東京ヴェルディとFC東京のホームスタジアムはどうなる?味スタ共用の実態と課題とは

「東京ヴェルディとFC東京が同じスタジアムを使っているって本当?」「日程はどう調整しているの?」「いつか新スタジアムができるの?」——東京ダービーの復活で再び注目を集めるこの問題は、サッカーファンの間で絶えず語られるテーマです。この記事では、両クラブが共用する味の素スタジアムの現状・共用による課題・東京ダービー開催時の特殊なルール・そして新スタジアム構想の最新状況まで、日本のサッカー界が抱えるユニークな「首都のスタジアム問題」を徹底解説します。


現状整理——東京ヴェルディとFC東京は「同じスタジアム」をホームにしている

まず現状を整理します。東京ヴェルディとFC東京は、どちらも東京都調布市に所在する「味の素スタジアム(正式名称:東京スタジアム)」をホームスタジアムとして使用しています。J1リーグで同一スタジアムを2クラブが本拠地として共用しているのは、Jリーグ全体を見ても非常に珍しいケースです。

味の素スタジアム基本情報

正式名称 東京スタジアム(ネーミングライツにより「味の素スタジアム」として呼称)
所在地 東京都調布市西町376番地3
収容人数 約4万8,000人
施設所有者 東京都(運営:東京都・京王電鉄等が出資する第三セクターの株式会社東京スタジアム)
ホームクラブ FC東京(1999年〜)・東京ヴェルディ(2001年〜)の2クラブ
命名権契約 2024年3月から2029年2月まで、味の素株式会社との契約を更新(5期目・10億5,000万円)

味の素スタジアムはサッカーだけでなく、ラグビーやコンサートにも対応できる多目的施設です。こけら落としは2001年3月10日の東京ダービー第1戦(ホームゲームの開催権は両クラブ社長によるくじ引きで決定)というドラマチックな幕開けでした。以来、東京都内で唯一ともいえるJリーグ基準を満たす大型スタジアムとして、25年以上にわたって東京のサッカーを支えてきました。


「2クラブが同じスタジアムを使う」——実際の日程調整はどうなっているのか

最も多くの人が疑問に思うのが「2クラブが同じスタジアムを使うとき、日程はどう調整しているのか」という点です。

味スタ共用の仕組み——日程調整の基本ルール

Jリーグが調整 JリーグはFC東京・東京ヴェルディ双方のホームゲーム日程を事前に確認し、同一スタジアムで日程が重複しないように全体スケジュールを編成する
原則として同日開催はない FC東京と東京ヴェルディのホームゲームが同じ日に味スタで重複することは原則として避けられる。どちらかがアウェイゲームまたは別会場(駒沢陸上競技場・味の素フィールド西が丘など)に振り分けられる
東京ヴェルディのサブ会場 東京ヴェルディは味スタに加えて、駒沢陸上競技場・味の素フィールド西が丘もホームゲーム会場として使用している。日程の混雑時はこれらのサブ会場で試合を開催することで調整が図られる
スタジアムの「色」の問題 スタジアム周辺の飛田給駅周辺・スタジアム外壁などのカラーリングや広告はFC東京の青赤が多い。東京ヴェルディのホームゲーム開催時にサポーターから「アウェー感がある」という声が上がることも

Jリーグのシーズンは2月〜12月に行われ、1チームあたりリーグ戦だけで17試合のホームゲームがあります(2024年は20クラブでの1ステージ制)。FC東京と東京ヴェルディの合計では年間34試合ものホームゲームが同一スタジアムで開催されることになり、ルヴァンカップ・天皇杯・女子チームの試合も含めると、スタジアムの利用は非常に密になります。


東京ダービー開催時はどうなるのか——同じホームスタジアムでの直接対決の特殊性

FC東京と東京ヴェルディがリーグ戦で対戦する「東京ダービー」は、両クラブにとって特別な意味を持つ試合です。2024年に16年ぶりにJ1での東京ダービーが復活し、この問題は改めて注目を集めました。

東京ダービーにおけるスタジアム使用の特殊ルール

ホームとアウェイの決め方 通常通り、リーグの日程でどちらが「ホーム」かが決まる。両クラブのホームが同じスタジアムでも、その試合の主催クラブが「ホーム」となる
スタジアムの演出 試合を主催するホームクラブのカラーでスタジアムが装飾される。FC東京がホームなら青赤、東京ヴェルディがホームなら緑を中心とした演出に切り替えられる
サポーターの席割り アウェイチームのサポーターは通常通りアウェイ席(ゴール裏の一角)に案内される。「同じホームスタジアムでアウェイ扱い」という特殊な状況が生まれる
2024年の状況 2024年シーズンは東京ヴェルディが16年ぶりにJ1昇格し東京ダービーが復活。FC町田ゼルビアもJ1初昇格し、史上初めて東京の3クラブがJ1に揃った

