデータから平均値や傾向を読み解き、初心者向けにわかりやすく解説します。

まず前提として、J1リーグの基本的な仕組みを押さえておきましょう。J1リーグは日本のサッカー国内トップディビジョンで、参加クラブ数や昇降格のルールは年によって変更がありました。
- 試合方式と勝ち点:J1リーグでは各クラブがホーム&アウェイ方式で総当たり戦を行います。1試合ごとに勝利で勝ち点3、引き分けで勝ち点1、敗戦では勝ち点0が与えられ、シーズンの合計勝ち点で順位が決まります(得失点差は勝ち点が並んだ場合の判定材料)。
- 通常シーズンのクラブ数:2005年以降、基本的にJ1は18クラブ体制でした。ただし2020年は降格がなかった影響で2021年のみ20クラブ、2024年からは再び20クラブ体制に移行しています。
- 降格と残留:2025年シーズンはJ1における年間順位下位3クラブがJ2に降格し、J2における年間順位上位2クラブおよびJ2における年間順位3位から6位のJ2クラブが参加するJ1昇格プレーオフに優勝したJ2クラブがJ1に昇格します。
以上をまとめると、「J1残留」とは基本的に降格圏に入らないこと、すなわち年間順位で降格となるライン以上の順位でシーズンを終えることを指します。

それでは、過去10~15年のJ1リーグで「残留ライン」となった勝ち点が何点だったのかを見てみましょう。
ここでは基本的に残留圏で最も下位のクラブ(=ギリギリ残留に成功したクラブ)の勝ち点を取り上げます(多くの年で15位のクラブが該当)。以下は主なシーズンのデータです。
2010年 | 15位神戸が勝ち点38で残留 |
2011年 | 15位浦和が勝ち点36で残留 |
2012年 | 15位新潟が勝ち点40で残留 |
2013年 | 15位甲府が勝ち点37で残留 |
2014年 | 15位清水が勝ち点36で残留 |
2015年 | 15位新潟が勝ち点34で残留 |
2016年 | 15位新潟が勝ち点30で残留 |
2017年 | 15位広島が勝ち点33で残留 |
2018年 | 15位名古屋が勝ち点41で残留 |
2019年 | 15位鳥栖が勝ち点36で残留 |
2020年 | 降格なし(15位横浜FCは勝ち点33で参考記録) |
2021年 | ※20チーム特例(15位柏が勝ち点41、16位湘南37。17位以下降格) |
2022年 | 15位G大阪が勝ち点37で残留(16位京都36※入替戦経て残留) |
2023年 | 15位湘南が勝ち点34で残留 |
上記のように、過去のJ1残留ライン(=残留に成功したチームの勝ち点)は年によって30~41ポイントと大きな幅があります。
2016年は勝ち点30と突出して低く、一方2018年は勝ち点41も必要でした。
多くの年では勝ち点35前後で残留争いが決着しており、中でも勝ち点37前後がJ1残留の一つの目安と言われます。


データから、J1残留ラインの平均値や中央値を算出してみましょう。
J1が18クラブ制になった2005年以降~直近まで(2020年の降格なし特例年を含む)の15位の勝ち点平均はおよそ36.7ポイントです。
直近約15年(2009~2023年※特例年除く)に絞っても、平均・中央値ともに36前後となり、だいたい「勝ち点36~37くらい」が残留ボーダーの平均と言えます。
では中央値(真ん中の値)はどうでしょうか。やはり勝ち点36前後が中央値となります。
つまり過去の多くのシーズンで残留ラインは36~37あたりに位置してきたわけです。
これは1試合平均にすると約1.1ポイントで、よく言われる「1試合あたり勝ち点1(=年間34前後)ではやや不足、1試合1.1ポイント(=約37)あると残留にかなり近い」という経験則とも合致します。
なお、最頻値(よく現れる値)に注目すると、勝ち点36~37あたりが頻出しています。勝ち点35前後も多いですが、35だと残留できない年もあり少しリスキーです。
一方で勝ち点40以上を獲得できればまず間違いなく安全圏と言えます(後述するように40点以上取って降格した例はありません)。
こうした数字を見ると、J1残留争いでは「最低でも勝ち点30台中盤、できれば後半近く」を目標に勝ち点を積み上げることが重要となります。

