オフサイドとは?一言で言うと「ズル」を防ぐルール
サッカー観戦を始めたばかりの方が最初に「難しい…」と感じるルールの筆頭が、このオフサイドではないでしょうか。試合中に笛が鳴り、副審が旗を上げているのに「なんで?今のどこがファールなの?」と首をかしげた経験がある方も多いはずです。
でも安心してください。オフサイドの本質はたった一言で表せます。それは「ゴール前での待ち伏せ禁止ルール」です。
たとえばオフサイドというルールが存在しなかったとしましょう。そうなると、攻撃側のチームは1人の選手をずっと相手ゴール前に張り付かせておき、ボールを奪った瞬間に縦に長いパスを送るだけで簡単にゴールが狙えます。守備側はたまったものではありませんし、試合はロングボールの蹴り合いになってしまいます。サッカーがパスをつなぐ美しいスポーツであり続けられるのは、このオフサイドというルールが「待ち伏せ」という”ズル”を禁止しているおかげなのです。
サッカーのルールは全部で17条しかありません。そのなかで最も解釈が難しいとされているのがこのオフサイドです。プロの審判でも判断に迷うシーンが生まれるほどですが、基本の仕組みさえ理解してしまえば試合観戦がグッと楽しくなります。この記事では初心者の方でも迷わず理解できるよう、順を追って丁寧に説明していきます。
オフサイドの基本ルールをイラストでわかりやすく解説

オフサイドを正確に理解するためには、まず「オフサイドポジション」という概念を押さえておく必要があります。オフサイドポジションとは、反則が起きる可能性がある”危険な位置”のことです。ただし、オフサイドポジションにいるだけでは反則にはなりません。そこからプレーに関与したときに初めて反則(オフサイド)となります。
オフサイドポジションの3つの条件
オフサイドポジションになるのは、以下の3つをすべて満たしたときです(サッカー競技規則 第11条)。
- 相手チームのフィールド内にいる(つまり相手の陣地に入っている)
- ボールよりも相手ゴールラインに近い位置にいる
- 相手チームの後ろから2人目の選手よりも、相手ゴールラインに近い位置にいる
3番目の条件がやや難しく感じるかもしれませんが、実は「相手の後ろから2人目の選手」というのはほとんどの場合、ゴールキーパー以外の最後尾にいるディフェンダーのことです。ゴールキーパーは常にゴール前にいるため「1人目」としてカウントされ、その次に後ろにいる選手が「2人目」になります。
つまりシンプルに言い直すと、「相手の最終ラインより前にいるとオフサイドポジション」と覚えておけばほぼ問題ありません。この最終ラインのことを「オフサイドライン」と呼びます。
よくある誤解:「ボールより前にいたらオフサイド」はウソ
初心者の方がよく誤解するのが、「ボールより前にいたらオフサイドになる」という考え方です。これは正しくありません。オフサイドの基準はあくまで相手の後ろから2人目の選手(オフサイドライン)との位置関係です。ボールがどこにあるかではなく、ディフェンスラインがどこにあるかを見るのがポイントです。
判定の基準は「パスが出た瞬間」
もうひとつ重要なのがタイミングです。オフサイドかどうかは、パスが出された瞬間の立ち位置で判断します。パスを受ける瞬間ではありません。
- パスが出た時点でオフサイドポジションにいた → オフサイド
- パスが出た後にオフサイドポジションに走り込んだ → セーフ
「蹴られた瞬間にどこにいたか」がすべての判断材料になります。この点はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の普及によって、現代のサッカーではより厳密に計測されるようになりました。
オフサイドにならないための3つの条件