「同じスタジアムをホームとする2クラブが対戦する」という状況は世界的にも珍しくありません。イタリアではACミランとインテル・ミラノがサン・シーロ(ジュゼッペ・メアッツァ)を共用し、スペインではかつて複数のクラブが同一施設を使った例もあります。ただし欧州の共用例は多くが「都市の象徴的スタジアム」という文脈であり、両クラブが対等な使用権を主張しやすい状況にあります。味スタの場合、FC東京の色が強いという点でやや非対称な状況があります。


東京ヴェルディ視点——「アウェー感があるホーム」という構造的課題

東京ヴェルディが味スタでホームゲームを行う際、長年サポーターや関係者から指摘されてきた問題があります。

東京ヴェルディが直面する課題

スタジアム周辺の「FC東京色」——飛田給駅周辺の広告・看板・売店グッズはFC東京の青赤が主体。ヴェルディがホームでも「FC東京のスタジアム感」が強い
集客規模の格差——FC東京のホームゲームは平均1万〜2万人超の観客を集める一方、東京ヴェルディ(J2時代)の味スタでは数千人規模に留まることもあった
独自のスタジアム文化を作りにくい——自前のスタジアムでないため、恒常的なデコレーション・固定のフードテナント設置などが難しく、「ヴェルディのスタジアム感」を演出しにくい
試合日程の制約——スタジアムを共用するため、希望の日程で使用できない場合がある。特にシーズン中盤の重要な時期に別会場への振り分けが発生する可能性がある

東京ヴェルディの対応・工夫

試合日の「ヴェルディ化」——ホームゲーム開催時は緑の演出・フードヴィレッジ・グッズ販売でスタジアムをヴェルディカラーに染める努力を続けている
複数会場の活用——駒沢陸上競技場・味の素フィールド西が丘をサブ会場として活用し、日程の柔軟性を確保
J1復帰後の集客増——2024年のJ1復帰後、東京ダービー等を中心に集客が大幅に増加。スタジアムが「ヴェルディのホーム」として機能する場面が増えた
独自の観戦体験づくり——入場待機列の抽選運用など、サポーター体験の質を高める独自の施策を導入。「ヴェルディならではの観戦スタイル」を模索している

なぜ東京に2クラブが共存できているのか——歴史的背景を理解する

「そもそもなぜ同じスタジアムを2クラブが共用することになったのか」——この疑問に答えるには、FC東京と東京ヴェルディ(旧ヴェルディ川崎)の歴史的経緯を理解する必要があります。

「2クラブが同じスタジアムを使うことになった」経緯

1993年〜 Jリーグ発足時、東京都内にJリーグ基準を満たすスタジアムがなく、読売クラブ(後のヴェルディ川崎)は神奈川県川崎市に移転。東京ガスはJ参入を見送る
1999年 FC東京がJ2に参入。東京都が「東京スタジアム(現・味スタ)」建設を決定したことが大きな後押しになった
2001年 東京スタジアム完成と同時に、ヴェルディ川崎が東京に本拠地を移転し「東京ヴェルディ1969」に改称。FC東京と同スタジアムを使用する形になった
2008年〜2023年 東京ヴェルディがJ2に降格し、長期間J2での戦いが続く。同期間中、J1での東京ダービーは開催されなかった
2024年〜 東京ヴェルディが16年ぶりにJ1昇格。FC町田ゼルビアも初のJ1昇格を果たし、東京の3クラブが同時にJ1に在籍する史上初めての状況が実現。味スタの「2クラブ共用問題」が再び注目を集める

「東京という日本最大の都市にJリーグクラブが2つあること」自体は世界的に見ても自然な状況です。ロンドン・マドリード・ミラノ・バルセロナなど、世界の主要都市には複数のトップリーグクラブが存在します。ただし、それらの都市は複数のスタジアムを持つことが多い。東京の問題は「大容量のJリーグ基準スタジアムが事実上1か所しかない」という施設インフラの問題にあります。


新スタジアム構想はどうなっているのか——現状で判明していること

「新スタジアムができれば共用問題が解決する」——この観点から、東京圏における新スタジアム構想のうち、現時点で確認できる情報を整理します。

築地市場跡地の大型施設計画(2032年度頃の完成を目標)

築地市場跡地の再開発計画(2024年4月に基本契約締結)

事業者グループ 三井不動産を代表企業とする「ONE PARK×ONE TOWN」(計11社)。読売新聞・朝日新聞・トヨタ自動車・鹿島建設・清水建設など
主要施設 約5万人収容の屋内全天候型マルチスタジアム、シアターホール等の複合施設
完成目標時期 第一次工期の主要建物完成は2032年度頃を目標としている
課題 多目的施設のため年間通じてサッカーだけで使用することは難しい。コンサート・バスケ・野球・展示会など多目的利用が前提であり、サッカークラブが「ホーム」として使える枠は限定的になる可能性がある

※2024年4月時点の報道・発表内容をもとに作成。実際の開業時期・内容は変わる可能性あり

東京ヴェルディ専用新スタジアムの構想——候補地と課題

東京ヴェルディが自前のスタジアムを持つ構想については、様々な候補地が検討されてきた経緯がありますが、2026年3月時点で公式に決定・着工されたプロジェクトは確認されていません。

東京ヴェルディの新スタジアム候補地として議論されてきた場所(確定情報ではない)

