【2025年版】J1ライセンスがないJリーグチームまとめ

J1ライセンスを持っていないJリーグのチームはどれくらいあるのでしょうか?

本記事では2025年度におけるJ1ライセンスを持っていないJリーグのクラブと、各クラブのライセンス獲得への課題をまとめました。

J1ライセンス制度とは?J1ライセンスの重要性

Jリーグのクラブライセンス制度は、クラブが上位リーグに参加するために必要な資格制度です。

ライセンスには「J1」「J2」「J3」の3種類があり、J1ライセンスが最も厳しい基準となっています。

例えば、スタジアム収容人数についてJ1基準は15,000人以上(芝生席は除外)で、J2基準は10,000人以上と定められています​。この収容人数要件はA等級基準に分類され、満たしていないとJ1ライセンスは交付されません​。

Jリーグのスタジアム基準が厳しい3つの理由!基準に対するみんなの意見まとめ

ライセンス制度の目的は競技水準や施設水準の向上、クラブ経営の安定化などにあります。

J1ライセンスを取得するにはスタジアム要件だけでなく、財務状況や下部組織(アカデミー)の整備など様々な基準をクリアする必要があります。基準には絶対条件の「A等級」と、未充足でも制裁付きでライセンス交付可能な「B等級」などがあり、例えばスタジアムの屋根カバー率やトイレ数はB等級基準です​。

J1ライセンスがないチームにとって最大の問題は、成績を残しても昇格できないことです。

実際に過去には、J2で好成績を収めながらJ1ライセンス未取得のため昇格できなかった例があります。

例えば2018年、FC町田ゼルビアはJ2で2位相当の成績を収めましたが当時J1ライセンスがなく、昇格資格を持たないままシーズンを戦いました。

同様に、2017年にはJ3優勝のブラウブリッツ秋田と2位のアスルクラロ沼津がいずれもJ2ライセンスを持たず昇格見送りとなっています​。

このようにライセンスの有無がクラブの昇格可否を左右するため、ファンにとってもクラブにとっても非常に重要な制度なのです。

2025年にJ1ライセンスを持たないクラブ一覧

Jリーグは毎年、翌シーズンのライセンス判定結果を公表しています。

2025シーズンのライセンス判定では、J1ライセンスは申請した全クラブに交付され、不交付ゼロとなりました。

一方でJ2ライセンス(=J1ライセンス未取得のクラブ)となったクラブは11クラブ存在します。つまり、2025年度時点でJ1ライセンスを持たないチームは以下の11クラブです​。

  • ヴァンラーレ八戸(J3)
  • 福島ユナイテッドFC(J3)
  • Y.S.C.C.横浜(JFL)
  • SC相模原(J3)
  • AC長野パルセイロ(J3)※2025シーズンはJ2昇格予定なし、ライセンスは停止条件付き
  • アスルクラロ沼津(J3)
  • FC大阪(J3)
  • 奈良クラブ(J3)
  • ガイナーレ鳥取(J3)
  • FC今治(J2)
  • テゲバジャーロ宮崎(J3)

上記のクラブはいずれもJ1ライセンス未保有(=J2ライセンス止まり)であり、J1昇格のためには施設や経営面でクリアすべき課題を抱えています。

J1ライセンス未取得の各クラブの現状と課題

ヴァンラーレ八戸 (J3)

青森県の八戸市などをホームタウンとするクラブです。

現在のクラブライセンスはJ2で、ホームスタジアムはプライフーズスタジアム(八戸市)。収容人数は約5,124人と小規模で、J1基準の15,000人には遠く及びません。

スタジアム自体は2016年に完成した比較的新しい陸上競技場ですが、観客席数や設備面でJ1のA等級基準を満たしていないためJ1ライセンス申請を見送っているとみられます。

クラブの平均観客動員もまだ2000人程度と推定され、スタジアム拡張や観客増などインフラ・集客両面で課題があります。八戸市や青森県からの支援も必要で、地域と連携した強化が求められています。

福島ユナイテッドFC (J3)

福島市を中心とするクラブ。ホームスタジアムの「とうほう・みんなのスタジアム」(福島市あづま陸上競技場)は収容人数約21,000人を誇り、一見するとJ1規模に思えます。

しかし、座席の形状や屋根の有無など細部でJ1基準を満たしていない可能性があります(芝生席が多く観客席数にカウントできない等)。

またスタジアムが市街地から離れており、アクセス面や観客動員にも課題があります。

福島市はスタジアム整備について「具体的な構想はない」としつつ、駅前へのスタジアム整備案に触れる意見もあります​。

クラブは将来的な新スタジアム構想の必要性を認識しており、サポーターからも「福島にも新スタジアムを」という声が上がっています。

またユース施設の充実(2026年夏頃に新施設開業予定​)など経営基盤強化も進めており、まずはJ2昇格に必要な環境整備を優先している状況です。

Y.S.C.C.横浜 (JFL)

