南野拓実はなぜリバプールに移籍できたのか?3つの理由

こんな疑問を持つ方へ

  • 南野拓実はなぜリバプールに移籍できたのか知りたい
  • 世界最高峰のクラブで、なぜ出場機会が少なかったのかが気になる
  • リバプールでの2年半を「失敗」と言っていいのか疑問に思っている
  • 2冠達成にどれほど貢献したのかを改めて確認したい
  • その後のモナコ移籍との関連を整理したい

南野拓実がリバプールに移籍したのはなぜなのか。出場機会が少なかったのはなぜなのか。2冠達成に実際どれほど貢献したのか。この記事では「南野拓実 リバプール なぜ」というテーマを軸に、移籍の背景から在籍中の実情、退団後の評価まで、時系列で丁寧に整理しています。

南野拓実がリバプールに移籍したのはなぜか――3つの理由

2020年1月、南野拓実はオーストリア1部のレッドブル・ザルツブルクからイングランドのリバプールFCへ完全移籍しました。移籍金は約725万ポンド(当時のレートで約10億3000万円)。欧州王者かつ世界チャンピオンのクラブへの移籍は、日本サッカー界に大きな衝撃を与えました。ではなぜ、リバプールは南野を選んだのでしょうか。

理由1:CLでのパフォーマンスが「獲得の引き金」になった

直接的なきっかけとなったのは、2019年10月3日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ第2節のリバプール対ザルツブルク戦です。南野は敵地アンフィールドで1ゴール1アシストを記録し、チームをリバプール相手に3-3に持ち込む立役者となりました。この試合後、南野が「チャンピオンズリーグ第2節ベストイレブン」に選出されたことも話題になりました。

英地元紙「リバプール・エコー」は、チームの中心選手のひとりだったアンディ・ロバートソンの「南野は素晴らしい選手」というコメントを引用し、さらに「チームメイトの数名がクロップ監督に南野の獲得を主張した」と報じました。リバプールの選手たちが監督を説得するほど、南野のプレーは強烈な印象を残したのです。

ただし後日明らかになった事実によれば、リバプールはCL戦よりも前からすでに動いていました。南野がセレッソ大阪でプレーしていた2013年から注視しており、クロップ監督自身もドルトムント指揮官時代に南野に注目していたとされています。2019年11月には正式な交渉が開始されており、CL戦がきっかけというよりも「決断を後押しした一戦」という位置づけが正確です。

理由2:ラングニック人脈とザルツブルクとの深いつながり

リバプールがザルツブルクから選手を獲得するのは、南野が初めてではありませんでした。サディオ・マネ、ナビ・ケイタもザルツブルクを経由してリバプールへ移籍した選手です。ザルツブルクのフットボールディレクターとリバプールは良好な関係を築いており、クラブ間のパイプが機能していたことも移籍をスムーズにした要因のひとつです。南野はいわば、ラングニック人脈からリバプールに送り込まれた5人目の選手と評されています。

理由3:経済的・マーケティング的な魅力

南野の移籍を語るうえで見落としがちなのが、クラブ経営上のメリットです。リバプールはちょうどこの時期、スポンサー契約をナイキと締結したばかりでした。ナイキはアジアに約6,000店舗を持つ巨大ブランドであり、日本代表の主力選手がリバプールに加入することはアジア市場でのグッズ販売増加を見込ませる戦略的な意味も持っていました。

また、移籍金の観点でも南野は割安な投資でした。当時725万ポンドというのは、プレミアリーグの基準からすれば極めてリーズナブルな金額です。複数のポジションをこなせるユーティリティ性と、すでに欧州で実績のある実力者を低コストで獲得できるという点で、リバプールにとって非常に合理的な補強でした。

項目 内容
移籍元クラブレッドブル・ザルツブルク(オーストリア1部)
移籍先クラブリバプールFC(イングランド・プレミアリーグ)
移籍形態完全移籍(2020年1月)
移籍金約725万ポンド(約10億3000万円)
背番号18番
当初の契約期間2024年夏まで(4年半)

