- サッカーのVARは、1試合に何回まで使えるの?
- 野球のリクエストのように、監督がビデオ判定を求めることはできるの?
- JリーグやW杯では、実際にどれくらいVARが入っているの?
サッカーのVARには、1試合に何回までという回数の上限はありません。VARは得点やPKなどの場面を毎回自動でチェックしていて、主審に映像の確認をすすめる回数も決まっていないからです。一方で、監督がビデオ判定を請求できるFIFAの試験的な仕組み「フットボール・ビデオ・サポート(FVS)」は、1チーム1試合2回までと決まっています。この記事では、JFAが発行する「サッカー競技規則2026/27」をもとに、VARが入る場面、FVSとの違い、Jリーグと2026年W杯での使われ方までを整理します。
VARに回数の上限はない。J1では3〜5試合に1回
競技規則のVARの実施手順には、レビューの回数を制限する決まりがありません。書かれているのは「どの場面なら助けられるか」と「はっきりとした、明白な間違いのときだけ」という基準です。レビューにかける時間にも制限はなく、速さより正確さを大事にすると定められています。
VARの仕事は2段階に分かれます。1つは、得点やPKなどの場面を映像で確かめる「チェック」です。もう1つは、間違いの可能性があるときに主審が判定を見直す「レビュー」です。チェックは毎試合何度も行われますが、間違いがなければ主審には何も伝えません。これを「サイレントチェック」といいます。
JFA審判委員会によると、J1で初めてフルシーズンVARを使った2021年は、380試合でチェックが1,562回、レビューは78回でした。1試合あたり4.11回チェックして、レビューは4.87試合に1回です。78回のうち69回で判定が変わり、9回は元の判定のままでした。2024年のJ1はレビューが119回で、約3.2試合に1回でした。
上限がないのに回数が少ないのは、VARが入る基準が厳しいからです。競技規則は、主審の判定を変えるのは「はっきりとした、明白な間違い」とわかった場合だけと定めています。見方が分かれる程度の判定なら、VARは主審の判定をそのまま認めます。
VARが確認するのは4つの場面。2026/27で対象が広がった
VARが主審を助けられるのは、試合の結果を左右する4つの場面だけです。得点かどうか、PKかどうか、退場かどうか、そして警告・退場の人間違いです。スローインの向きや、ふつうのファウルの判定には入りません。
得点の場面では、ゴールまでの攻撃の流れも確認します。オフサイドやハンドがなかったか、ボールが外に出ていなかったかを見ます。オフサイドを体のどこで判定するかは、次の記事で詳しく解説しています。
2026/27の競技規則では、確認できる範囲が広がりました。2026年2月28日のIFAB年次総会で決まった変更です。これまで対象外だった「明らかに間違った2枚目の警告による退場」を、VARが確認できるようになりました。反則したチームではなく、相手チームの選手にカードを出してしまった人間違いも対象になりました。
さらに、明らかに間違って与えられたコーナーキックも、大会が選べば確認できます。ただし、再開を遅らせずにすぐ直せる場合だけです。Jリーグは2026/27でこれを採用し、ゴールキックの判定は対象外としています。
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上は競技規則を決めるIFAB(国際サッカー評議会)公式のInstagramで、2026年7月31日に、新しいシーズンの新しいルールを紹介した投稿です。
監督が請求できる「FVS」は1試合2回まで
競技規則には「VARはすべての状況を機械的にチェックするため、監督や競技者がチェックやレビューを要求することはできない」と書かれています。ピッチ上で選手がテレビの形を手で描いてレビューを求めすぎると、警告の対象です。つまり、VARには野球のリクエストのような「請求権」がそもそもありません。
これとは別に、FIFAはFVSという仕組みを試しています。VARを入れる人手や予算、カメラが足りない大会のために作られた、ビデオ判定の簡易版です。映像を見続ける専門の審判員はおらず、監督の請求があったときだけ、主審がピッチ脇のモニターで映像を確かめます。
FIFAの説明では、請求できるのは監督(いない場合はベンチの責任者)だけです。事象の直後に指を空中でくるくる回し、第4の審判員に専用のカードを渡します。請求は1チーム1試合2回までで、映像を見て判定が変わった場合は回数が減りません。確認できる場面はVARとほぼ同じで、得点、PK、一発退場、人間違いです。
FVSはまだ競技規則の本文には入っておらず、IFABが認めた試験として行われています。サッカーでは2024年のU-20女子W杯(コロンビア)などで使われ、2025年のIFAB年次総会でFIFA以外の大会にも試験が広がりました。2025年8月には、イタリア3部のセリエCやスペイン女子1部のリーガFなどが、リーグ戦で本格的に使い始めました。
U-20W杯では日本がFVSでPKを勝ち取った
FIFA公式チャンネル「Chile vs Japan Highlights」(2025年10月1日公開・英語)。FVSが使われたU-20W杯のチリ戦のハイライトです
FVSは、日本の試合でも使われています。2025年9月30日(現地時間)、チリで開かれたU-20W杯で、U-20日本代表は開催国チリと対戦しました。後半、MF齋藤俊輔選手がペナルティーエリア内で倒された場面は、最初はノーファウルの判定でした。
齋藤選手がベンチにFVSを使うよう合図し、日本の請求で主審が映像を確認すると、判定はPKに変わりました。一方で、前半に日本がPKを得た場面では、チリがFVSを使いましたが、判定は変わりませんでした。日本はこの試合に2-0で勝っています。
JFAの扇谷健司審判委員長は、2025年10月1日のレフェリーブリーフィングでFVSに触れました。JFAとしてはまだ実施したことがないと説明したうえで、「リーグとも今後どうするかは考えないといけないと思う」と話しています。2026年9月25日時点で、Jリーグや日本国内の大会がFVSを使うという発表は見つかりませんでした。
2026年W杯とJリーグ2026/27はVAR。J2・J3は?