前述のように、残留ラインの勝ち点は毎年一定ではなくばらつき(変動)が大きいです。
その年のリーグの展開によって「必要ポイント」は上下します。極端なケースとして先ほど触れた2016年と2018年を見てみましょう。
2016年はJ1残留ラインが勝ち点30という近年まれにみる低水準でした。
この年は下位に沈んだクラブの成績不振が著しく、17位湘南が27点、18位福岡は19点と他クラブから大きく引き離されてしまいました。
下位の一部チームが早々に脱落状態となったため、残留争い圏のクラブはあまり勝ち点を積み増さなくても残留できたと言えます。
実際、15位と16位(名古屋)は勝ち点30で並び、新潟が得失点差で15位残留、名古屋は16位で降格というギリギリの争いでした。このように極端に低い残留ラインになった背景には、「下位クラブの大失速」が挙げられるでしょう。
一転して2018年は勝ち点41が残留ライン(15位名古屋の勝ち点)となり、史上例を見ない高水準でした。
この年はリーグ終盤に残留争いが大混戦となり、下位の複数クラブが最後まで競り合った結果、残留圏の勝ち点が跳ね上がりました。
実際、16位磐田も勝ち点41で並び(入替戦へ)、17位柏が39で降格と、勝ち点39を取ってなお降格するクラブが出たのです。
これは非常に稀なケースで、柏レイソルの降格は当時「内容的には中位の成績(勝ち点39)でも降格する異例のシーズン」として話題になりました。
要因として、下位クラブ同士が潰し合いではなくまんべんなく勝ち点を拾ったことや、引き分けの少ない勝敗決着の試合が多かったことなどが考えられます。その結果、残留ラインが例年より大幅に上振れしたと言えるでしょう。

勝ち点40以上 | ・ほぼ安全圏 ・これまでのJ1で40以上あって降格した例はなく、まず残留確実 |
勝ち点36~39 | ・残留圏内と考えられるゾーン ・このレンジに乗せれば残留できる可能性が高い ・ただしごく稀に39で届かない年もあった |
勝ち点33~35 | ・ボーダーライン上 ・この辺りの数字だと残留できる年もあれば降格する年もあり、シーズン終盤まで予断を許さないライン |
勝ち点30以下 | ・降格圏濃厚 ・他クラブも低迷する特殊な場合を除き、この点数では残留は難しい ・実際ほとんどの年で30前後では降格圏に沈んでいる |
ファンの間では「勝ち点○○あれば安全圏」といった目安が語られることがあります。
では実際、過去の実績からどのくらいの勝ち点を取れば「ほぼ降格しない」と安心できるラインと言えるのでしょうか?データを基に考えてみます。
過去のJ1では、勝ち点40以上を獲得したクラブが降格した例はありません。
実績上、「勝ち点42あれば確実にJ1残留と言える」という声もあります。実際2006年には15位甲府が勝ち点42というケースもありましたが、それでも降格は免れています(※16位以下はそれ未満の勝ち点)。
近年では先述の2018年に残留ラインが41まで上がりましたが、42点あればまず安全なのは間違いありません。
一方で、現実的な目標ラインとしてよく言われるのが勝ち点40です。勝ち点40はJリーグのみならず欧州リーグなどでも「残留安全圏」の目安とされる数字です。
前述の通り2018年には勝ち点39で降格例が出ましたが、それは極端なケースでした。一般的には「40取れば大丈夫」という感覚で捉えられています。
では、もう少し下のラインではどうでしょうか。
勝ち点36以上を確保できれば、統計的に見て15位以上に残れる可能性がかなり高いです。
実際、勝ち点36で残留できなかったのは非常に稀な年のみで、36あればかなりの確率で降格圏を逃れられています。
逆に勝ち点30前後では残留はかなり危うく、よほど他クラブが低調な年でない限り難しくなります。過去には勝ち点30台前半(33~34)でも残留できたケースがありますが(2017年33、2015年34など)、これも運次第と言えるでしょう。

最後に本記事のポイントを振り返ります。
- 過去のJ1残留ライン(残留に成功したクラブの勝ち点)は、おおむね35~38前後で推移してきました。平均値は約36.7ポイント、中央値も36前後です。
- 年によってばらつきがあり、最低は30(2016年)、最高は41(2018年)という極端な例もあります。残留ラインが上振れ・下振れする背景には、下位クラブの力関係や引き分けの数などシーズン展開の違いがあります。
- 安全圏の目安としては、勝ち点40を目指せばまず安心でき、42ポイント取れれば確実に残留できるでしょう。逆に36ポイント程度あると残留の可能性がぐっと高まりますが、30前後ではかなり危険です。
- J1残留争いはシーズン終盤の見どころでもあり、「あと○勝で残留確定」といった計算が話題になります。初心者の方も是非、勝ち点の推移に注目しながら残留ラインを意識してみてください。勝ち点1の重みが実感できるはずです。
シーズンが進むにつれ、今年のJ1降格はどのチームになるのか?という視点でリーグ戦を追ってみるのも面白いでしょう。
J1残留を争うクラブにとっては一試合ごとの勝敗が命運を分けます。勝ち点の積み重ねと残留ラインの行方に注目しながら、シーズン終了までハラハラドキドキの展開を楽しんでみてください。