横浜市をホームとするクラブで、正式名称は横浜スポーツ&カルチャークラブ。

ホームスタジアムはニッパツ三ツ沢球技場で収容人数15,442人とJ1規模の収容力があります。そのため施設面ではJ1基準に近いものの、屋根のカバー率が基準未達で制裁を受けるなど課題もあります。

実際、Y.S.C.C.は2022年度のライセンスで「屋根が観客席1/3以上を覆っていない」ため制裁付きでJ2ライセンス交付となりました​。

クラブ規模の面では、横浜というビッグクラブがひしめく地域で観客数・収入が少ない点が大きなハードルです。

2022年度決算では赤字を計上し、一時は財務面の詳細確認が求められるなどライセンス交付が保留となった経緯もありました​。

つまりY.S.C.C.の場合、スタジアム要件はほぼクリアしているものの経営規模や集客力でJ1基準に達していないことがJ1ライセンス未取得の背景と言えます。

まずはJ3で成績を上げ、地域での認知度向上とスポンサー拡大を図ることが重要です。

SC相模原 (J3)

相模原市(神奈川県)のクラブ。ホームは相模原ギオンスタジアム(約11,000人収容)で、J1昇格にはスタジアム規模拡大が最大の課題です。

SC相模原は2020年に施設基準の例外適用でJ2ライセンスを取得し、翌2021年にクラブ史上初のJ2昇格を果たしました​。

しかしJ1ライセンスについてはスタジアム基準を満たせず申請しておらず、現在J3降格後もJ1ライセンス未保持です。

ギオンスタジアムをJ1基準にするには15,000席以上への増設や屋根設置が必要で、市はJR相模原駅北口の米軍返還地への新スタジアム建設構想を検討しています​。

コロナ禍もあり当初の計画提出期限(2023年6月)に間に合わなかったものの、Jリーグは例外措置として新スタ計画の提出期限を2025年6月まで延長しました​。

現在、相模原市は2025年3月までに土地利用計画を策定予定で、クラブも「駅北口地区へのスタジアムを核とした街づくり実現に向け、市と協議を続ける」とコメントしています。

つまり相模原は新スタジアム建設計画の進展次第でJ1ライセンス取得に道が開ける状態であり、行政との連携がカギとなっています。

AC長野パルセイロ (J3)

長野市を本拠地とするクラブ。ホームスタジアムの長野Uスタジアムは収容15,000人超を誇り設備面ではJ1基準をほぼ満たしています。

しかし財務面の問題からJ1ライセンスを申請できていません。近年のAC長野は経営赤字が続き、2022年度には3期連続赤字かつ債務超過という深刻な状況に陥りました。

クラブは「見込みが甘かった」と謝罪しつつ、資本準備金の減少や増資などで債務超過を回避したものの、2024シーズンのライセンスは「停止条件付き」でのJ2ライセンス交付となりました。

具体的には「2024年度予算進捗と2025年度予算計画の報告」を求められ、条件を満たさなければライセンス効力停止となる厳しいものです。

長野はJ1ライセンス申請に必要な経営安定性のA等級基準を満たせていないため、まずは財務再建が急務です。

スタジアム要件自体は問題ないため、黒字化とスポンサー確保にめどが立てばJ1ライセンス取得への道が開けるでしょう。

幸いホームの長野UスタはW杯も開催された立派な施設であり、将来的なJ1昇格ポテンシャルは十分です。経営健全化とチーム成績向上の両面から立て直しを図っています。

アスルクラロ沼津 (J3)

静岡県沼津市のクラブ。ホームの愛鷹広域公園多目的競技場は収容5,110人と小規模で、J1どころかJ2基準(1万人)にも達しません。

当然ながらJ1ライセンスは未申請です。同クラブは2017年にJ3で2位となりましたがJ2ライセンス未保有だったため昇格できなかった過去があります。

その後、新スタジアム建設計画を前提とした例外規定によりJ2ライセンスを取得し、現在J2昇格に備えています​。

しかしスタジアム問題は依然悩みの種で、最近では照明設備不足という課題に直面しました。Jリーグはクラブライセンス基準に夜間照明の照度要件(1500ルクス以上)を追加し、沼津の愛鷹競技場は未対応だったためライセンス失効の恐れがありました​。