なぜ出場機会が少なかったのか――5つの壁

移籍後、南野が直面したのは過酷な現実でした。試合に出られない日々が続き、日本のサッカーファンからも「なぜ使われないのか」という声が上がり続けました。その背景には複数の要因が重なっていました。

壁1:サラー・マネ・フィルミーノという「無敵のトリオ」

当時のリバプールのフロント3は、モハメド・サラー(エジプト)、サディオ・マネ(セネガル)、ロベルト・フィルミーノ(ブラジル)という欧州最高峰の顔ぶれでした。サラーはプレミアリーグ得点王を複数回受賞するほどの絶対的な存在。フィルミーノは得点こそ派手ではないものの、前線の守備やリンクマンとしてクロップのシステムに不可欠な「特殊な9番」でした。このトリオを崩せた選手は南野以外にも皆無に近い状態でした。

壁2:コロナ禍による適応期間の喪失

2020年1月に加入した南野は、新型コロナウイルスのパンデミックによってチームへの本格的な馴染みを妨げられました。リバプール現地メディア「リバプール・エコー」も後に「新しい文化に適応しようとしたが、コロナウイルスのパンデミックによってフィットへの期間が中断された」と振り返っています。通常であれば経験できるはずのプレシーズンや練習環境が整わないまま、いきなり本番に臨まなければならない状況に置かれたのです。

壁3:クロップが認めた「フィジカル面でのミスマッチ」

クロップ監督自身も、2021年2月にサウサンプトンへのレンタル移籍を発表した際に出場機会が少なかった理由を率直に説明しています。「理由は様々だ。ディフェンスにおいて我々に十分な高さがなかったことが問題で、出場できないこともあった」と語り、南野の身長面がハイプレスのシステムにおける守備ローテーションで影響したことを認めました。

壁4:ジョタ、ルイス・ディアスの加入でさらに激化した競争

2020-21シーズンにポルトガル代表のディオゴ・ジョタが加入し、2021-22シーズンにはコロンビア代表のルイス・ディアスも途中加入しました。すでに世界トップクラスのフロント3に加え、さらに国際的な実績を持つアタッカーが次々と加わったことで、南野のチーム内序列は2年目以降むしろ下がっていきました。

壁5:「5人交代制」が間に合わなかった

見落とされがちな視点ですが、現地メディアが指摘している点として「5人交代制の導入が彼にとって遅すぎた」という分析があります。プレミアリーグが南野の退団後の2022-23シーズンから選手交代枠を5人に拡大したのですが、これが現役時代に適用されていれば途中出場の機会が増え、得点王争いにも絡めた可能性がありました。制度の変化というチーム外の要因も、南野の出場機会に影響していたのです。

シーズン 主な在籍先 PL出場 主な出来事
2019-20 リバプール 15試合(途中加入) プレミアリーグ優勝。PL初ゴール含む
2020-21前半 リバプール 9試合 出場機会が減少し、2月にサウサンプトンへローン
2020-21後半 サウサンプトン(ローン) 10試合2得点 移籍市場最終日に電撃ローン。デビュー戦でゴール
2021-22 リバプール(復帰) 少数(途中出場中心) FAカップ3G・カラバオカップ4G。国内2冠に大貢献

「失敗」ではなかった――数字が示すリバプール時代の実像

「南野はリバプールで失敗した」という評価がしばしば聞かれます。しかしクロップ監督は退団時、「うまくいかなかったと思う人もいるようだが、それは間違っている。私はそれを受け入れない」と断言しました。実際のデータを見ると、この言葉の意味がよくわかります。

2年半の公式戦通算成績

カテゴリ 試合数 得点 アシスト
リバプール公式戦 通算 55試合 14得点 3アシスト
2021-22 FAカップ 4試合 3得点
2021-22 カラバオカップ 5試合 4得点 1アシスト
2021-22 公式戦合計 24試合 10得点 1アシスト

2021-22シーズンの10得点はクラブ内5位の成績です。そして特筆すべきは決定率です。イングランド国内公式戦で8ゴール以上を記録した全232選手(4部以上)のなかで、南野の決定率(シュート29本・得点10=34.5%)は1位でした。また1得点に要した出場時間も最短の79.5分。わずかな出場機会をこれほど高い効率でゴールに変えられる選手は、リバプールにもほとんどいませんでした。