Jリーグ公式チャンネル「Jリーグ審判レポート(シンレポ)」(2026年8月28日公開)。2026/27の新ルールが適用された場面を、JFAの審判マネジャーが解説しています
2026年のW杯(アメリカ・カナダ・メキシコ)では、VARが使われました。IFABは2026/27の新しいVARの対象を、W杯から実施すると発表しています。FIFAのコッリーナ審判委員長は大会中のインタビューで、得点のたびにVARが攻撃の流れをチェックしていると説明しました。FIFAはFVSを主にユース年代の世界大会で試すとしていて、W杯本大会で使うという発表は見つかりませんでした。
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上はFIFA公式のInstagramで、2026年6月10日に、2026年W杯から使われる新しい競技規則を紹介した投稿です。
| 大会(2026年9月時点) | ビデオ判定 | 補足 |
|---|---|---|
| 2026年W杯 | VAR | 新しい対象を大会から実施 |
| J1リーグ 2026/27 | VAR(全380試合) | コーナーキックの確認も採用 |
| J2・J3リーグ 2026/27 | 記載なし | 大会概要にVARの項目がない |
| U-20W杯など | FVS(試験) | 監督が1試合2回まで請求 |
※Jリーグ公式サイトの各大会概要、IFAB・FIFAの発表をもとに作成。
Jリーグ公式サイトの大会概要では、J1の2026/27シーズンは全380試合でVARを導入すると書かれています。一方、J2とJ3の大会概要にはVARの項目がありません。2022年9月の発表でも、2023〜2025シーズンのVARはJ1のリーグ戦、スーパーカップ、ルヴァンカップのノックアウトステージ、J1参入プレーオフ決定戦で使う予定とされていました。
FVSは、VARより少ない人数とカメラで運用できる仕組みです。報道では、日本ならJ2やJ3が導入の選択肢になりうると紹介されています。ただし、2026年9月25日時点で導入は決まっていません。
データで見る:VARでW杯のPKは増えた?
VARが入るとPKが増える、とよく言われます。フットボール戦士の集計では(W杯本大会の全ゴールの記録から)、PKで決まったゴールは1試合あたり、1990〜2014年の0.22点から、VARが初めて使われた2018年以降は0.24点になりました。
ただ、大会ごとに見ると様子が違います。2018年大会は22点、1試合あたり0.34点で、1990年以降で一番多い大会でした。ところが2022年は0.27点、出場国が48に増えて104試合になった2026年は16点で0.15点でした。「VARでPKが増えた」と言えるのは2018年大会が中心で、その後も増え続けているわけではありません。
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上はスポーツメディアBleacher Reportのサッカー公式(brfootball)のInstagramで、2026年6月23日(日本時間)に、メッシがW杯本大会で3本目のPK失敗となり、本大会で最も多くPKを外した選手になったことを伝えた投稿です。
よくある質問
A. 回数の上限はありません。VARは得点・PK・退場・人間違いの場面を毎回チェックし、明らかな間違いがあれば何度でも主審にレビューをすすめられます。J1では、レビューが入るのは3〜5試合に1回ほどです。
A. できません。競技規則で、監督や競技者はチェックやレビューを要求できないと決められています。監督が請求できるのは、FIFAが試験中のFVSを使う大会だけで、回数は1チーム1試合2回までです。
A. 請求の回数を1回使ったことになります。判定が変わった場合は、回数は減りません。FIFAの説明では、FVSはカメラの台数が少ないため、映像で間違いがはっきりしないときは元の判定のままになります。
A. JFA審判委員会によると、2023年のJ1では、VARだけで判定を決めるレビューは1回あたり118.2秒でした。止まった時間はアディショナルタイムに加えられます。
A. 2026年9月25日時点で、Jリーグ公式サイトのJ2・J3の大会概要にVARの項目はありません。VARの導入が書かれているのはJ1の全380試合です。
まとめ:VARは回数ではなく「場面」と「基準」で決まる
- VARのチェックとレビューに、1試合何回までという上限はない
- VARが入るのは、得点・PK・退場・人間違いの4つの場面で、明らかな間違いのときだけ
- 2026/27から、間違った2枚目の警告とコーナーキック(大会が選べる)も確認できる
- 監督が請求できるFVSは1チーム1試合2回までで、判定が変われば回数は減らない
- J1は2026/27も全380試合でVAR。J2・J3の大会概要にVARの項目はない
VARに回数の上限がないのは、審判が自分からすべての場面を確かめる仕組みだからです。上限があるのは、監督が請求するFVSのほうです。試合でVARのチェックが入ったときは、4つの場面のどれにあたるのかを考えながら見てみてください。
※この記事の情報は2026年9月25日時点のものです。出典:JFA「サッカー競技規則2026/27」(VARの実施手順、競技規則の変更)、IFAB公式サイト(Laws of the Game 2025/26・2026/27のVAR protocol、2026年2月28日の年次総会の発表)、FIFA公式サイト(2024年5月18日・2025年10月1日・2026年7月9日の記事)、Jリーグ公式サイト(J1・J2・J3大会概要、2022年9月27日・2026年7月23日の発表)、ゲキサカ(2021年12月10日・2023年12月8日)、フットボールゾーン(2024年12月20日・2025年10月2日)、FIFA・Jリーグ公式YouTubeチャンネル、フットボール戦士「数字で見るサッカーのルール」。
フットボール戦士 