ここまでの内容をふまえて、オフサイドを取られないために攻撃側の選手が意識すべきことを整理しましょう。
① 相手のオフサイドラインより後ろで受ける
最もシンプルな回避方法です。相手の最終ラインより後ろの位置でパスを受ければ、オフサイドにはなりません。オフサイドラインは試合の流れのなかで常に動いているため、攻撃側の選手はそのラインを常に意識しながら動き続ける必要があります。
② パスが出てから走り込む
パスが出た後にオフサイドポジションへ走り込んでも反則にはなりません。つまり、パスが出る瞬間に相手の最終ラインより後ろにいて、蹴られた後に前へ走り出すというタイミングを作れれば合法的に抜け出すことができます。これは現代サッカーで多用される「裏への抜け出し」の基本的な動きです。
③ 腕・手の部分は判定に含まれない
細かいルールですが、覚えておくと役立つ知識があります。オフサイドの位置判定において、ゴールキーパーを含むすべての選手の手や腕は判定に含まれません。腕の範囲の上限は「脇の下の最も奥の位置まで」とされています。つまり、肩や胴体、足などの体の部位が基準線となります。わずかな差でオフサイドを争う場面では、この細かいルールが結果を左右することがあります。
実際の試合でよくあるオフサイドの場面を例で紹介
基本ルールを理解したところで、実際の試合でよく見られるオフサイドのシーンをいくつか紹介します。これを知っておくと、試合観戦中に「あ、これはオフサイドだな」とすぐに判断できるようになります。
【場面①】スルーパスへの抜け出し
攻撃側の選手が相手ディフェンスラインの裏へ走り、味方からのスルーパスに飛び出すシーンは試合でよく見られます。このとき、パスが出た瞬間に相手の最終ラインより前にいた場合はオフサイドになります。逆に、ギリギリ後ろにいてパスが出た後に走り込んだ場合はセーフです。この判定はとても際どく、副審が旗を持ちながら必死に確認しているのはこのためです。
【場面②】こぼれ球・ゴールポストに当たって跳ね返ったボール
意外と知られていないのがこのケースです。味方がシュートを打った際、そのシュートを打った時点でオフサイドポジションにいた選手がいたとします。そのシュートが相手GKに弾かれたり、ゴールポストやクロスバーに当たって跳ね返ってきたボールを押し込んでも、オフサイドと判定されます。「シュートを打った時点の位置」で判定されるため、こぼれ球のタイミングではなく、最初のシュートが出た瞬間の位置が基準になります。
【場面③】戻りオフサイド
「戻りオフサイド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。パスが出た瞬間にオフサイドポジションにいた選手が、ボールを受ける前に一度オフサイドポジションではない場所まで戻ったとしても、反則は消えません。判断の基準はパスが出た瞬間の位置だけであり、その後どこに移動したかは関係ないのです。これも”待ち伏せ行為”と判断されます。
【場面④】ボールに触れなくてもオフサイドになるケース
「ボールに触っていないのにオフサイドを取られた」という場面を見たことがある方もいるかもしれません。実はオフサイドは、ボールに直接触れなくても反則になることがあります。オフサイドポジションにいる選手が相手選手の視界を妨げたり、相手の動きを邪魔するなど、プレーに関わることで相手に不利益を与えた場合は反則となります。ただし、この判断には明確な数値基準がないため、審判によって判定の度合いが異なるケースもあります。
【場面⑤】オフサイドトラップ
守備側が意図的にオフサイドルールを利用した戦術が「オフサイドトラップ」です。ディフェンスラインの選手たちが息を合わせて一斉に前へ出ることで、相手の攻撃選手をオフサイドポジションに”置き去り”にします。パスが出る瞬間にディフェンスラインを押し上げ、パスを受けようとしている選手がオフサイドになるように仕掛ける高度な戦術です。うまくハマると守備側にとって非常に有効ですが、タイミングがずれると逆に相手に抜け出されてしまうリスクもある諸刃の剣です。
オフサイドが適用されない例外ケースまとめ
オフサイドには例外もあります。以下のケースではオフサイドポジションにいてもオフサイドの反則にはなりません。知っておくことで「なんであの場面はオフサイドにならなかったの?」という疑問が解消されます。
【例外①】ゴールキック・スローイン・コーナーキックから直接受けた場合
サッカーの競技規則では、以下のいずれかから直接ボールを受けた場合はオフサイドにならないと定められています。
- ゴールキック:GKがゴールエリアからボールを蹴り出すプレー
- スローイン:ラインを割ったボールを手で投げ入れるプレー
- コーナーキック:ゴールラインを割ったボールをコーナーから蹴り出すプレー
これらのセットプレーから直接ボールが渡る場面では、オフサイドポジションにいても反則にはなりません。
【例外②】自陣(ハーフウェーライン内側)でボールを受けた場合
オフサイドの条件のひとつに「相手チームのフィールド内にいること」があります。つまり、ハーフウェーラインより自陣側にいる場合はオフサイドポジションにはなりません。相手陣内に入っていないとオフサイドは成立しないのです。
【例外③】ボールに関与せず、相手に影響を与えていない場合
オフサイドポジションにいたとしても、ボールに関与せず、ただその場に立っているだけで相手に何ら影響を与えていない場合は反則にはなりません。問題になるのはあくまで「プレーに関わることで相手に不利益を与えたとき」です。
【例外④】守備側の選手が意図的に触れたボールを受けた場合
相手(守備側)の選手がクリアミスやパスカット、意図的なパスなどでボールに触れた場合、そのボールをオフサイドポジションにいる攻撃側の選手が受けてもオフサイドにはなりません。ただし、キーパーがシュートを弾いたケースや、守備側がシュートを防ごうとして触ったボールはこの例外の対象外となります。守備側の”意図”が判定に影響する複雑な部分です。
オフサイドの反則になった場合はどうなる?

最後に、オフサイドが取られたときの処置について確認しておきましょう。オフサイドの反則になった場合、相手チームにボールが渡り、オフサイドを取られた選手がいた位置から間接フリーキックが与えられます。
間接フリーキックとは、蹴ったボールが直接ゴールに入っても得点にならないフリーキックのことです。必ず他の選手に触れてからゴールに入れなければなりません。直接ゴールを狙える直接フリーキックとは異なり、攻撃側にとっては得点チャンスがやや制限されます。
まとめ:オフサイドは「待ち伏せ禁止」と覚えておこう

ここまでの内容を振り返ってみましょう。
- オフサイドは「ゴール前での待ち伏せ禁止ルール」
- オフサイドポジションとは、相手陣内で、ボールよりも前に、相手の後ろから2人目の選手よりも前にいる位置
- 判定の基準は「パスが出た瞬間」の位置
- ボールに触れなくても、プレーに関与して相手に不利益を与えればオフサイド
- ゴールキック・スローイン・コーナーキックから直接受けた場合などは例外
- 反則になると相手に間接フリーキックが与えられる
最初は難しく感じるオフサイドですが、「待ち伏せしていた人がプレーに絡んだらアウト」という本質を軸に考えると、多くの場面で自然と判断できるようになります。試合観戦のときにぜひこの記事を思い出しながら、ピッチの上で繰り広げられる攻防を楽しんでみてください。オフサイドの駆け引きがわかってくると、サッカー観戦はもう一段階深く楽しめるようになりますよ。
フットボール戦士 