カップ戦での存在意義

2021-22シーズンにリバプールが達成したのはFAカップとカラバオカップの2冠です。南野は両大会でクラブ内の得点王となりました。カラバオカップ準々決勝のレスター戦では、チームが敗退寸前の後半アディショナルタイムにボレーシュートで同点弾を叩き込み、PK戦に持ち込んでチームを救っています。このゴールはリーグカップ3試合連続得点という、2000-01シーズン以来の記録でもありました。

FAカップではファン投票による「大会ベストイレブン」にメイソン・マウント(チェルシー)、トレント・アレクサンダー=アーノルドらとともに選出されました。プレミアリーグのレギュラーとして輝く機会は限られていましたが、カップ戦においては誰もが認める存在感を示したのです。

「彼がいなければ我々がカップ戦で優勝することはなかった。それは100%真実だ。」

— ユルゲン・クロップ監督(退団時コメント)

「大一番で重要なゴールを決め、価値を倍増させただけでなく、在籍は短期間だったが、愛情をこめて思い出されるだろう。」

— リバプール専門サイト「Rush The Kop」(2023年7月)


なぜリバプールを去ったのか――「プレーすること」への強い信念

2021-22シーズンを最後に、南野はリバプールを退団してフランス1部のASモナコへ完全移籍しました。移籍金は約1,500万ユーロ(当時のレートで約23億円)。加入時の移籍金から価値を倍増させての旅立ちでした。

2021年にサウサンプトンへのローン移籍が発表された際、南野はその理由についてこう語っています。「サッカー選手にとって、プレーすることは最も重要なこと。プレーすることで、選手としての自信を取り戻すことができます」。継続的な出場機会こそが選手としての成長の糧であるという信念が、リバプール退団の根本にありました。

クロップ監督も退団の経緯について「ぜひとも引き留めたかった。でも、彼がもっと頻繁に、もっと定期的にプレーしたいということはわかっていたんだ」と明かしており、出場機会を巡る考え方の差がクラブとの別れを促したことを認めています。


ファン・メディアの声――X(旧Twitter)での評価

南野のリバプール時代は、ファンや関係者の間でさまざまな声を生みました。以下にSNS上で見られた代表的な声を紹介します。

XリバプールOB・ホセ・エンリケ(元選手)の投稿(英語原文より意訳)

「南野がいなければ、2022年のリーグカップとFAカップ優勝はなかっただろう」

Xリバプール公式誕生日祝いへの海外ファンのリプライ(2023年1月)

「カップ戦の優勝はタキのおかげだった」「あなたを決して忘れない」「今は大変な時期かもしれないが、素晴らしい選手だ」といった声が多数寄せられました。

X日本のファンの反応(リバプール日本語アカウントへのリプライより)

「南野拓実選手の出場を期待しちゃいます」「南野選手頑張って」「南野出してください」といった声が、試合ごとに届けられていました。

Xリバプール専門メディアによるアンケート(2021年5月・3,000票以上)

「来シーズン南野をキープすべきか、売却すべきか」という問いに対し、65.5%が「売却」を支持。しかしコメント欄には「チェルシー戦のゴールを覚えているか?あれができるなら間違いなく我々のカラーで活躍できる」「もっとゲーム時間が必要なだけだ」という肯定的な声も混在していました。

Xリバプール公式の退団発表(2022年6月)への反応

LFCJapanの公式投稿「南野拓実選手がレッズでの2年半を終え、モナコへ完全移籍することとなりました」には、「ありがとうタキ」「絶対にまた活躍する」など惜しむ声が集まりました。


現地メディアの総括――「もう一クラブ経由すべきだった」

南野がリバプールを去ってから約2年後、現地メディア「リバプール・エコー」は南野のリバプール時代を改めて総括する記事を掲載しました。その内容は、単純な「失敗」評価とは異なる視点を持っています。

同メディアは「加入直後のコロナ禍による適応困難」「サラー・マネ・フィルミーノという無敵のトリオの壁」を挙げながら、最も印象的な指摘として「5人交代制の導入が彼にとって遅すぎた」と述べています。南野の退団後から適用されたこのルールがあれば、途中出場の回数が倍近く増えていた可能性があります。