沼津市や静岡県がすぐに動かなかったため、クラブとサポーターはクラウドファンディングで照明改修費用の半分を調達し​、市も一部負担して期限内に工事計画を提出。

結果、無事にJ2ライセンス維持にこぎつけた経緯があります。

このようにクラブ・地域が一丸となって施設改善に取り組んでいるものの、仮に将来J2で上位に入った場合は新スタジアム建設が避けられないとも指摘されています​。

現在、沼津市は例外規定2(新スタ5年以内完成)を適用した新スタジアム整備計画を検討中で、モデルプランでは1万人収容のサッカー専用スタを目指す方向です。

沼津サポーターもオンライン署名活動などで新スタ実現を後押ししており、将来的なJ1ライセンス取得にはこの新スタ計画の実現が鍵となります。

FC大阪 (J3)

大阪府をホームとしたクラブです。

大阪にはガンバ大阪やセレッソ大阪といったJ1クラブがあり、FC大阪は大阪第3のクラブとして挑戦を続けています。

現在のホームスタジアムは東大阪市の花園ラグビー場第1グラウンド(東大阪市花園ラグビー場)や万博記念競技場(吹田市)などを間借りしており、収容人数約25,000人の施設を使用しています。

このためJ2基準・J1基準の収容人員は一応満たせていますが、自前のホームスタジアムを持たない点が課題です。

かつては花園ラグビー場第2グラウンドを改修(5,000席以上に)する計画もありましたが難航し、現在はJリーグ基準を満たすため既存の大規模競技場を転々と使用する状態です。

J1ライセンス取得のためには、安定して使用できるJ1規格スタジアムの確保や練習環境の整備が必要でしょう。また大阪というサッカー激戦区で集客・スポンサー獲得を伸ばすことも重要です。

クラブは将来的に専用スタジアム建設の構想も持っていますが、まずはJ2定着と経営基盤強化が先決です。

2023年度には初めてJ2クラブライセンスを取得し、今後は「大阪発J1」を目指してインフラ整備とチーム強化に取り組む段階と言えます。

奈良クラブ (J3)

奈良県初のJリーグクラブ。ホームスタジアムは奈良市のロートフィールド奈良(鴻ノ池陸上競技場)で、トラック付きの多目的スタジアムです。

メインスタンドの座席数は5,600席で​、バックやゴール裏は芝生席となっており収容人員は公称15,000人以上ですが、J1基準で必要な「全席椅子で15,000人」には達していません。

現在クラブはJ2ライセンスを保持していますが、J1ライセンスは未取得です。

課題は明確で、スタジアムの大規模改修または新設が必要となります。

奈良県内では将来的に15,000席規模の球技専用スタジアム建設計画も取り沙汰されていますが、2025年時点で具体的な建設地や時期は未定の状況です。

またクラブハウスや練習場の整備も含め、トップチームを取り巻く環境をJ1水準に引き上げるには時間と支援が必要でしょう。

奈良クラブは市民や企業からの寄付・支援を積極的に募っており、クラブハウス建設のクラウドファンディングなど地域密着の動きも見られます。

まずはJ2昇格を果たし、その勢いで行政と協力しながら「古都奈良にJ1規格スタジアムを」というビジョンを現実にしていくことが求められます。

ガイナーレ鳥取 (J3)

日本で最も人口の少ない鳥取県を本拠地とするクラブです。

ホームのAxisバードスタジアム(鳥取市)は収容人員16,033人(うち座席約10,000)で、一部芝生席を含むものの規模的にはJ1に近いキャパシティを持ちます。

実際2011~2013年にはJ2を戦っており、施設面では屋根の未整備などB等級基準の課題を除けば大きな不備はありません​。

それでもJ1ライセンスを持たない理由は、経営力と成績にあります。ガイナーレ鳥取は経営規模が小さく財務的に脆弱で、2013年には成績不振も重なりJ2ライセンスが停止条件付きとなった過去があります(結果的にJ3降格)。

その後クラブは経費削減や地域事業(芝生事業など)で収入源を増やす工夫をしてきましたが、依然として予算規模はJリーグ全体でも下位です。

GMを務めた元日本代表・岡野雅行氏が資金集めのため魚を売るイベントを行った逸話もあり​、財政難を創意工夫で乗り越えているクラブと言えます。

J1ライセンス取得には、最低でもJ2で安定して戦える収入・組織体制が必要です。

幸いスタジアム収容力は潜在的にクリアしているため、スポンサー拡充や観客増加により「J1でも戦えるだけの経営基盤」を築くことが課題となります。

FC今治 (J2)