多摩市周辺 多摩市は東京ヴェルディのホームタウンのひとつ。ヴェルディは2011年から多摩市陸上競技場を練習拠点として使用し、自治体との関係は比較的良好。多摩ニュータウンスタジアム構想も一時期話題になったが大きな進展はない
多摩センター(京王プラザホテル多摩跡地) 閉館した京王プラザホテル多摩の跡地を活用する構想。立地の良さや商業施設との複合利用の可能性から注目されているが、所有者の京王電鉄の計画次第

※上記はいずれも公式決定事項ではなく、検討・議論段階の情報。実際の動向は各クラブ・自治体の公式発表でご確認ください


今後のシナリオを考える——味スタ共用問題の行方

確認できる事実をもとに、今後考えられる複数のシナリオを整理します。あくまで現時点での分析であり、実際の展開は各クラブや自治体の動向次第です。

シナリオA

当面は味スタ共用継続

新スタジアムの建設には多大なコストと時間がかかる。代替案が決まらない限り、両クラブが味スタを共用し続けるのが現実的な短中期の姿。Jリーグの日程編成によりスタジアム重複を避けながら運営を続ける

シナリオB

東京ヴェルディが多摩地区に新スタを建設

クラブの財務状況改善・自治体との協力体制が整えば、多摩市周辺を中心に東京ヴェルディ専用の新スタジアム建設が実現する可能性がある。これが最もサポーターが望む「解決策」

シナリオC

国立競技場・築地新施設を活用

2032年頃の完成を目標とする築地の新多目的スタジアムが、サッカーに対応できる場合、Jリーグクラブの試合誘致が現実味を帯びる。ただし年間通じてサッカー専用で使えるかは不透明


Q&A——「東京ヴェルディ FC東京 ホームスタジアム」についてよくある疑問

Q1. 東京ヴェルディとFC東京が同日に両方ホームゲームを開催することはありますか?

A. 基本的にはありません。Jリーグが事前に両クラブの日程を調整し、同日に同一スタジアムで両クラブのホームゲームが重複しないよう配慮しています。もし同日に両クラブがホームゲームを開催する場合、東京ヴェルディが駒沢陸上競技場や味の素フィールド西が丘などの別会場を使用するかたちで対応されます。

Q2. 東京ダービーのとき、アウェイチームのサポーターは入場できますか?

A. はい、入場できます。東京ダービーでは試合を主催するホームクラブのスタジアムで開催されますが、アウェイチームのサポーターはアウェイ席に案内されます。同じスタジアムをホームとする2クラブの試合ですが、ルール上はどちらかがホーム・どちらかがアウェイとして扱われるため、スタジアムの雰囲気はホームクラブのカラーで演出されます。

Q3. 東京ヴェルディはなぜ自前のスタジアムを持てないのですか?

A. 理由は複合的です。まず東京都内の用地確保が困難で費用が膨大になること、クラブの経営規模が専用スタジアムの建設・運営費を負担できる水準に達していなかったこと、自治体からの支援を得にくい状況が続いてきたこと、などが主な要因です。Jリーグの理念である「地域密着」に基づくスタジアム整備は理想ですが、東京という高地価・高コストの環境ではハードルが非常に高い状況が続いています。

Q4. 味スタのネーミングライツ(命名権)の契約はいつまでですか?

A. 2024年3月から2029年2月末までの5年間、10億5,000万円で味の素株式会社との5期目の契約が結ばれています。2003年から数えると2029年まで計26年間の契約期間となります。名称の「味の素スタジアム」は少なくとも2029年2月まで継続します。


まとめ——東京ヴェルディとFC東京のホームスタジアム問題の現在地

この記事のポイントまとめ

現状 東京ヴェルディとFC東京は共に味の素スタジアム(東京スタジアム)をホームとして共用。Jリーグが日程調整し、同日の重複開催を避けている
東京ダービーの場合 主催クラブがホームとなり、相手クラブはアウェイ扱いでスタジアムを使用する。2024年に16年ぶりのJ1東京ダービーが復活
東京ヴェルディの課題 FC東京の色が強いスタジアムでのホームゲームという非対称な状況。独自のスタジアム文化を作りにくい構造的な問題がある
新スタジアムの見通し 築地市場跡地に5万人規模の多目的施設が2032年度頃の完成を目標に計画中。東京ヴェルディ専用スタジアムの具体的な計画は現時点で決定していない
今後の展望 当面は味スタ共用が現実的な状況が続くが、クラブの経営規模拡大・自治体との連携次第で新スタジアム構想が具体化する可能性も

味の素スタジアムをめぐるFC東京と東京ヴェルディの共用問題は、「東京にJリーグ基準の大型スタジアムが事実上1か所しかない」という東京のサッカーインフラの課題を体現しています。Jリーグ各クラブが地域に密着した自前のスタジアムを持つことを理想としながらも、地価の高い東京都市部ではその実現が難しい現実があります。2クラブがどのようにスタジアム問題を解決していくかは、東京のサッカー界全体の発展にも関わる重要なテーマです。今後の動向に引き続き注目したいところです。