また「マネやケイタのように、ザルツブルクからもう一つのクラブを経由してリバプールに来ていれば、レッズでの物語は終わらなかったかもしれない。そしてマネに代わるフォワードになっていたかもしれない」という仮説も提示されています。実際にマネはサウサンプトンを経由してリバプールに加入し、不動のレギュラーへと成長しました。南野もそのステップを踏んでいれば、違う未来があったかもしれないというわけです。

さらにリバプールの専門サイト「Rush The Kop」は2023年7月、2018-19シーズン以降の補強で最も価値があった選手ベスト3に南野を選出しています。「まとまった連続出場ができなかった選手としては、55試合14得点3アシストは非常に健全な数字だ」と評価しつつ、価値を倍増させて退団したことへの肯定的な見解を示しました。


南野拓実 リバプール時代 成績まとめ

観点 詳細
在籍期間 2020年1月〜2022年7月(約2年半)
公式戦通算 55試合・14得点・3アシスト
主な獲得タイトル プレミアリーグ(2019-20)、FAカップ(2021-22)、カラバオカップ(2021-22)
2021-22シーズンの決定率 34.5%(イングランド国内公式戦・8G以上232選手中1位)
退団後の移籍金 約1,500万ユーロ(加入時の約2倍)
クロップ監督の評価 「彼がいなければカップ戦優勝はなかった。100%の真実だ」

リバプール移籍が南野拓実のキャリアに与えた意味

南野拓実がリバプールに在籍した2年半は、レギュラーとして輝く機会という点では不完全燃焼に終わりました。しかしその経験が南野自身にとって「とても重要な経験で、最も印象的な思い出」であることは本人も繰り返し語っています。

プレミアリーグ優勝、カラバオカップ優勝、FAカップ優勝という3つのタイトルを手にしたこと。世界最高峰のトレーニング環境でサラーやマネ、ファン・ダイクといったスター選手と日々切磋琢磨したこと。クロップ式のハイプレスサッカーを体の芯まで染み込ませたこと。これらは金額換算できない財産です。

モナコ移籍後の初年度は苦戦しましたが、恩師ヒュッター監督の下で完全復活を果たし、日本代表のキャプテンマークを任されるまでの選手へと成長しました。その土台には間違いなく、リバプールで積んだ経験があります。

「なぜ南野拓実はリバプールに移籍したのか」という問いに対する答えは、単純ではありません。CLでのパフォーマンス、クロップの長年にわたる評価、クラブ間の信頼関係、そして南野自身が世界最高峰の舞台に挑む意欲——これらが重なって実現した移籍でした。そして「なぜ出場機会が少なかったのか」についても、本人の実力不足だけに帰結させるのは不公平です。史上最強のトリオ、コロナ禍、制度のタイミング、後から加わった強力なライバルたち——複数の要因が重なった結果でした。

この記事のまとめ

  • リバプール移籍の理由は「CLでの活躍」「クロップの長年の評価」「ザルツブルクとのパイプ」「マーケティング的な価値」が重なった結果
  • 出場機会が少なかった主な理由は「サラー・マネ・フィルミーノの壁」「コロナ禍による適応困難」「身長面の戦術的ミスマッチ」「ジョタ・ルイス・ディアスの加入」
  • 5人交代制がもし現役中に導入されていれば、活躍の幅がさらに広がっていた可能性がある
  • 2年半で3タイトルを獲得し、特に2021-22シーズンの2冠ではカップ戦の両大会でクラブ内得点王となった
  • クロップ監督も「失敗」評価を明確に否定し、55試合14得点という数字はリバプール史に残る貢献といえる
  • 退団時には価値を約2倍にして移籍し、リバプールの補強史に名を刻む選手として評価されている

南野拓実のリバプール時代は、数字だけでは語りきれない豊かな物語を持っています。「なぜ移籍できたのか」「なぜ使われなかったのか」という疑問を持つ方に、この記事が少しでも明確な答えを届けられていれば幸いです。