愛媛県今治市のクラブで、元日本代表監督の岡田武史氏がオーナーとして注目を集めました。

地域主導でスタジアムや施設整備を進めており、2022年についに新スタジアム「里山スタジアム」(命称:アシックス・里山スタジアム)を完成させました。現在は収容約5,000席ですが、将来的に15,000席まで拡張可能な設計となっており​、段階的にJ1基準に到達させる計画です。

旧スタジアム(ありがとうサービス.夢スタジアム)も5,000人規模で拡張余地がなく、この新スタ建設がJ1ライセンス取得への大きな布石となりました​。

クラブライセンスは現在J2までですが、施設面ではすでにJ1基準を見据えた投資がなされています。

またFC今治は「経営の今治モデル」として民設民営の運営スキームを活用し、行政に頼らず自前で資金調達・施設運営する独自路線を歩んでいます。

J1ライセンス取得にはさらにスポンサー収入やチーム力の向上が必要ですが、インフラ面の準備は着々と進んでおり、将来的には「四国からJ1へ」の夢も現実味を帯びてきています。

テゲバジャーロ宮崎 (J3)

宮崎県のクラブ。ホームスタジアムは新富町の「いちご宮崎新富サッカー場」(旧称:ユニリーバスタジアム新富)で、収容人員5,354人とコンパクトなサッカー専用スタジアムです。

テゲバジャーロ宮崎は2021年にJ3参入後、早期のJ2昇格を目指していましたが、スタジアム要件が障壁となりました。

2022年にはスタジアム基準を満たせる見通しが立たずJ2ライセンス申請を断念したほどです。

しかし地元自治体やスポンサーと協議を続け、例外規定を申請してJ2ライセンスを取得(2024シーズン向け)することに成功しました。

これは将来的なスタジアム拡張や改修を約束することで認められたものです。

実際、新富町のスタジアムは将来1万人規模に拡張する構想があり、現在も増設工事などが検討されています​。

クラブとしてはまずJ2昇格を果たし、観客数を増やしながら段階的に施設を整備していく方針です。

2023年は成績が振るわずJ3残留となりましたが、J2ライセンスが下りたことでクラブのモチベーションは維持されています。

ただJ1ライセンス取得にはさらに倍以上の規模のスタジアム(15,000人)が必要で、県や周辺自治体を巻き込んだ支援が不可欠でしょう。

幸い宮崎県は「スポーツランドみやざき」としてスポーツ施設整備に力を入れている土壌があり、将来的に県都・宮崎市でのスタジアム構想などが出てくれば状況も変わるかもしれません。

まとめ

以上見てきたように、2025年時点でJ1ライセンスを持たないクラブは主にJ3所属の地方クラブが占めており、その理由は大きく分けて「スタジアム要件未充足」と「経営・成績面の不足」の2点に集約されます。

特にスタジアムについては収容人数15,000席以上というハードルが高く、地方クラブでは自治体の協力なしに達成するのは困難です​。

実際、今回挙げたクラブの多くが自治体と協力した新スタジアム計画や改修計画を進めています。例外規定を活用してライセンス交付を受けているクラブ(八戸、相模原、沼津、奈良、今治、宮崎など)も多く、猶予期間内に基準充足を目指す猶予付きライセンスと言えます。

また、財政力や観客動員もJ1ライセンス取得の重要ポイントです。3期連続赤字や債務超過は本来ライセンス交付の致命傷になり得ますが(コロナ禍特例で一時停止されていた基準)​、長野のように経営難から立て直し中のクラブもあります。

観客数について明確な基準はありませんが、J1クラブの平均観客数は数万人規模になるため、各クラブとも地域密着でファン拡大に努めています。例えば沼津の照明改善ではサポーターのクラウドファンディングが成功し、今治の新スタでは地元企業からの寄付と民間資金で建設費を賄うなど、ファン・地域の協力が不可欠となっています。

最後に、J1ライセンスはゴールではなく通過点であることも強調しておきます。

ライセンスを取得したからといってすぐJ1昇格できるわけではなく、ピッチ上で結果を出す必要があります。しかしライセンスが無ければ昇格の土俵にも立てません。

逆に言えば、今回取り上げたクラブがライセンス取得に向けて課題を克服していけば、近い将来J1昇格レースに名乗りを上げてくる可能性があります。

「J1ライセンスがないチーム」がゼロになる日、つまり全てのクラブがトップリーグを目指せる環境が整うことが理想と言えるでしょう。その日を迎えるためにも、各クラブと地域の取り組みにこれからも注目が集まります。